見出し画像

☆本#100 価値を作る 「古くてあたらしい仕事」島田純一郎著を読んで

読み始めたら、ぐんぐん引き込まれたエッセイ本。

著者は純文学好きで、大学卒業後就職せず、27歳ごろからサラリーマンをするも続かず、周りの友人・従兄らの死から考えるところあって、出版社を創業する。社員は自分ひとり。

出版社で働いていたとか、元編集者の話かと思ってたらまったく違っていた。そういった経験がないけど出版社を創った話で、読み応えがあった。

神学者、ヘンリー・スコット・ホランドの100年以上前の詩の次の部分が刺さった。

私が見えなくなったからといって
どうして私が
忘れられてしまうことがあるでしょう。

仏教の偲ぶ気持ちに通じるような。
ホランド曰く、死者は隣の部屋にいるようなものだと。

著者はサラリーマン時代に自分なりの考えで製品を選び、売上トップだったのに、定時に帰宅するため上司に呼び出され叱られた。これがアメリカの会社だったら多分見逃してくれたと思うけど。
偶然読んでいたスウェーデン在住者の話によると、スウェーデンでは男女とも17時に会社を出る。8時に出社した人は16時に帰る。仕事が時間内に終わらない場合は、会社がどうするか考える。オーバーワークになるほどのボリュームは会社の責任であって、社員の業務ではないという考えだそうだ。

合理的。こういうの賛成だけど、日本では難しいだろうな。

著者の出版する本は、既に亡くなった人の、読む価値のある本の復刻版。装丁にもこだわって、さらに価値ある1冊に仕上げる。ビジネス戦略でいうブルーオーシャンを選んでいる。そういう本を選ぶ小さい書店も増えてきているらしい。でも、丹精込めて作っても赤字の年もある。

いくつか読みたくなった。

そして、和田誠の装丁はいいなと、改めて思った。著者が最初の本の装丁を彼に頼んだのは正しい選択だったと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?