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月曜日のことば〜永瀬清子さんのちゃぶだい

月曜の朝は大変。

週末、子どもたちが家の中で遊んだあとのブロックや、折り紙で作った飾りや、何だかわからない切れ端などもあちこちに落ちている。それらをひとつずつ拾いあつめて、掃除機をかける。

ようやくきれいになった部屋で、さあ仕事をはじめようというときに思い出すのが、谷川俊太郎さんの詩「永瀬清子さんのちゃぶだい」(新潮社『夜のミッキー・マウス』収録)。

永瀬清子さんは、農業のかたわら詩を作りつづけた人。

谷川さんはこんなふうにうたう。

 ♪


ちゃぶだいの上に飯がのった
煮付けた大根がのった
目刺しがのった
トマトがのった

(中略)

指と爪の間に詰まった土をそのままに
女の手が飯をよそう
ちゃぶだいの畑で
言葉は物言わぬ種子

ちゃぶだいの上にノートがのった
万年筆がのった
出がらしの茶がのった
1日の終わりの静けさがのった
ちゃぶだいの前に女は座った

(中略)

ちゃぶだいの祭壇で
言葉は天を指す緑の茂み

(中略)

今日のささやかな喜びが
明日への比喩となる
永瀬さんのちゃぶだい


 ♪

土を耕し、ご飯を作り、1日働いたその手で、さっきまで家族がご飯を食べていたちゃぶ台の上にノートを広げ、言葉をつづる永瀬さんの姿を思いうかべると、いつでも勇気がわいてくる。

大地に足をつけて暮らすことと、風にのってどこまでも精神を飛翔させることは両立する。

そんなふうに背中を押してもらっているような気がする。

さあ、今週も毎日手を動かしておいしいご飯を作ろう。今日の喜びは、体の中で生まれ変わって明日の言葉になる。

そしてたくさん、いい仕事をするんだ。

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