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#週報
弔いごっこ(週報_2022_03_09)
食卓を囲んでいた。
いつも通り、私が炊いた白米と、大皿に山盛りの名もなき惣菜。
大家族によくある風景。
じいちゃんは魚より肉が好きだ。
遅れてばあちゃんも卓についた。
伯父が言う。
「お前はこう見えて案外親孝行なんだな」
そうだ。
私は養父に強制され、幼い頃から米を研いでいたし、家族の好物を誰より知っている。
……母の隣で笑う、この伯父は誰だったか?
見たことがない。
あああああああああ
私を黙らせる方法(週報_2020_06_12)
三月の初週に会ったきり、どちらからともなく、私とあしながおじさんは長い自粛期間に入った。
言葉を交わす機会がなくなったことで、私の中では新人賞に落選した事実どころか、小説を書いて応募したことすら滲んで消えて、なくなってしまったかのようだった。
それはほんの僅かに、ばつの悪い思いをした私にとって都合の良いことであった。
私は書くことに対して、これといった夢も希望もない。
毎度ご馳走を食べさせてく
病院に誰もいない(週報_2020_03_31)
副鼻腔炎の治療薬を飲みきってしまったことに気付いたのは先週末のことだった。
私の大好きな偏屈せんせいの小さなクリニック。
土曜の診察、花粉症のハイシーズンとなれば狭い待合に座りきれないほどの患者が訪れる。
さすがにこの時期、耳鼻科といえど具合の悪い人間と詰め合って診察を待つ気にはなれず、土・日と自宅でおとなしく過ごしたのち、月曜の午後、それも受付終了間際に手早く受診することにした。
いつもより
あなたの真実を知らなければよかった(週報_2020_01_27)
お寿司が好きだ。
廻っていても、廻っていなくても好きだ。
と言おうとしたけれど、よく考えたら廻ってないお寿司なんて人生で何度も食べたことがない。
とにかく私はお寿司が好きだ。
私のお墓にはどうか「腐っても鯛 廻っても寿司」と刻んで欲しい。
さまざまな回転寿司チェーンがあるなかで、私ははま寿司を最も頻繁に利用する。
本音をいうとスシローの方がコスパはいいかなと思っているけど、最寄り駅からのアクセス
それは君が暇だからとあなたは言うけれど。(週報_2019_11_24)
寒さがだいぶ、深刻になってきた。
休日の午後、物置からカバーのかかった灯油ストーブと赤いポリタンクを出し、移動販売車を待った。
ペチカを鳴らしてくるから、ペチカのおじさん。
おじさんの来る時間ちょうどに在宅できないことも多いから、言葉を交わすのは冬のあいだ、ほんの数回だけ。
今日回数券を買ったらあと何回会えるだろうか。
ゆ き の ふ る よ は た の し い ペ チ カ
どこか物悲しいメ
息を止めても時は過ぎる(週報_2019_11_17)
9月末日締め切りの新人賞に駆け込みで応募が完了し、私は晴れて自由の身となった。
思えば私はあしながおじさんの繰り出す、寿司と焼肉の奴隷のようなものだった。
応募メールを送信してからの反動は凄かった。
毎週末ライブのために地方遠征に飛び、その合間に仕事を詰め込み、呑み歩きを再開した。
1ヶ月では遊び足りなかった。
1ヶ月半以上遊びまわって、その間に書いたものといえば2通のファンレターと、10月か
泣くならちゃんと泣きたくて(週報_2019_06_28)
毎週土曜日と決めていた週報、5日遅れで投稿した6月20日を最後に遂に追いつかなくなってしまった。
書くことがないわけではない。
けれど自分の名前を書いて貼り出すには納得がいかない内容で、気ばかり急いて成果を出せずにいた。
こんな終わり方はかっこわるくて嫌だなあと仕事中にnoteを開いた。
(※ オフィスにツバメ のヒナが飛んでいるような大らかな社風です)
気付くとツイッターに1通のDMが届い
ピンクのシャンシャンに会いたかったの(週報_2019_06_20)
先週、6月12日に上野動物園のパンダ、シャンシャンが2歳を迎えた。
私は一度だけ、シャンシャンを観に行ったことがある。
まだ観覧がネットで抽選制だった頃のことだ。
なんでこんなにパンダが好きになったのか、実をいうと何も覚えていない。
母の思い出話の中に『上野動物園に行った日がちょうど休園日で、私が”じゃあ下の動物園に行こうよ”と泣いた』というエピソードがあることから、きっかけはそのあたりにありそ
罪と罰と、他人の愛情を見た日のこと(週報_2019_06_08)
地元駅の改札を入るところで、若いカップルが双方の母親と思われる女性に激しく叱責されていた。
「楽しく遊んで帰ってきて、怒られるなんて嫌でしょう!?
電話1本入れておけば良かったって、思うでしょう!?」
今、23時半を過ぎたところか。
未成年。
まあ怒られるよね、この時間じゃ。
こういうのは新宿なんかではまず見られないローカルな光景だ、微笑ましく目尻を下げながらすれ違う。
女の子の、情けなく
小さな鈴の音のような君の名をぼくは呼びたい(週報_2019_06_01)
5月の週末、始発待ちのいつものトリキに、あの店員さんの姿がなかった。
3月頃初めて声をかけられたときは正直厄介だな、面倒くさいな、と思ってしまってそこから数週間トリキに行くことはなかった。
トリキの少し手前、南口のドンキホーテを3階から6階まで、そして折り返し6階から3階まで全ての通路を塗りつぶすように歩けば、5時の始発とは言わないまでもそこそこの時間になっている。
ドンキホーテは24時間テ
持たざる者でも涙は出るの(週報_2019_05_26)
秋に出すつもりの新人賞の作品を、まったく書き進めていない。
1ヶ月間、あしながおじさんから連絡が途絶えたからだ。
私は誰にも自分から連絡をしない。
他人の時間に割り込むことが苦手だ。
4月半ばに会ってからあしながおじさんの時間軸の中で私の存在が徐々に溶け出して、きっと跡形もなくなったのだと判断するしかなかった。
私に本を出しなさいと言い出したのはあしながおじさんだ。
彼がいなくなれば私に書く意
続 手のひらに親という負債を握りしめて産声をあげてしまったすべての人に(週報_2019_05_18)
前回、母のことを綴ったnoteに複数の方から身に余るほどのサポートをいただきました。
あらためてそのお礼を言わせてください。
本当にありがとうございます。
頂戴したサポートで母に梅春物の柔らかいパジャマと、ラジオと、後述しますが上等な爪切りを購入させていただきました。
そしてたくさんの拡散をありがとうございました。精神的に余裕がなく、一つ一つのRTにお礼を言って回れなかったことをどうかお許しく