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夫の実家でのらりくらりと過ごす

野暮用があって、義母の家に数週間滞在することになった。義母はおらず、夫と犬と3名での滞在になる。

パリの家は改装工事中でとても寝泊りできるような状態ではないのだ。

義母の家はパリ郊外にある。郊外と言っても森を抜けて川を渡ったところなのだけれど、静かでのんびりとした田舎風情の残る街だ。(エッフェル塔が見えるくらいの距離)

ここは中世のころからの住宅地なのだが、近年になって大幅な開発工事が進められ、近代的な集合住宅がニョキニョキと建てられたおかげで若いカップルや小さな子供たちが多く住む街になった。

実は以前、結婚して数年した頃に私もこの街に住んだことがある。義父が所有するアパルトマンに住まないか、と誘われたからだ。その頃はまだ会社員だったので通勤時間が増えることに躊躇はしたが、15分が30分強になる程度の違いだったから引っ越すことにした。若い私たちには家賃が安くなるのは大変有難かったからだ。

当時はまだ朝晩の通勤ラッシュは日本のそれほどは混んでいなかったが、急に電車が運休になったり、メトロがストップしたりと最低でも月イチ、多い時は1週間連続で何かしらのトラブルが発生していたので、電車、メトロ、トラム、バス、とあらゆる交通手段を乗り継いで、遠回りをしてでも帰宅出来る方法を熟知することになった。

パリ市内に住んでいた頃は何かあっても最悪徒歩で帰宅できていたのが、森ひとつ挟んだ郊外へ出るとそうもいかない。それでも若さもあってか、気合で何とか通っていた。


犬を連れて久しぶりに最寄り駅の傍を通りかかると、その頃の思い出が走馬灯のように脳裏によみがえる。駅のホームを見ると大勢の人が電車を待っている。

朝10時前なのにやけに人が多い。トラムの方もかなり混んでいる。

私が住んでいた頃はまだ10駅ほどしかなかったトラムの路線が大幅に延長され、車両も倍ほど長くなっている。

人口が増えているのが目に見えて明らかだ。


今回は野暮用と言っても毎日何か用事がある訳ではなく、一日家事をしたりゴロゴロしたりして過ごすこともある。家主である義母が不在なので好き放題くつろげるのだ。

とは言っても義母の家は広いので、掃除を始めると普段の倍はかかるし、テラスの草花だって手入れをしなければならない。のらりくらりとやっていたら、あっという間に一日が過ぎている、なんてこともある。

久しぶりだしパリ観光でもしたら?と夫は言うが、どうも電車に乗るのが億劫で気が乗らず、重い腰が上がらない。

しかも、フランス国内外でテロや思想や宗教がらみの事件が起きる度に在仏日本大使館から「不要な外出を避け、極力人ごみには出かけないように」とお知らせメールが送られてくる。

私は素直な人間なので、大使館からそんなことを言われると極力出かけないようにする。もちろん。

自分で言うのもなんだが、従順で良い国民なのである。

パリに着いてから1週間でそんなお知らせメールが3回も届いた。


まあそれでも久しぶりだし、美術館には行きたいと思っているので、混んでなさそうなときにチラッと行ってみようかな。

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