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発酵は文化だ!「くさい食べ物大全」

におい=個性

個人のパーソナリティを表すもののひとつに匂いがある。
体臭だけでなく、生活臭や身につけている香水もその一部に入るだろう。
私は占い師の鑑定の仕事の傍ら、観相師として様々なデータを取ってきたが、その中でも「におい」というのは重要なファクターになると常々考えていた。

つまり、個人のにおいを特定して分類すればある程度相手がどういう人間か分かるということだ。

私はこれまで多くの人と出会ってきたが、くさいものが好きな人のほうが、そうでない人にくらべて人間力が高いことを実感している。まさに「人間くさい」のである。

「くさい食べ物大全」冒頭部分より

冒頭部分のこの文章を読んだ時に、まさにその通りと思わず膝を手で打ってしまった。

「食べ物の好き嫌いはそのまま人間関係の好き嫌いにも直結する」
というのは、私の長年の観察から得た答えのひとつだったからだ。

有名な発酵学者がそう言うのならこの仮説は間違いない!
と気分を良くして機嫌よく本を読み進めたのだが、本書で取り上げられている食べ物の異様さに徐々にめまいがしてくるのはこの時は、知る由もなかった。

本書はにおいのランクを★〜★★★★★まで
つけており、下はかぐわしいにおいから上は失神するレベルの香りまで様々だ。

もちろん、みんな大好きキビヤックやシュール・ストレミングもしっかりとのっている(もちろん星は★★★★★だった)

本書はシュール・ストレミングだけではなく、世界中のありとあらゆるにおいの強いものについてまとめていて、想像が追いつかない程だった。

その中でも個人的に「これは強烈だなぁ」と思った食べ物についてご紹介する。

息を吸ったら気絶する?!エイの刺身「ホンオ・フェ」

ホンオ・フェは、韓国の港町モッポ市で伝統的に食べられている郷土料理。
ホンオとはエイ、フェは生肉の意味。つまり、ホンオ・フェとは韓国語でエイの刺身という意味があるそうだ。

エイやサメなどの軟骨を持った魚は時間が経つとアンモニア臭がするものだが、ホンオ・フェの場合はさらに発酵と熟成をかけてアンモニアの生成をさせて作られるとのこと。

息を吸ったら気絶するほどの高濃度のアンモニア臭がするものを口に入れるのは正直想像がつかない。

ちなみに筆者は、ホンオ・フェを口に入れた後にpH試験紙に息を吹きかけてみると、瞬時に青色を通り越して濃い紫色に変わってしまったそうだ。

食べものペアリングとしては、強烈なアルカリ性の食品なので、酸味の強いマッコリやキムチと合わせると口の中で中和それていい塩梅になるらしい。
(このセットは酒飲みとしても少し試してみたい)

そもそも人はなんでくさいものを食べるのか?

そもそも人はなんでくさい思いをしてまで発酵食品を口にするのか?

それは気候や文化起因するらしい。

暑い地方だと、食品は放っておくと腐敗してしまう。
そうならないために先に納豆菌や発酵菌を繁殖させて、腐敗するの阻止させているそうだ。
その腐敗を防ぐ過程で独特なにおいが生み出されるのである。


一方、寒い地方だと植物や野菜が育たないので、食品はもっぱら動物性の物に頼ることになる。
動物性の食品は上手に発酵させるとビタミンが生成されるので、それによって栄養バランスを取っているのだ。

発酵食品は生きるための知恵であり、その土地の風土が顕著に出る。

湿度が高く腐敗菌が繁殖しやすい日本では、納豆や熟れ鮨などの強烈な香りの発酵食品があるのも納得だ。

好奇心旺盛な変人に読んで欲しい


本書は「味覚人飛行物体」を自称する発酵学者の著者が、アカデミックに食品の分析をする一方で、ユーモアを混じえて食品のルポをするエッセイだ。

食に対する好奇心が旺盛で、異文化について興味がある人は満足のいく1冊になると思う。

私のように東南アジアを放浪していた経験がある人は、読み進めていくうちに屋台のあの独特な香りを思い出してくるだろう。

異文化や食文化に対して造詣を深めたい人に特に読んでもらいたい1冊。



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