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「書評を書く読書会」に参加して、言葉がもっと好きになった

2022年から高円寺のコクテイル書房で開催している「書評を書く読書会」に参加していて、言葉ってこんなニュアンスまで表現できるのか! と言葉の魅力を再発見できたので、現時点で実感している学びをまとめます。

「読書を楽しむ」ってなんだっけ……?

当時参加しようと思ったきっかけは2つ。1つは、「好きな本を読もう」と思って本屋に立ち寄ったとき、自分はどんな本が好きで、何を読みたいのかわからなくてなっていたこと。もう1つは、ライターメインの仕事から編集メインになって、自分で文章を書く機会が減ってしまったこと。

「好きな本を読もう」について。2017年から文章にまつわる仕事をはじめ、私の本棚には「文章術」「書く力」「編集力」「企画力」なるものの類が一気にあふれかえっていました。大事なところに付箋を貼っては読み返し、勉強のためにページをめくる日々。一時期は複業としても書く仕事を受けていたから、土日も仕事、書くためのスキルアップだけを考えて本を読んでいました。

そうしたら、「ちょっと息抜きに好きな本を読もう」と本屋の小説棚を眺めたとき、手が出なくなってしまった。私は、どんな物語を読めば息抜きになるのだろう。本を読みたいし楽しみたいのに「どの本」が読みたいのかわからない。そこで探したのが、課題図書の出てくる読書会です。

さらにこの読書会は「書評を書く」ことがお題になっています。何の肩書なしに自分の文章を見てもらったら、どんな評価がもらえるんだろう。また自分で毎日noteを再開してもいいけれど、「誰かに見てもらえる」ことで休めず書けそうだな~と思ったことから「書評を書く読書会」が自分にぴったりだな、と思って申し込みました。

カフェで本を読む時間がすきです

読書会の流れ

毎月1回(だいたい第3土曜日)15:00~16:30で行なっています。

1.読書会まで
読書会の主催者・栗原さん(総合研究大学院大学/国文学研究資料館・准教授)から課題図書が指定されるので、各々購入し、前日までに読んで書評を書く。栗原さんが用意してくれるgoogleドライブに書評を格納しておくと、当日印刷して持ってきてくれます。ちなみに、書評までたどりつかなくても、本を読み終えていれば当日参加OK。金曜日にギリギリ読み終えて参加……なんてこともちょこちょこあります(フィードバックをもらえないのが残念だけど)。

2.当日
小説に出てくる登場人物や、時代、場所、時系列など、読むにあたっての前提知識を読書会メンバーとともに確認。ここで小説の構造を明らかにします。そのあと、参加者が持ち寄った書評を読んで、思ったことや疑問に感じたことを話し合います。

3.後日
書評に対するフィードバックが栗原さんから届く。栗原さんは2022年に『週刊読書人』の「文芸」(文芸時評)欄を担当されていたそうで、コメントも毎度気づきが多く、届くのがとても楽しみ。そして届いたコメントを読み、次の読書会(書評)へ。

写真は台湾の本屋さん

参加して得られた学び。「言葉」って楽しい!

1.「言葉で遊ぶ」ワクワクを実感できた

webをメインに記事を書いたり編集をしたりしていると、「読みやすい文章」を第一優先にして日々文章と向き合います。けれど小説の場合は、「読みやすい文章」だけが正しいわけではありません。「ごちゃごちゃして読みにくい文章が続くな……」と思って読書会で話してみたら、登場人物の頭のなかやそのときの状況を表すために、わざとわかりにくく書かれていたり。注釈が連なり一つの物語が完成する文章があったり。本当に多岐にわたった表現が出てきます。

当初は「わかりづらい!」「どういうことだ!」と頭を悩ませていたのだけれど、表現はもちろん、カタカナなのか、漢字なのか、それともひらがななのか、その一つひとつに著者が込めた意味があることがわかりはじめ、「おや?」と思うポイントを見つけると、じつはキャラクターの思いが乗せられているのでは、と気になるようになりました。文字だけで、さまざまな情報を乗せられる奥深さ、計り知れない。

2.「テーマを提示する本」と、「言葉遊びを楽しむ本」がある(気がする)

web記事では「読者に届けたいメッセージ」を設定して文章をつくるけれど、小説ではそういったメッセージを大きく打ち出すよりも、構成の妙や表現などで、いわば「言葉遊び」をしているような本もありました。だから、伝えたいメッセージがなかなか読み取れなくて、「書評は何を軸に書こうか……」と困ってしまうことも。けれど、読書会で解説を聞き、みんなの書評を読んだりそれについて話したりしていると、この著者は「言葉」そのものが好きで、遊ぶように小説を書いている人なんだなぁと感じる本もあって。

ちょっと工夫して文章を書いてみたい、もっとおしゃれに言葉を使いたい。そんな気持ちを沸きたててくれます。

3.「わからなかった」が臆せず言える

小説のなかには本当に本当にほんとーーーーうに読むのが難しくて、なかなか頭に入ってこないものもあります。最初のころは最後まで読む気力がなくなり欠席することもあったけれど、最近はとりあえず頑張って最後まで読み、書評は書かずに(書けずに)「わからないポイント」をメモしていくようになりました。

すると、結構同じところでつまづいていた人もいたり、「ここはこういう意図なんじゃないか」とほかの人の意見が聞けたりして、わからなかった小説もだんだん理解を深められるように。自分だけでは永遠に積読してしまっただろう本も、みんなで話せば得るものがある。そんなふうに小説をひも解けるのもこの読書会の楽しみです。

4.文章にコメントをもらえて、嬉しい!

コメントはいつも、よかったところ、ここを改善したらもっとよくなりそう、というところを戻してくれます。何度も見てもらっていると文章の自分らしさがなんとなくわかってきたり、書きやすい書評の型が見えてきたりして「書評の仕事があってもいけそう!」なんて自信もつきました。

一方で、約2年書いているうちに型がしっかりしみついてしまって、違う形式でなかなか書けなくなっているのがいまの悩み。もっとバリエーションをもたせたいなぁと悩んでいたところ、先日栗原さんから新しい書き方の提案をもらえました。なので、今度はこれで書くぞ! と、ワクワクしているところです。

仕事で突然チャレンジするにはちょっと怖いし、noteへ書くにしてもその書評がどうだったのかわからない。新たな書き方が挑戦できること、それを見てコメントをもらえることも、「書評を書く読書会」の大きなメリットだなと実感しています。

コメントはこんな感じ

言葉のことがもっと好きになる読書会。メンバー募集中です

主催者の栗原さんはもちろん、参加者も「書評を書く」というハードルもあいまって文学に詳しい方が多く、毎度新しい小説家のお名前に出会ってはちょこちょこ調べて情報収集しています(私が知らなさすぎるのかも)。

さらに、毎月メンバーの書評をみていると、その人らしい書き方があって、こういうところ面白いな~と文章を通して相手のことがわかる。プライベートはあんまり話さない読書会だけど、文章から見える「その人」とコミュニケーションを取れている感じがします。あとは、小説は現代の純文学をメインに扱っているので、小説の「いま」がわかるのも嬉しい。

以前コクテイルの狩野さんに取材した際、話してくれたことがまさにこの読書会でできているなと感じます。

"私見ですが、サードプレイスといわれる場所の多くは、厳しいことや本音を話せる場所にはなっていないと思うんです。発言の内容によっては、そのコミュニティから弾かれてしまうことすらある。そういうことのなされない、本音で話し合える場所が本の長屋でありたい。最初から本音で話すのは難しいので、読書会など本をとおして言葉を交わすうちに、自然と本音で話せるようになったらいいと思っています。”

カルチャーはいつも、人々をつなぐ接点になる。別府の老舗映画館と高円寺の共同書店に人が集まる理由

いま参加者は3~4人ほど。高円寺の「コクテイル書房」で場所を借りて開催しています。気になった方はぜひ1度体験しに来てみてください!

▼詳しい情報はお問い合わせください。こちらです。

主催:栗原悠さん(総合研究大学院大学/国文学研究資料館・准教授)
連絡先:moyoko0629[@]gmail.com (メールの際、[] は外してください)



▼読書会で書いた書評(一部)


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