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父と娘の珍介護道中(日記的エッセイ2010〜2022) 時々、母のこと、故郷のこと、自分のこと EP6

エピソード6
「あの先生はやる気を出させるのがうまいね」

2011-04-10

老健施設はそろそろ出なきゃならない。
でも、現状では自宅には戻れない。
それらを総合して「藤井さんにはもっと個人の時間があってゆったり過ごせるところが合っているんじゃないかな」と、
老健施設のケアマネさんがある新し目のケアハウスを紹介してくれた。

早速の体験入所で本人もとても気に入り、移ることになった。
ケアハウスの入所条件は、本人の自立だ。身体的なことではなく、
本人が意思決定できるかどうかが重要。
父は頭はバリバリオッケーなので、とんとん拍子に話が進み、
引っ越しの運びとなった。

弟とやった昨日だけでは片づかず、
本日も朝もはよから東名ぶっ飛ばしーのでお手伝い。
ようやくお部屋が快適空間になりました。フーッ。

一級建築士だった父は、ものすごく几帳面で、
自分で段取りのすべてがわかってないとイヤな人。
ま、じゃないと家が水平には建たないよね。
対照的に、私と弟はどういうわけかそろいもそろってザックリ系。
いちいち怒られつつの作業でございました(笑)。

でも、これでちょっと安心。今度の場所では携帯も使えるし(父が使い方を忘れなければ)、窓が二つで暖かくて明るい。
隣のキッズ園の子供たちの声も聞こえるし、
環境に慣れてくれさえすれば、趣味の詩吟をうなる余裕もできるんじゃないかな。今日も早速、机に向かって最近ご無沙汰になっていた日記を書いていた。
元気を取り戻してくれるといいなぁ。

2011-04-15

引っ越しの続きで昨日も再びケアハウスへ。
いろいろと足りないものが出てくるものです。
ちょうどリハビリの先生がいらっしゃる日だったので、デイルームで先生と父のやりとりを見た。
しっかりと説明をしてくれながらの素晴らしいレッスン。
父も「あの先生は、やる気を出させるのがうまいね」と、のたまっておりました。

「100歳になっても、筋肉は訓練すればつくと証明されてるんですよ。大丈夫。藤井さんみたいにやる気がある人は、メキメキとよくなります。だって、同い年でスタスタ歩けてる方だっている。できないことを年齢のせいにするのは悔しいじゃないですか?」と先生。
「悔しいです!」と小学生のようにハッキリと即答している父が頼もしかった。

時間があったので、今晩は筍ご飯にすることにした。
実家の庭から摘んできた木の芽を添えていただこう。
いろんな作り方があると思うけど、私は母がやっていたように、具材をまず煮しめて、その汁を使うというやり方でいく。
さーて、うまくできるかなぁ。

2011-05-04

GWは、姪の大学入学祝いをかねて、お正月以来久しぶりに父を大磯の実家に連れ帰り、家族で賑やかにお昼ご飯を食べた。

が、これが大変。3日の昨日は3連休の頭で、行楽に向かう車であふれかえっていた。父のお迎えは10時半の約束。
いつもなら東名を通って1時間で着いてしまうのだけど、8時の段階で渋滞情報調べたら東名は真っ赤。
こりゃ大変と、8時半に家を出て、まだ混んでる報告が出てなかった第三京浜を回っていった。いつもの調子で2時間あれば、まぁたどり着けるだろうと。

ところが、これがとんでもなく甘かった! 
フリーの身である私は、わざわざ連休にどこかに出かけるという発想がない。
だから、連休の渋滞の怖さを知らなかった。いやー、ヒドかったっ。
第三京浜はまだスイスイだったけど、
横浜新道に入ったあたり雲行きが怪しくなってきて、ついにノロノロに。

この段階で10時だったので、父にちょっと遅れると電話。
時間にキッチリしてるので、イライラさせちゃいけないと思って。
ま、戸塚を抜けたらスイスイだろうなと、その段階でもまだ楽観的に構えてた私が大間違い。
逆にドンドンひどくなる一方で、新湘南バイパスはノロッノロ。
そして、茅ヶ崎西出口の2キロ手前で、ついに流れが止まった! 

もうそこで出発してから3時間半。父から電話が入るたびに、
せっかくの楽しい気分を台無しにしちゃったなぁと申し訳なくて、ヤになった。
結局、父を迎えに着けたのが、1時前。
なんと4時間以上の長旅になってしまった。
時間に厳しい父も、渋滞のニュースを見てたせいか、
途中であきらめてくれたらしく、「大変だったね」と労ってくれたけど、
待って、待って、待ちくたびれてしまった様子。

でも、大磯の実家で、馴染のお魚屋さん「魚浅」にお願いしていたお刺し身(昨日は地で上がった平政の豪華一点盛り)を見て、
父をはじめ家族全員が笑顔になった。
みんな大磯のお刺し身が大好物なんです(笑)。

平政はこの時期から夏にかけてが旬のお魚。
私もこのお刺し身が大好きで、たまプラのスーパーで運良く見かけたときには絶対に買う。
でも、そんなスーパーもんと「魚浅」のお刺し身とでは、
質も量も全然違う。もう、お腹いっぱい食べちゃいました。

大学に向けての姪の抱負を聞いたりして、結果、とても楽しい食事会に。
4時にはまた父を送り届けるという慌ただしいスケジュールだったけど、いいイベントだったと思う。終わりよければすべてよし。

帰りは第三京浜で1時間半ほどで自宅に到着。
すると、すぐ父から電話があった。
「今日食べた刺し身は何だっけ? 勘八じゃなかったよね。みんなに自慢しようと思ったけど名前を忘れちゃった」と(笑)。
「ヒラマサだよ。平らに、政治の政」と伝えると、
「ああ、ヒラマサ。そうか。日記に書いとこう」と、うれしそうな声。疲れが心配だったけど、楽しんでもらえたようでよかった。

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