江戸川Qの「独想感想文」#1
本作は2021年頃までノーム・チョムスキー氏とジャーナリストのデヴィット・バーサミアン氏との間でアメリカを取り巻くいくつかのテーマをもとにした言論を纏めた一冊の対談集です。
本作の中で中心に語られるのは現在とこれからの「アメリカ社会」であり、トランプ大統領の出現と資本主義の限界に依ってそれがどのように変遷してゆくのかをアメリカ政治を視野に入れながら語られています。
本作は対談の内容が2021年頃までであり、この本を手に取った読者とのタイムラグはあるものの、その内容は2022年から現在へとタイムシフトしているリアルなアメリカ社会の「根っこ」を捉えており、現在のアメリカ社会を研究する一冊の本としては非常に良いものと言えます。
しかしながらアメリカの現状を分かり易く知りたいとなれば、池上彰氏の著作本の方がビギナーには分かり易く、読者へ本作に対する理解度を求めるとすれならば、それはアメリカの政治問題の「根っこ」を抑えたエキスパート向けの一冊だと思いました。
そして個人的な感想ですが、この本はあくまで政治ジャーナリズム的視点による捉え方が強い為、哲学思想といった人文科学方面からのアメリカ社会に対する思想的分析は少なく、読了後の印象としては「政治家トランプ叩き」と優秀なリーダを選出できない「アメリカ社会の嘆き」を強く受けました。
アメリカにおける様々なテーマを対談している本作ではありますが、文末の最後において書かれている対談の一節が、実に現在進行形の「アメリカ社会」に対するノーム・チョムスキー氏の「知の感性」が紡ぎ出させた言葉かもしれません。
ーーそうなると、選択の余地はない。
だから、選ぶのは簡単だ。
希望を待つしか持つしかないのだよ。
(「第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義」より)
そんな一冊をあなたに。
もしあなたが一冊の本を読み終えたら、是非、あなただけの「独創感想文」を。
文:江戸川Q
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