見出し画像

☆本#117 情景が浮かぶ文章力「暗夜行路」志賀直哉著を読んで

志賀直哉というと「暗夜行路」が浮かぶけど、長らく読んだことがなかったので読んでみた。

あとがきを読んでびっくり。
この作品の完成までに11年!しかも、長編はこれだけ。

主人公は出生の秘密で悩み(これと同じことを山崎豊子も作品で使っていた)、結婚後妻に起こった出来事で悩む。
そして、病気を経てある境地に達する。

端的に言うとそういう流れで、子ども時代から結婚後の物語で、テーマはところどころ重いけど、然程そう感じさせず、描写力があるので情景がイメージしやすく、読みやすい。

著者は、自分が経験したことも物語に入れているので私小説風。なので、奥さんはこの作品を読んでないとか。別人設定らしいけど。

阿川弘之によると、夏目漱石の門下で芥川龍之介と和辻哲郎が志賀直哉の資質を評価していて、芥川が夏目にどうやったら著者のように書けるか聞くと、「思うままに書くからああいう風に書けるんだろう。」と。逆に、自由に書く分、外部から何か制約が入ると書けなくなったらしい。和辻は事物描写の能力を持ってないと悟り、学問に専念することにしたらしい。

当初タイトルは、主人公のフルネームだったようだけど、今のタイトルのほうがよく、エンディングもその後が読者の想像にまかされているのがいいと思う。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?