尾﨑美穂(&D./Cotton's)
「人に共感されやすい課題の出し方」 My Story 〜デザイン経営への道 vol.3
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「人に共感されやすい課題の出し方」 My Story 〜デザイン経営への道 vol.3

尾﨑美穂(&D./Cotton's)

こんにちは。&D、Cotton’sの尾崎美穂です。この連載では、私が実際に行なってきた「デザインを活用した経営改革」について綴っています。今回は、入社直後訪れたデザイン・イラストの会社コットンズ閉鎖の危機! 目の前にあった様々な問題からどのように課題を導き出したか、みなさんにもご活用いただけるステップをお伝えします。
vol.1vol.2、もよろしければご覧ください。

入社して1年経ったら東京支社閉鎖の危機。

コットンズ東京支社に入社してからの1年間。経営者と社員の抱える悩みにをヒアリングし続けることで、目の前にたくさんの問題が山積みだと知ります。そんな中、コミュニケーション不足の社内に、情報共有の場を設けたり、人を増やしチームで動いたり、以前よりは活気付いた職場を作っていました。

これからどうしていくのか、まだ漠然とする中、1件のデザイン案件がお客さまのご都合で中止になりました。たった1本を失注することで、東京支社は大きな打撃を受け、こんな噂が流れます。

「東京支社はもう長く保たない。閉鎖して、イラストプロデューサーは大阪本社に戻すか、デザイナーは資本提携している会社で引き取ってもらうか」

なんだか悲しい噂。わずか1年でも信頼関係が構築され、仲間への愛着が深まる一方だったのに。そこで突然、「はい、東京は閉鎖するので、それぞれ自分の道で」なんてことは考えたくありません。

なぜ、諦める道しか用意されていないか。おそらく、東京支社のお仕事のほとんどが、資本提携する会社からいただいていて、その会社にとってコットンズがお手上げになった以上、もう打つ手はない、という経営層の考えだったのかと思います。

私たちの会社は、私たちで守る。

だけど「諦める」なんて選択肢は、ありませんでした。なんとかしなくっちゃ。そこで私は、改めて経営者や社員が抱える悩み(vol.2)を引っ張り出し、これからどうすればいいのか課題を考えます。

課題を出す経緯を、最近私の中で流行っている、オンラインホワイトボードアプリ「miro」を使って、整理してみました。
もし事業やご自身の将来などに不安や問題を感じる方は、下記の手順でお試しになっていただければと思います。(ちなみにここでは、デザイン思考ならではの考え方も含まれています)

最初に、これから出てくる言葉の整理をしておきますね。

例)
●ありたい姿(理想):売上を月に1000 万円に上げたい
現在の姿(悩み)売上が月に600 万円である
問題(ありたい姿と現在の姿のギャップ)売上が月に400 万円不足している
課題(問題を解決するためにやること)営業訪問先を月に10 社増やす

step1:「現在の姿」と「ありたい姿」を描く

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「現在の姿」と「ありたい姿」には、その2つがイコールでない限り、必ずギャップが生まれます。
当時のコットンズの悩み(めっちゃありますね…)と理想像。そこには深くて根強いギャップを感じます。だけど、気にしなくていいのです。悩みが、目に見えていること(認識できていること)はとっても良いことです。だって、悩みを感じていなかったり見つけられなかったら、改善策も何も生まれてきません。次へのステップへ向かうには、悩みがあってこそ。(と言いつつ、当時は汗だくでしたけど…)

step2:目を背けずギャップ(問題)を見てみる

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わぁ、たくさん…ギャップだらけですね〜。

step3:私たちの心情を踏まえた問題定義をする

こういった現状を打破するための問題を定義します。会社自体や経営者・社員の、背景や不安、不満、望んでいることなどを元に、「一体なにをなんのためにするべきなのか」を考えてみます。
ここでは、単に事実を述べるのではありません。例えば…

(NG問題定義)
「売上が低下しているため、営業をして新規案件を獲得しなくてはならない。なぜなら、このままでは東京支社の継続が難しいからだ」

確かにその通りなのですけど、あまり心が動かされない…というか、こんなですと、「経営者の人たち、やって」っていう感じがします。
そうではなく、絡み合ったみんなの心情を踏まえて、このように考えます。

(OK問題定義)
「私たちは他社に委ねず自分たちの力でコットンズを立て直し、価値を創造していかなくてはいけない。なぜなら、社員にとって長く過ごすこの空間は、私たちの場所であり、私たちが満足して過ごせることこそが、やりがい、ひいては人生においての満足度をも左右するからである」

前者は、なんだか会社都合の定義だったのに比べて、後者は、社員である私たちのために立てられた定義です。このような定義が起動力となり、意欲ともなり得るのです。
当時は、このようにはっきり「定義」として示せていなかったのですが、同じような意味合いの言葉を常に交わしてきました。

「現在の姿」と「ありたい姿」を描き「問題」を出す方法は、よく見かけます。だけど、上記のような「OK問題定義」を出すのは、デザイン思考ならではです。それは人との対話を繰り返し「人の抱える悩みや欲求」から導き出す、つまり「人を中心とした考え」に基づいているのです。それに則ることで、人々に求められる解決策を出すことができます。

step4:私たちが必要とする課題を導き出す

そんな定義を頭の隅っこに置きながら、まず目先で取り組むべき課題を考えてみました。それがこちらです。

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ここまでくると、ようやく何をすべきかが見えてきます。あとは、課題の優先順位や、難易度、緊急性などを考慮して、何から手をつけていくかをスケジュールに落とし込み、さらに共有〜具体化〜分担して、実践していくことになるのです。

「実践する」って簡単に言うけど、そんなに簡単じゃない

この課題だけを遂行していけばいい訳じゃありませんでした。だって、目の前に売上が足りなくて傾きかけているという状況があるのですから。今動いている案件を止めてはいけませんし、さらに今の案件だけでは足りません。

社員同士で話をして決意します。

「これから1年間は、今の案件と並行しながら、売上を少しでも回復させるために営業して、どんな無茶な条件のお仕事でも受ける! そして、実績を少しずつ増やしながら、新しい取り組みも同時に行い、次のステップにいけるように努力して私たちの価値を生む!」

この頃、私自身がもしも経営層だったら、こんな無茶、反感を持たれるのかもしれませんね…。当時私はみんなと同じ社員であり、同じ立場で呼びかけていたからこそ、かろうじて共感してもらえたのかもしれません。

当時の社員は、私が入社した頃から一緒にいた若手プロデューサー2名と、新しく入ったデザイナー2名の合計5名。みんな若くてまだ経験が浅いながらも、ひたむきで、人として優れていて魅力的な人たち。みんなの力があってこそ、経営改革を繰り広げることができたのです。

次回は、具体的な取り組みをご紹介します。

『デザイン重視の経営術』(仮題)を今秋に出版予定です。
今回の記事は、人を中心に考える「デザイン思考」に通じています。その内容も、2020年秋に刊行予定の拙著に掲載しています。興味を持っていただいた方は、こちらのページも合わせてご覧ください。
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尾﨑美穂(&D./Cotton's)
クリエイターであり2つの会社の経営者。デザインを経営に生かすためのコンサルティング会社、and D.consultingの代表、プランニングデザイン、イラストプロデュースを行う株式会社Cotton'sの取締役社長。デザインの力を世の中に浸透させるため絶賛活動中。