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☆本#83 ある日わかる「日日是好日」森下典子著を読んで

以前映画を見て、読みたいと思っていた原作のエッセイをついに読んだ。

映画では主人公が大学生から30代ぐらいまでが描かれているけど、本の方は40代半ばぐらいまでの話が盛り込まれていて所々奥深い。

年齢を重ねていくうち、多かれ少なかれ、遅かれ早かれ、誰もが経験する「気付き」「目覚め」を著者は茶道を通して体験する。それが読者の共感を呼んで、未だに版を重ねるベストセラー本。

確かに、ある時ふと"わかる"ことがある。
大人になったらわかる、子供ができたらわかる、人それぞれのタイミングで、よくわからなかったりしたことが、ああ、そういうことだったんだって。

映画を見た時、自分がイメージしていた茶道とかけ離れていて思ったよりカジュアルな印象を受けたけど、口承と実技だけで全てを教わるのは大変だ。

シーズンによっていろいろ変わるし、それぞれ作法が違うし。しかもメモっちゃいけない。頭で考えるな、手で覚えろって、心を無にして、集中しろって、簡単じゃない。

試験勉強のような種類のは勉強とは違うのだ。

習い始めに著者が質問したことを先生はダイレクトに答えなかった。
先生は、「教えないことで、教えようとしていた」。

時間をかけることに意味があるから。

「先生は、私たちの内面が成長して、自分で気づき、発見するようになるのを、根気よくじっと待っているのだった」

映画を先に見たので先生はシニアかと思ったら、著者が20歳のとき44歳だった。

そして著者はある日、手が自然に動いて流れるように全てが出来るようになる。その後、無の心境にも達する。雨が降る前の匂いや、季節の変化に、これまで気にさえしてなかったことに気付く。


習い始めて10数年後、飲み込みが早く素質がある新人を目の当たりにし、コンプレックスで辞める方向に心が動く。

葛藤がある中、先生に誘われて懐石を経験することで茶道の贅沢さを知り、あるとき吹っ切れて、結局「やめるまで、やめないことにする」。

心の動きや行き着いた境地に共感しつつ、何事にも理由があるという考え方を私は人間の後付けと思ったりもする。

2010年著者は「表千家教授」の資格を許された。宗名は、森下宗典。

20歳のときから20年以上毎週通い続けて、継続が力になった。
あとがきで50代の著者はまだ茶道を習い続けて上を目指していた。30年以上習い事を続けるってすごい、というか、茶道が奥深い。

著者曰く、「お茶に卒業はない」ということだ。

「日日是好日」には先生が伝えたいと思っていた意味があって、著者はある日悟る、「今を味わう」ことが大事だと。
同意。


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