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子どもの不安な心に効く「いいこと探し」ゲーム

「ニュース、怖いから消していい?」

少しずつ学校が再開した6月頃からでしょうか。夕方、テレビのニュースを見ていると、8歳の長男がこんなことを言うようになりました。

「コロナにかかると死んじゃうの?」と不安そうに質問したり、時折胸が苦しいと訴えることも。

周りの方に話を聞いたり、調べてみると、同じように不安を訴える子どもたちが増えているようです。

さまざまな情報が溢れ、大人にとっても不安でストレスが溜まる状況。情報の取捨選択に慣れていない子どもがより大きな不安を感じるのは、当然かもしれません。

先日も、私が夕食の後片付けをしていると、長男が「お母さん、胸のあたりがモヤモヤする」と言いにきました。呼吸が苦しいということではなく、情報を見聞きしているうちに、心配で悲しい気持ちになってしまったそうです。

いつもはひと通り話を聞いて、気をつけて生活していれば大丈夫と論理的に説明をした後、ボードゲームをしたり、一緒に本を読んだりして気分転換を図るのですが、今日は少し違う方法を試してみることにしました。

「いいこと探し」って?

「あのね、こんなことがあってイヤだったなあ。とか、こんなことが起こったらイヤだなあ。とか、悲しかったことや心配なことについてずっと考えていると、心が苦しくなっちゃうんだよ」

「そうなの?」

「うん。お母さんもときどきあるし、今、同じように苦しくなっている子が、世界にたくさんいるんだよ」

「そうか、僕だけじゃないんだ」と息子は少し安心した様子。

「そういうときにお母さんがやっている方法があるんだけど、一緒にやってみる?」

頷く息子。

「明日から、毎日眠る前に”今日のいいこと”を3つずつ数えるゲームをやってみない?」

「へえ。どんなゲーム?」

「あのね、一日の中で、嬉しかったことや、楽しかったことをお互いに報告するの。すごく小さいことでいいよ。給食がおいしかったとか、天気が良くて気持ちよかったとか」

「ふうん。やってみようかな」と息子。

翌朝、「いいこと、見つかるかなあ…」と言いながら学校へ出かけていきました。

実際にやってみる。

夕方、「ただいま!」といつも通り帰ってきた長男。

「おかえり。いいこと、見つかった?」

「うん! あのね、アゲハの幼虫がね… あ、だめだ! 今言ったらゲームで言うことがなくなっちゃう。貯めておかなくちゃ」

いいことを忘れないように指折り数えている息子は、にこにこ嬉しそうです。

夕食の後、テレビを消して「今日のいいこと」ゲームをスタートしました。

「じゃあ、まずお母さんからね」

「はい。えーと、久しぶりに雨が上がったので、ジョギングできて気持ちよかったです」

「じゃあ、僕の番ね。あのね、教室で飼ってるアゲハの幼虫が、すごい大きくなってたんだよ!」

「へえ、そうなんだ。アゲハの幼虫って何色なの?」

…という感じで、ひとつひとつの「いいこと」から、新しい会話が広がっていきます。

延長戦もOK

あっという間に3つずつ「いいこと」を言い終わって、まだまだネタがなくならないので、ゲームは延長戦に突入。

「先に言うことがなくなった方が負けね。”いいこと”をたくさん言えた人が勝ち!」というルールも、長男によって途中で追加されました。

(勝ち負けは決めなくていいと思いますが、競争が子どものモチベーションになる場合は、追加ルールを適用してもいいかもしれません)

笑いながら話していると、4歳の次男が「ぼくも、ぼくも!」と加わってきました。

「今日は、お父さんが早く帰ってきてくれてうれしかったです」

夕食の片付けをしてくれていた夫も、「え、そうなの」と少し嬉しそう。

その日、息子は胸が苦しいとは言わず、「いいこと」について話し続けながら眠りました。

子どもに限らず大人でも、過去の後悔や未来の心配に意識が向いて、気持ちが塞いでしまうことはありますよね。

そんなとき、単純な方法ですが小さな「いいこと」を探してみると、不安な心が少し落ち着くのだなとあらためて思いました。

「いいこと」を探すと幸運が集まってくる

翌朝、長男は「お母さん、今日も帰ってきたらいいことゲームしようね! 俺は世界一運のいい男だぜ。行ってきまーす」と言いながら元気よく学校へ行きました。

昨夜は20個くらいずつ「いいこと」を挙げたところで私が先にネタ切れになってしまいましたが、今日は負けていられません。

ベランダで育てているハーブの新芽が出たとか、休憩時間に淹れたお茶がおいしかったとか、仕事で喜んでもらえて嬉しかったとか、せっせと心にメモをしながら過ごします。

出かけようとしたときにちょうど宅急便が届いたら「お!ラッキー」、帰宅した途端に雨が降り出したら「よかった!濡れずにすんだ」などとカウントしているうちに、だんだん「もしかして、私って運がいい?」という気がしてきました。長男の言う通りです。

逆に「イヤなこと」に長い間意識を向けていると、小さな「いいこと」が起こっても見逃してしまうので「私って運が悪い…」と思うようになるのかもしれません。その結果、言葉や行動が少しずつ変わってしまったら、起こってほしくない出来事が実現してしまう可能性もあります。

一度「いいこと」を探し始めると、次第にそれが脳の習慣になるので、簡単に「いいこと」が見つかるようになるという法則もありそうです。

何気なく提案したいいこと探しゲームのおかげで、私自身も心の仕組みの面白さに気づかされました。

「ただいまー! お母さん、今日も勝負だ」

あ、運のいい息子が帰ってきました。

さあ、今日はどの「いいこと」カードを切り札にしましょうか。

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