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親から受けた女性差別①~女だからムカつく?~

 実家にいた頃、私はたびたび父親に怒鳴られていた。

 怒鳴られていたのは私だけではない。父親はそのときの機嫌で子どもに八つ当たりすることがたびたびあり、私の弟2人も被害に遭っていた。姉弟3人のなかで父親からの風当たりが1番強いのは私で、弟からも「姉ちゃん大変だね」と同情されていた。

 父親が八つ当たりで子どもに怒鳴るようになったのは、私が高校生の頃だ。よく覚えているのが、私が高校1年生のときの出来事である。その日は休日で、家のリビングに何となく家族全員が集まっており、テレビでニュースが流れていた。父親がニュースの内容について意見を述べたのに対し、私は「あたしは〇〇だと思う」と父親とは異なる意見を言った。その瞬間、父親が声を荒げて「俺に喧嘩売ってんのか!?」と怒鳴り散らしてきたのである。

 私自身はもちろん、そばにいた弟たちもぽかんとして、母親が「あなた何言ってるの?」と父親をたしなめた。妻には逆らえない父親は不機嫌そうに黙り込みその場は事なきを得たが、それ以降、父親が理不尽な理由で私を怒鳴りつけたり、私と父親の間で言い争いが起こったりするようになった。

 あまり認めたくないのだが、私は父親似だ。親戚から「しぐさがお父さんにそっくり」と感嘆されたことが何度かあるし、母親や弟から「ヨーは父さんと似た者同士だよね」と言われる。私と父親の関係がぎくしゃくしたことの一因には、私と父親が似た者同士だったこともある。

 しかし、私が大学3年生くらいの頃、原因がそれだけではないらしいことを私は知った。

 父親がたびたび八つ当たりのように怒鳴る件について母親と話したとき、母親が言ったのだ。お父さんが特にあなたに強くあたるのは、あなたが女だからだと思う、と。

 母親が語ったところによると、父親は自分の弟(私にとっての叔父)に対して「弟の分際で偉そうに」とイライラすることがあるなど、自分より目下の人間に偉そうにされることに我慢ならない性分らしい。父親が怒鳴るようになったのは、自分より目下の存在であるはずの子どもが、尤もらしく意見を口にするようになったことに耐えられないのだろう。そして、子ども3人のなかでも特にあなたへの風当たりが強いのは、あなたが女だからだろう、というのが母親の推測だった。

 当時の私にとって、いくら自分ら親子が仲が悪いとはいえ、自分が親から女性差別を受けている事実を認識することはショックだった。

 母が話したことはあくまで母の推測なので、本当のところがどうなのか断言はできない。しかし、親が子どもを「女だから」と差別する話は、特段珍しい話ではない。現代でも、特に田舎の方になると、娘が大学に進学するのを「女が大学に行くなんて」と渋る親が少なくないと聞く。

 ダメージの程度は人それぞれだろうが、親から性別で差別されることは子どもにショックを与える。少なくとも私はそうだった。そしてそのショックの程度は、多分、子が親を信頼していればいるほど大きい。

 私は両親が嫌いで信頼していないつもりだったし、実際、実家の母親や父親に対して嫌悪・憎悪の感情がある。そんな私でさえショックを受けたのだがから、両親に対して純粋な家族の情がある人だったら、どれほど大きなショックを受けるだろうか。

 いまこの瞬間も、自分が母親や父親から女性差別を受けていた、あるいは受けている事実を認識し呆然としている女性がいるかもしれないと思うと、やるせない。

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