前に「映画「ルックバック」の感想で今までで一番共感したレビュー」というnoteを書いたことがある。
みんなが泣ける泣けるという映画「ルックバック」を鑑賞して、泣けなかったというより呆気に取られた感の方が強かった私はこちらのnoteにシンパシーを感じたのであった。
ただそれはこの映画が「良い映画」であることを否定するものではまったくないのだけど。
私が他の人と鑑賞後の感想が異なるというだけである。
たとえば多重の表象が込められた演出にはとても感心したし、映像も音楽も素晴らしく美しかった。
特に背景描写にはとても心を動かされた。
この辺りは以下のnoteに詳述した。
で、鑑賞してから数ヶ月経って先月からAmazonプライムでも見られるようになったため、noteでまた「ルックバック」の感想がかなり増えてる昨今である。
私のような感想が極めて少ない(まあそんだけ私が世間とかけ離れてるってことやね)ものだから、せめて一人くらいは近しい感想はないかなと一応流れてくるnoteは目を通していた。
しかし、一向に同意できる感想が流れてくることはなかった。
…と思ってたら、先日目を見張るほどビンゴなnoteが流れてきた。
こちらです。
あー、これは私のような底辺層と違って教養のある人だ。
書き出しからすでに他の人と視点がまったく違うことがよくわかる。
他者に阿らず自分に忠実に書く人だ。
ここに注目してる人を初めて見た。
私もここは印象的に思った。
私の場合はこうである。
やっぱり藤野は漫画というか絵を描かないと生きていけないタイプ『ではなかった』のだ。
もちろん京本はその逆である。
なので私的には「なんでもできて恵まれてるのに藤野は漫画でもてっぺん取りたいとか、欲張りにもほどがあるんじゃないか…?(京本には絵しかないのに…)」という感想だったのである。
さらに
なんと、
である。
私は自分の感想以外ではこの2人の関係の非対称性に触れた人を今まで1人しか見たことがない。ちなみに私のnoteでこの部分に触れたのは以下。
実は「藤野は振り向かなかった」の部分は後日2回目の鑑賞で勘違いであることがわかったのだが、全体の主旨としては変わらないのでそのまま引用した。
また私は以下の別のnoteでもこの点に触れた。
さらに先のnoterさんは
と指摘している。
この部分に関しても私は類似の内容を書いた。
このnoterさんの面白いところはカントの道徳法則に準えて藤野と京本の違いを喝破しているところである。
これは原作者の藤本タツキ氏が意図した対比なのだろう。
誤解を恐れず表現してみると…。
ある種の世俗的な権勢欲に塗れてた藤野(「塗れて『た』」で過去形なので要注意)
そして現代日本で生き抜くことが不可能なのではないかと思えるほど純朴無比に絵を(しかもおいおい藤野の役に立てるように)極めたいと願う京本。
とでもなろうか。
まあ、私は今まで絵を描いてきて、藤野なんてかわいく思えるほどゴリゴリの権勢欲に塗れた雑魚モブ絵師や兼イベント主催者からストーキングに遭ってたのでどうしても藤野側に感情移入はできなかったけどね。
話を戻して、さらに驚いたのは以下である。
あれれ、さっき引用した私の過去noteのタイトル…。
これね。
私はこのシーン、感動より「ええっ!?そっち??」となった。
何がそっちなのかは↑に書いた。
けど一言で言うと徹頭徹尾藤野は京本を従属物扱いしてるように私には見えたって話。
と驚いてたらさらにさらに驚いたのは以下。
ちょ、私こんなnoteも書いたんだけど。
「シニカル・トポロジー・(One)アワー〜考察:映画「ルックバック」藤野は犯人を生み出したのか?」
とあるけど私は呟きでは一切ルックバックの感想は呟いてないので完全に別人である。
あーよかった。
3人くらいは同じ意見の人間が日本にいるってことね。とりあえずは。
というわけで、このnoterさんのルックバックレビューが私にはかなりのビンゴだった。
そんでもって、大半の人は藤野に感情移入するから藤野が無意識に京本を踏みつけにしてることに(悪気あってのことではないのはわかるけど)気づかないし、気づかないから素直に感動できるのではないかと思った。
そりゃ主人公なのだから(主人公目線で描かれてるから)視聴者が藤野目線なのは当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
ただ、シニカル・トポロジー・(One)アワー〜考察:映画「ルックバック」藤野は犯人を生み出したのか? でも書いたけど、どうしても私にはこの作品は原作者のシニカル自己内観像が反映しているように見える。
なのであまりに(一見)出来過ぎの藤野の漫画家人生に京本の死という十字架を負わせる構図は、感動を呼ぶのはまあ確かだけど、なんだろう、原作者の自嘲みたいな波長を感じるのは私の気のせいだろうか。
それを感じると、単なる感動というよりその苦さの方が私には残るのだ。
…と書いていたらビンゴのnoterさんが追記にてまた鋭い視点で考察なさってた。
これは読み応えあるのでぜひそのnoterさんの記事本文でお確かめください。