雪よ林檎の香のごとくふれ
北原白秋の最も有名な歌
君かへす
朝の敷石さくさくと
雪よ林檎の香のごとくふれ
君が帰る朝、敷石がさくさくと音をたてる。
雪よ、林檎の香りのように、匂やかにさわやかに甘酸っぱい香りを辺り一面に振り撒いて降ってくれ。
そして、優しく彼女の足跡を消しておくれ。
これは、
隣人の妻と恋愛関係に落ち、
姦通罪で投獄された白秋が、
その女性を思って詠んだ歌。
このふたつあとに
ああ冬の夜
ひとり汝がたく暖炉(ストーブ)の
静こころなき吐息おぼゆる
ああ、寒い冬の夜、ひとりきりでいると、あなたが焚いていたストーブの静けさのなかに、思慮も分別もなくした、あなたの吐息が感じられる。
という、
とてもエロティックだと思われる歌が続く。
雪が舞うような季節は人肌恋しくなる。
女が最後まで忘れないのは、
顔でも、声でもない。
抱き締められた腕の強さ。
と、以前こんなことを書いたことがある。
では、男は。
男が最後まで忘れないのは、
抱き締めた女の吐息なのかも知れない。
いま、そんな気がしている。
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