ドイツ期待の若手逸材5選を紹介! FOKUS Bundesliga!!! #1
前書き
ドイツ代表は2014年のブラジル・ワールドカップで史上4度目の「世界王者」となった。マヌエル・ノイアー、トニ・クロース、トーマス・ミュラーなどの黄金世代が躍動し、タイトル獲得を果たした。
優勝から1年を経た2015年にはドイツ代表の名称として「Die Mannscaft」を用いることが発表される。意訳するなら「特別なチーム」といったところか。しかし2022年、ドイツ代表はこの名称の使用を取り止める。サッカーとかけ離れた過剰なメッセージ性とチームの成績不振が、国内で批判され続けた結果だった。
ドイツ代表の課題は「世代交代」にある。ワールドカップ優勝から10年を経た今年、ドイツでユーロが開催されるが、ノイアー、クロース、ミュラーが再びチームに招集されたことは誰もが知るところだ。もちろん彼ら3人は突出して優れた才能の持ち主だが、彼らを招集させないような後進の突き上げがなかったことも事実である。
次のワールドカップが「黄金世代」最後の舞台となる可能性は高いだろう。では「次世代のドイツ代表」を担うのは誰だろうか。本文では進境著しいフローリアン・ヴィルツ、ジャマル・ムシアラの2人とともに、今後のドイツ代表を背負うブンデスリーガで活躍する若手ドイツ人選手5人を紹介する。
1. マクシミリアン・バイヤー
現所属:TSGホッフェンハイム
生年月日:2002年10月17日
出身地:ブランデンブルク
身長:183cm 利き足:右
2023/24シーズンの成績:33試合16得点
2023/24シーズンのブンデスリーガで飛躍的に評価をあげた若手ドイツ人選手は誰かと問われれば、それはバイヤーに他ならない。ハノーファーでの2シーズンのレンタル期間を経てホッフェンハイムに復帰すると、2023/24シーズンのブンデスリーガで16ゴールを挙げ、ユーロ2024のドイツ代表メンバーにも選出された。
アンドレイ・クラマリッチを上回る得点を挙げたバイヤー最大の魅力は「前線での機動力」にある。体格がしっかりとしているにも関わらず、スピードとボディバランスを兼ね備える彼は裏に抜ける動きやサイドに開く動きをしながらスペースに侵入することができる。バイ・アレーナで挙げた得点はセンセーショナルだった。
バイヤーは長らく空位状態にあったドイツ代表のCFのポジションを担いうる「期待の逸材」である。同じくホッフェンハイムユース出身であるトム・ビショフなどとともに目が離せない存在だ。
2. ブラヤン・グルダ
現所属:FSVマインツ05
生年月日:2004年5月31日
出身地:シュパイアー
身長:178cm 利き足:左足
2023/24シーズンの成績:28試合4得点
アンドレ・シュールレやヨナタン・ブルカルトを発掘・育成したマインツユース出身のニュースター。右ワイドとトップ下の中間の位置でプレーする選手で、不調マインツで躍動した2023/24シーズンの活躍もあり、バイエルン移籍まで噂された。トーマス・ミュラーとのシャツ交換も非常に話題となった。
グルダ最大の魅力は巧みな左足を活かしたカットイン気味の「キレのあるドリブル」。推進力と緩急を兼ね備えており、縦方向にも横方向にも相手の守備ラインを崩すことができる。強烈なミドルシュートも武器であり、アタッカーとしての能力が高い。
アルバニア系(あるいはコソボ系)のサッカー選手といえば、グラニト・ジャカやジョルダン・シャチリなど左利きのスターが多い印象だが、グルダもその系譜を感じる優れたタレントの持ち主である。
3. アサン・ウエドラオゴ
現所属:シャルケ04(2.ブンデスリーガ所属)
生年月日:2006年5月9日
身長:192cm 利き足:右足
2023/24シーズンの成績:17試合3得点
サッカーに詳しい人でも、ドイツサッカー以外を中心に追っていれば、ウエドラオゴという名前は初めて聞くかもしれない。反対にドイツサッカーを追っている人であれば、ほとんどの人がこの名前を聞いたことがあるだろう。
ウエドラオゴはドイツで最も優秀な育成機関を持つシャルケが輩出したスーパーなタレントだ。長身で、優れたフィジカルと足元のテクニックのある中盤の選手がいると「Nextヴィエラ」などと称されることがあるが、ウエドラオゴはまさにそれに値する選手である。同世代のなかで群を抜く身体能力とテクニックを持つ彼にはバイエルンを含む欧州のメガクラブが熱視線を送っている。
バイエルンは金銭面の問題で彼の獲得を断念したが、来シーズン以降もウエドラオゴがシャルケに残り続ける可能性は低い。ウエドラオゴが今後どんな成長を遂げるか楽しみでならない。
4. ルカ・ネッツ
現所属:ボルシア・メンヘングラードバッハ
生年月日:2003年5月15日
出身地:ベルリン
身長:180cm 利き足:左足
2023/24シーズンの成績:30試合0得点
ヘルタ・ベルリンのユースチームは左サイドバックの逸材を発掘し、育てることに優れているのかもしれない。なぜならドイツ代表のマクシミリアン・ミッテルシュテットだけでなく、ルカ・ネッツというスター候補生も輩出しているからだ。
ラミー・ベンセバイニを失ったボルシア・メンヘングラードバッハの左サイドの「大穴」をネッツとジョゼフ・スカリーがしっかりと埋めてみせた。その事実からだけでもネッツの優れた才能がわかる。
ネッツの魅力は左足を活かした技術力にある。持ちあがっても失わないテクニックがあり、正確なクロスもあげることもできる。ドイツ代表の左サイドバックは2014年のワールドカップのときでさえ適任者が不在だった。ネッツはその穴を埋めうる「ドイツ待望の逸材」である。
5. アレクサンデル・パブロヴィッチ
現所属:FCバイエルン・ミュンヘン
生年月日:2004年5月3日
出身:ミュンヘン
身長:188cm 利き足:右足(もしくは両利き)
2023/24シーズンの成績:19試合2得点
パブロヴィッチの登場は2023/24シーズンのブンデスリーガで最大のサプライズの1つだったかもしれない。19歳のユース選手が崩壊気味であったバイエルンの中盤で堂々たるプレーを見せたのである。荒削りな部分は多くあるにせよ、その後ドイツ代表にまで選出されたのだからタレントの大きさは疑いようもない。
シンプルなターン、左右両足での展開力、適切に捌いていくプレースタイルは致命的なミスが少なく、周囲に落ち着きをもたらすことができる。一見ケディラ的なタレントの持ち主に見えるが、フィジカルを活かすよりも足元を重視するタイプの、よりトニ・クロースに近いプレースタイルの持ち主だ。
バイエルンユースからタレントが出てくる時期が来た。フランス・クレツィヒやパウル・ヴァナーの台頭も待ち遠しい。彼らの先を行くパブロヴィッチが今後どんな成長を遂げるのか、楽しみでならない。
後書き
他にもドルトムントのユスファ・ムココやフライブルクのマーリン・レール、ケルンのマックス・フィンクグラーフェ、ボルシア・メンヘングラードバッハのロッコ・ライツなど21歳以下のドイツ代表にはタレントが揃う。
また2023年のU17ワールドカップで優勝した黄金世代にも期待の逸材たちがいる。それぞれフリッツ・ヴァルター・メダルを受賞されたパリス・ブルンナーとノア・ダルヴィッチを筆頭に、CBデビッド・オドグや優勝最大の立役者であるGKコンスタンティン・ハイデなどタレントが揃う。
カイ・ハフェルツやヨシュア・キミッヒ、ユリアン・ヴァイグルなど「ヴィルツ・ムシアラ世代」の前の世代は多くのタレントを擁しながら欧州の主要な大会で成果を挙げられなかった。新世代の選手が彼らとともにプレーすることで新たな化学反応が起きることにおおいに期待したい。
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