ヨー

いわゆるアスペルガー(正確には広汎性発達障害)の当事者です。主に以下のテーマで記事を書…

ヨー

いわゆるアスペルガー(正確には広汎性発達障害)の当事者です。主に以下のテーマで記事を書きます→読書記録、ジェンダー、フェミニズム、発達障害

マガジン

  • 恋人と話したこと

    恋人と話したことの記録です。

  • ヨーの読書記録

    ジャンル問わず、さまざまな本の読書記録です。

最近の記事

読書記録『裏庭』1

※当記事はネタバレを含みます。ご注意ください。 梨木香歩『裏庭』を再読した。 主人公の照美は、小学生の女の子だ。「純」という名の双子の弟がいたが、弟は6年前に亡くなってしまった。レストランを営む両親は忙しく、家族団らんの時間はあまりない。照美の心のよりどころとなっているのは、友達の綾子の家の、「まっすぐ自分に向かって呼びかけてくれている感じがする(『裏庭』 梨木香歩 新潮文庫 32頁)」おじいちゃんの存在だ。 地元には「バーンズ屋敷」と呼ばれる屋敷がある。とても大きな庭

    • それは本当に理性か?~恋人と話したこと①~

      恋人が言った。世の中で「理性」という言葉が使われるとき、その多くが実際には「信念」や「習慣」、「文化」ではないかと。 たとえば、お腹が減っていてちょうど財布を持っていないとき、通りかかった店の店頭に美味しそうな饅頭が置かれているのを見かけたとする。お腹が減っているし、とても美味しそうな饅頭なので、今すぐ手に取って食べたい。しかし、このとき、多くの人がとる選択肢は「手にとって食べるのを我慢して通り過ぎる」だろう。お腹が減っているからといって、お金を払わず売り物を食べるような真

      • 序~恋人と話したこと~

        私には恋人がいる。恋人とは、いろいろな話をしてきた。ジェンダーの話、フェミニズムの話、哲学や政治、歴史、文学、創作の話。最近では、タリバンやアフガニスタン、イスラム教の話もした。 恋人と話すことは、私にとって実りの多いことだ。恋人にとっても、私と話すことが実りになっていることを願う。 この実りを、忘却の彼方へ置いていくのではなくて、記録に残しておきたいと思った。今後、「恋人と話したことシリーズ」として、私自身の考察なども加えつつ、書き留めていきたい。 以下、「恋人と話し

        • 読書記録「ルポイチエフ 福島第一原発レベル7の現場」

          2021年8月現在、日本が目下直面している危機はCOVID-19の感染拡大だ。少なくない日本人の注目が、COVID-19に向けられている。 しかし、日本の危機はそれだけではない。2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故は、まだ収束していない。 「ルポイチエフ 福島第一原発レベル7の現場」は、ジャーナリストの布施祐仁(ふせ ゆうじん)氏が、2011年から2012年にかけて、原発の関係者や地元住民に取材して執筆した書だ。事故直後の現場の緊迫した様子や原発作業員たちの生の

        読書記録『裏庭』1

        マガジン

        • 恋人と話したこと
          2本
        • ヨーの読書記録
          3本

        記事

          読書記録「家守綺譚」「冬虫夏草」

          梨木香歩「家守綺譚」「冬虫夏草」を読んだ。 二作は連続した物語で、「家守綺譚」が初巻、「冬虫夏草」が二巻となっている。 まず感嘆したのは、その文章の技巧だ。二作ともに、現代日本語をもってして上代の日記文学を彷彿とさせるような古典調の文体を実現しており、あっと驚かんばかりの趣の深さだ。とくに「家守綺譚」の「木槿」の章の冒頭がすさまじい。声に出して読みたい日本語として日本中に知らしめたいくらいだ。 主人公は、売れない物書きの綿貫征四郎。行方不明になった友人・高堂の父親に頼ま

          読書記録「家守綺譚」「冬虫夏草」

          小田急線無差別刺傷事件~彼に恋人がいれば万事解決なのか?~

          8月6日夜に小田急線で起きた事件は、多くの人が耳にしていると思う。 上記のリンクの報道によれば、容疑者の男性は「6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」と語っているらしい。さらに「男にチヤホヤされてそうな女性を殺してやりたい」「(重傷の女子学生が)勝ち組の典型にみえた」とも供述しているそうだ。 この男性のターゲットの選び方は、米国の「インセル」のターゲットの選び方と似通っている。 インセルとは「望んでいるにもかかわらず、恋愛やセックスのパー

          小田急線無差別刺傷事件~彼に恋人がいれば万事解決なのか?~

          彼はなぜ信じなかったのか

           印象に残っている男性がいる。  個人情報保護の観点から、どのような場所で、どのような経緯でそうなったのかは書けないが、さまざまな偶然が重なって、我々3人は熱いお茶を飲みながら雑談していた。我々3人は初対面で、「発達障害者である」という共通点を有していた。  3人はこんな顔ぶれだったーーどこか品のある細身のおば様と、丸みのあるボディに温厚そうな顔立ちの青年、それに、当時20代前半だった自分。  どういう話の流れだったか思いだせないが、青年がこんなことを言った。 「やっぱり、

          彼はなぜ信じなかったのか

          メディアが与える性加害に関する影響~仮面ライダーやハレンチ学園の実例より~

           アニメや漫画に登場する〈同意なき性的な接触や性的嫌がらせ〉のシーンが子どもに与える影響の是非については、かねてよりフェミニストやアニメ/漫画ファンがインターネット上などで議論を展開してきている。  ここでいう〈同意なき性的な接触〉とは、いわゆる”ラッキースケベ”やそれに準じるものを指す。偶発的な事故により、主には男性キャラが女性キャラの胸に触れたり女性キャラの下着姿を目にしたりすることだ。〈性的嫌がらせ〉は、スカートめくりや入浴中の女子を覗く行為など、女性に性的な意味での

          メディアが与える性加害に関する影響~仮面ライダーやハレンチ学園の実例より~

          親から受けた女性差別②~女だからどうでもいい?~

           私は中学時代も高校時代も一貫して文化部に所属していた。  体を動かすこと自体は好きだったが運動神経は悪く、スポーツなら何でもござれというタイプではなかったし、私の入学した中学校に、当時私が好きだったサッカーやフットサルを女子生徒が部活動としてプレイできる環境はなかった。もし女子サッカー部や女子フットサル部があったら、私の中学校生活はまた違ったものになっていたかもしれない。  とはいえ、中学での演劇部の活動は楽しかったし、高校で入学した文芸部も小説や詩で賞をとるなど充実し

          親から受けた女性差別②~女だからどうでもいい?~

          親から受けた女性差別①~女だからムカつく?~

           実家にいた頃、私はたびたび父親に怒鳴られていた。  怒鳴られていたのは私だけではない。父親はそのときの機嫌で子どもに八つ当たりすることがたびたびあり、私の弟2人も被害に遭っていた。姉弟3人のなかで父親からの風当たりが1番強いのは私で、弟からも「姉ちゃん大変だね」と同情されていた。  父親が八つ当たりで子どもに怒鳴るようになったのは、私が高校生の頃だ。よく覚えているのが、私が高校1年生のときの出来事である。その日は休日で、家のリビングに何となく家族全員が集まっており、テレ

          親から受けた女性差別①~女だからムカつく?~

          アスペルガーの自分と脱コル~生きてきた世界の違い~

           私は社会人の女だが、これまでの人生で、「可愛くならなきゃ」「女らしくしなきゃ」と思ったことがほとんどない。  小さな頃から、いわゆる“女の子のもの”に興味がなかった。弟たちとチャンバラごっこやサッカーで遊び、日曜の朝には戦隊ものや仮面ライダーを観るために飛び起きて、サンタクロースに願ったクリスマスプレゼントはハリケンジャーの変身グッズだった。小中学生の頃は親が選んで買ったものを言われるがまま着ていたが、自分で服を選ぶようになるとジーンズやメンズのデザインのシャツを着るよう

          アスペルガーの自分と脱コル~生きてきた世界の違い~