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「土鍋のある生活」を将来に残したいけど・・新規メーカーが出てきにくい理由

三保原屋本店は静岡の家庭用品専門店。創業は1687年といわれています。

土鍋やセイロ、急須など
「一度は使ってみたい!」
という想いで話題になる生活道具ですが、その裏側でメーカーさんたちが残り僅かになっている産業もあります。
先日はセイロについて記載をしました。

今日は土鍋の話。

土鍋は食卓を豊かにしてくれると、多くの方が思っていると思います。
実際に食卓に置くと画のチカラが強いです。

こういった商品にご興味のある方は、是非現存するメーカーさんを大切にして、応援をしてください。

環境変化

店舗でもイベントをしていただいている、長谷園さんの土鍋の写真を今回は使っています。

私は長谷園さんをはじめ、いろいろなメーカーさんの工場に伺わせていただくことがあります。

お客様でもご存じの方が増えていますが、土鍋は現在材料不足。
もしくは、材料がかなり高騰してきています。

また工場では「光熱費」も凄まじく上がってきています。

結果的に、土鍋の価格は上昇し、将来的にみれば、ホームセンターであっても1万円を超える国産土鍋が出てくるのでは!?とも思える勢いです。

かなり手作業

最近は機械やAIの発達により、様々なものが便利になりました。

もしかすると「工場から流れるように完成品が出てくる」イメージの方もいるかもしれませんが、現場に伺うと、そんなことはありません。


一部の効率化は進んでいますが、驚くほどに手作業なこともあります。


パーツ数

土鍋は
本体・持ち手×2、蓋、蓋のツマミと、おおよそ4つ。

のパーツから構成されています。

パーツが多いと

①パーツが多いと工程が増えます。
②工程が多いと、機械や型が増えます。
③機械や型が増えると、初期投資が増えます。
④工程が多いので、その分の人が必要です。
⑤生活用品なので、コストを抑えないといけません。

結果的に、
投資が超多額になる要素が多く
投資の回収が遅くなる要素が多くなります。

イメージだけで話をすると

お店でお客様にイメージを伝える際は・・・

「お金を投資する」という意味で、
ユニクロの柳井さんや、ソフトバンクの孫さんが、
どれだけお金を持っていたとしても『土鍋メーカーを新規でつくろう』という判断にはならない。

みたいな業種というイメージを伝えています。

使い方もハード

家庭用品の中でも、火にかける道具というのは、非常にハードユースです。

例えば、空焚きができる長谷園の土鍋『ビストロ蒸し鍋』や『いぶしぎん』などは、超超ハードな使われ方をします。

他の陶器と明確に違うのは、そのに安全性を求められるということです。

細かい話

このあとレモンたちはジャムになりました。

陶器は
●形を作る
●乾かす
●(1回目)窯で焼く
●釉薬をつける
●(2回目)窯で焼く
という作業が一般的です。

その過程で
★持ち手を付けるのに時間がかかります。
★乾かしすぎると割れたりします。
★焼くと小さくなり、個体差が出る。
★焼く過程で割れるものもあります。
★窯の調整は超難易度が高いです。
★モノが大きいので、お皿ほど沢山焼けない
などなど、様々なハードルがあるのですが、

100個つくって、100個完成することはないそうです。

最後に
商品の価値は、まずは商品そのものにあります。
更にストーリーなども大切にされてきています。

土鍋が1つ15,000円だとしても、
それは「土鍋のあることで感じる生活の豊かさが15,000円」という意味で小売業としては商品を販売しています。

ただし、モノが継続的に作れる環境がないことには始まりません。

冒頭で記載した通り、大きな規模の土鍋メーカーが新規で立ち上がることは殆どないと思われます。
現存している土鍋メーカーを大切にしつつ・・

「土鍋のある生活」が今後の生活の選択肢になればいいなと思っています。

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