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【経営】キーエンスの秘密⑤商品企画

キーエンスの秘密第5弾です。今回は企業において重要な要素となる"企画”についてです。

これ、まだまだ続くのですが、マガジンにした方が読みやすいのでしょうか? そして、もっとコアのお話をする場合、有料化も視野に入れています。note初心者のため、どなたか教えていただけると助かります。


企画とは何か?

企画とは何でしょうか。その文字のとおり、企てて計画することですね。もう少しわかりやすく言うと、0から1を生み出すという表現も正解かもしれません。または新しい手法をもって効率化することなどです。

キーエンス全体のお話になるのですが、全社員がお仕事において付加価値をつけること、企画をすることが望まれます。ここでいう企画はあくまでも、その人の担当するミッションにおいてです。

これは事業の根幹になる内容でなくても、通用します。ある一例を紹介しましょう。ちなみに、この内容は社内表彰を受けていました。

人事部における年末は、年末調整で大忙しになります。数1000人という社員を抱えていますので、その数が膨大。そして年末に差し掛かる忙しい時期に、社員全員に年末調整用の資料と添付資料を送付してもらわないといけません。この業務を効率化する企画を立てたのですね。この企画は人事の女性社員のものです。

これまでは専用用紙に各自記入いただき、人事まで送ってもらうところを、すべて電子化しました。入力する社員も簡単に、チェックする人事部もデータ化されているので効率が上がったのです。これを開発する初期コスト(時間含めて)必要ですが、今後増え続ける社員に対し、さらに毎年発生する業務が大変効率化されたようです。

このように誰でも企画ができますし、そのような思考でお仕事に取り組みましょうということです。また、このような企画にあたり、大切なのは"気づき"です。

「これ、めんどくさいなぁ、毎回」

「この内容、必要なの? 何のためにやってるんだっけ?」

こういったふとした感覚が企画を生み出します。一般的な会社では、「こんなこと言っても変わらない」とか「余計仕事が増える」とかで発言しないこともあるかもしれません。

キーエンスでは思ったことは発言できる風土があります。ここもすごいところです。

お仕事における企画をイメージできたしょうか。


商品企画とは?

前置きが長くなりましたが、本題の商品企画です。

商品企画は非常にわかりやすいですね。モノを開発製造して販売する会社ですから、その商品そのものを生み出すことを指します。

「どのような商品があればお客さんの課題を解決できるのか?」

これに尽きます。課題を解決することで、付加価値を提供することができ、その分のお金を支払ってもらえます。

それが"役立ち度"のバロメータという考えです。つまり、商品は(買ってもらえるなら)高ければ高いほどよいのです。それだけ役立ち度が高いからです。

こういった視点で毎日毎日、企画案を検討し抽出し調査しまとめ上げる職種、それが商品企画です。

2015年ころの話ですが、この職種を担当している社員は20人以下(全社員の0.2%程度)です。


既存商品と新規商品

すでに事業を継続して40年以上になりますから、商品ラインナップもかなり充実しています。一方、発売して5-10年くらい経って、競合他社もいろいろ付加価値をつけて競争力がなくなってきた…そんな商品も出てきます。

やはり年間何10-100億円を稼ぎ出す商品においては、適切なタイミングで利益を最大化する企画が求められます。これが既存商品の企画です。

一方、新規商品の企画というのは、まだキーエンスで事業として着手したことがないけれども、市場の大きさや伸び、また付加価値がつけられるかなどに着目して起案することを言います。

新規商品の企画は、既存商品の企画に比べて難易度が相当上がります。既存は既存なりの難しさがあるのですが、新規商品の企画はその開発手法(技術)やターゲットへのアプローチ方法など情報の入手が困難であったり、ノウハウがないため、難易度が上がるのです。

キーエンスにおける商品企画担当というのは、この新規商品の企画が求められます。「既存商品は、商品開発や販売促進の機種担当に任せて、企画担当は新規に重点をおきなさい」というように言われます。

これはある種の危機感から出てくるのだと思います。既存商品の企画というのは、売上・利益の現状維持または少し伸ばしていくには必要ですが、業績に対する大きなインパクトがありません。

とにかく柱となる新規事業を企画することが求められるのです。ここも確率論となるのですが、キーエンスでも企画が100%ヒットすることなどありえません。イチロー選手の打率がでればいい方かもしれませんね。それくらい難易度が高いのです。

現に、商品カテゴリが10年前と比べて大きく増えたかというと、そう変わっていません。現在、売上・利益が伸びているのは、海外マーケットに販路を拡げているからに他なりません。

個人的な話になりますが、退職前にこの新たな柱を立ち上げるお仕事に携わることができたのは、本当に貴重な体験だったと思います。感謝しかありません。


どこでもドア(ドラえもん)は企画になるのか?

では、新規商品の企画において、「どこでもドア」を例に考えてみましょう。年代が若い人はご存知かよくわかりませんが、ドアを開けると好きなところに移動できるあれです。たまに、しずかちゃんのお風呂にいくあれです。それにしてもしずかちゃん、めっちゃお風呂入ってますよね。

どこでもドア、企画として通るでしょうか?

①お客さんの困りごと(課題)を解決できるか?

大きな自動車部品や小さなパーツなど含めてものの置き場所の確保や輸送が大変困難だ、これに対してどこでもドアがあれば、安い広い土地に在庫や納品前の商品を保管できるし、何よりタイムリーに納品できる。完璧です。

②その市場性はあるか?

輸送分野の革命が起きるくらい、市場性がありそうですね。この規模感は数兆円レベルでしょう。もっとかな。

③基準となる利益が確保できるか?

この商品の場合、いくらであっても買う人は出てきそうです。

④地球上の技術を駆使して開発でき、安定して生産・供給できるか?

これが難しそうです。作れるものなら作りたいけど、コアのテクノロジーが確立されていない可能性が高いです。瞬時に物質をテレポーテーションさせるというのは、時空のゆがみや原子レベルの伝送などいくつかの技術要素がありそうですが、パッと考えただけではすぐに断念しそうな内容です。

ということで①②あたりは問題なさそうですが、③については製造原価と開発イニシャルが不明、④についてはコアテクノロジーの発見が肝になりそうです。

このような内容は、地球上のテクノロジーの進歩を待つしかありません。なぜなら、キーエンスでは基礎研究をしないからです。

いつものになるかわからないことに永遠と時間(費用)を投じるのではなく、ある程度確立された技術を用いて、すぐに市場での役立ちをあげるものを企画開発するのです。


企画担当の日々の動き

最後に、企画担当の日々の動きを見てみましょう。

企画のお仕事というのは、ざっくり以下のフェーズに分けられます。

①情報収集してネタ抽出

②市場性確認して着手

③実現可能性を吟味して商品化

このフェーズは企画商品ごとの進捗を表します。ひとりの企画担当が複数プロジェクトを持つこともあります。

それぞれ見ていきましょう。

①情報収集してネタ抽出

情報収集は、業界新聞やニュースを毎日確認し、定期的に営業同行などに出かけます。競合の動きもチェックしますし、世の中で何が売れているのかもヒントになります。インプットを増やさないとお客さんの課題や世の中の流れをつかめないからです。

どのような切り口で物事をなお、このフェーズの動きは全く評価されません。ネタ出してなんぼです。

②市場性確認して着手

ネタを出せれば、その市場性を確認していきます。既存マーケットの規模やプレイヤーの順位と規模感などを確認、ここに考えているネタを投入するとどうなるのかを確認していきます。

時には、まだ形になっていないものを紙の上に絵を書き、お客さんにアポを取って意見を聞きにいくこともあります。

③実現可能性を吟味して商品化

このフェーズでは、開発担当(物件責任者候補)とタッグを組みます。技術的に可能か、いくら(原価)開発できるか、開発イニシャルはいくらかなどを計画していきます。

売り値も想定して利益が確保できるのか、開発イニシャルはどの程度で回収できるかを算出します。また、販売体制をどうするのか、海外販売をするのかなど、考えてまとめることは多岐にわたります。


これらの検証を終え、社内的にOKがでれば無事に企画承認、開発がスタートすることになります。

開発の秘密でもお話しましたが、ここでも企画の原動力は、担当者の個の力。ただ、案を抽出するにあたり、さまざまなデータや情報が入手できるようになっていて、営業担当やお客さんも忙しい中、非常に協力的です。

これは日々のお互いの関係性が良好だからできることだと思います。

[2022/11/29追記]
このあたりの内容、詳しくはこちらの書籍にまとめています。
https://note.com/michy0803/n/n4c92cd1eb189

次回以降は、利益を最大化する仕組みについて書きたいと思います。


今後、記事を継続していくモチベーションになります。 よかったらサポートをお願いします。