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鳥は「神様の箸休め」〜三宮麻由子『鳥が教えてくれた空』より

近所の公園に、「すずめのなる木」があります。

5メートルくらい手前から、文字通りかまびすしく鳴き交わす声が聞こえてきて、近づいていくと、枝がしなるほどびっしり、鈴なりになっています。

いったいどうしてこんなにたくさん…とふしぎに思っていたある朝、おばあさんが木の下で米粒をまいているところに出会いました。

親のすずめも子すずめも、首をかしげて一生けんめいついばんでいます。

お米が好きだから、すずめはこわがりなのに、昔から人のそばで生きてきたんだなあ。

3月20〜24日ごろは、七十二候の「雀始巣(すずめはじめてすくう)」。

土がゆるみ、虫が目覚め、鳥が巣をつくる。

暦と一緒に過ごしていると、自然のしくみにはちゃんと順番があって、何もむだなことがないんだなあと思います。

鳥は「神様の箸休め」と綴ったのは、4歳で視力を失った作家、三宮麻由子さん。

『鳥が教えてくれた空』という随筆集を読んで、大ファンになりました。

すずめの鳴き方で時を知るという三宮さんの感性の鋭敏さ、繊細さ、教養の深さに、新しい扉がひらかれる思いがします。

「野鳥は、愛を育むために歌を授けられ、歌うために生まれ、神にいちばん近い天の高みに上がることを許された唯一の生きものだ。そして、天地創造の営みのなかで造られたという地球を、持ち前の羽で、何度となく往復することも許されている」

三宮さんのつづる言葉に心を委ねていくと、ふだんの自分がいかに視覚に依存しているか、音の世界に感覚がひらかれていないかに気づきます。

ここにないものでなく、今ここにあるものの豊かさへ自然と心が向いていく、身の周りの景色がいとおしくなる、宝物のような1冊です。

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