【あの踊りが嫌だった】パナソニックを辞めて転職した理由
パナソニックに入社して一番驚いたのは「三三七拍子」という名物の舞があることだった。
初めて見たのは歓迎会のときだった。
面接を通過して、内定が決まった中途入社のメンバーが門真の本社に集められて、簡単なビュッフェ形式の食事会が行われた。
食事と会話を楽しんだ後、人事の部長含め、人事部の方々が中途入社の私達に向けて「おめでとう」や「これから頑張ってくれ」という言葉をかけてくれた。
そして最後に「じゃあ、〇〇くん頼むわ」と45歳くらいの人事部の人が出てきて、私達に向けて「三三七拍子」を披露してくれた。
どういうものかというと、
三三七拍子のリズムにのせて、お祝いの言葉を大声で叫びながら舞うというのもだった。ちなみに服装は、ハッピを着用して両手には日の丸の扇子を持つ。頭にはハチマキを巻いている。
YouTubeにあったので載せておく。暇ならぜひ見てほしい。私が伝えたいのはまさにこれである。
初めてこれをみたときは衝撃を受けた。何か変な会社に入ってしまったのではないかと。
というか一般の人は絶対にこんなことが行われているなんて知らないだろう。あのパナソニックがこんなことやってんの?と私は驚いた。
あと、「めちゃくちゃやりたくない」と思った。おっさんがスネ毛を出して踊るなんてこの世の終わりである。なんとしてもこれは避けなければ!と。
しかし、もれなく私は部署に入って速攻でこれを覚えさせられた。
「マジかー。これやっぱりやらないといけないのかー」と絶望したのを覚えている。誰得ですか?これ。
ということで、通常勤務が終わったあとに多目的室に移動して夜な夜な先輩社員に教えてもらって、なんとか習得。
どういうときに披露するかというと、送別会、歓迎会、新年の挨拶、イベント前などだ。要するになにかとやるのだ。なにかあればやるのだ。
一番辛かったのは新年の挨拶で、1月5日に得意先の会社に行き、全社員の前でこの舞をやるのだ。前日はやりたくなさすぎて小学生以来、風邪を引いて休もうかと考えた。
真冬なのに裸にハッピ。足は地下足袋である。はっきり私は思った。「なにしてんねん。これ。」と。お祭り男ちゃうぞ。と。
ちなみに一日3件くらいこれをやるのだ。
移動中も運転席でハチマキを着用して、ハッピを着ている。なぜかというと得意先に着いたときすぐに始めるし、何より着替えている時間なんてないからだ。信号で横に並んだ車の人が「こいつ新年から頭おかしいだろ。」という目で見てくる。そうだ。頭おかしいのだ。ハッピにハチマキで営業車を運転している。あと見えてないだろうが地下足袋を履いてアクセルを操っているのだ。今思えば違反なのではないか?地下足袋はいいのか?
検索してもそんなやつ居ないからヒットしなかった。
送別会の場合は居酒屋でこれをやる。会が終わりに近づいたら、新人はお店の空いてる個室にはけて着替える。そして上司の合図とともに例の最高にダサい格好で入場してくる。もちろんお店には予め許可を取っている。なんの許可やねん。
もちろん仕事がキツかったのもあるが、これも辞めた原因の一つである。なにが良くてこんなことをするのか全く理解できなかった。ちなみにこの「三三七拍子」が上手いと上司から気に入られる。
要するに会社の上役が来たときに、この舞を上手いヤツに任せて披露させれば、采配した上司がちゃんとしていると評価されるのである。厳密には評価の対象ではないがヨイショ!と同じような扱いである。「僕ちゃんとしてます!」というわけだ。
いくら上場企業のサラリーマンといえど、こんなことやるために生まれて来たわけじゃないし、ゆとり世代の私からみると社畜の極みである。
鼻に割り箸をつっこんで、川でドジョウすくいをしているのと何が違うのかわからない。
ここまで言ってしまうと、今もやっている人に失礼だが、私は本当にやりたくなかった。
パナソニックから転職して、もうこんなことをしなくていいし、恥ずかしくないし、寒くないし、地下足袋で運転しなくていいし、今は幸せである。
今思い返しても謎の舞であった。
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