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インド旅行記③ヨガの聖地へ


ハリドワールからリシュケシュへ

ホテルのバルコニーの目の前であるガンジス川沿いの道では、朝になってもやはり、昨夜に引き続きカオスが続いている。鈴を鳴らしながら歩く人や、時々泣き叫ぶホームレスらしき女性、バイクのクラクションなど。

そんな喧騒で目を覚まし、楽しみにしていた朝食へとゆるゆる支度をする。

ホテルの朝食では、スープのようなもの2種類、スパイスのかかったタピオカ粉っぽい食感の餅ののようなもの、パパイヤを食べた。

英語を話さないスタッフの人に、ジェスチャーと笑顔で美味しいという感謝の気持ちを伝えると、とても嬉しそうにおかわりを持って来てくれた。山盛りで。どうやら感謝が伝わりすぎてしまったようだけれど、せっかくなのでありがたくいただく。

ホテルの朝食

インドではお茶=甘いチャイが出てくるが、私はどうしても牛乳が苦手で、昨夜もギブアップしそうになりながら、ぬるくなる前になんとか飲み干したのだが、今回は無理だと思い、勧められたお茶はパスして部屋で日本から持参したドリップコーヒーをいつも通りブラックで入れた。

バルコニーから人を観察しながらコーヒーを飲んでいると、隣の建物にいる昨夜のおばあさん団体が大量の洗濯したサリーを干しているところだが、スペースが足りずに私の泊まっているホテルの敷地にまで侵入し、スタッフに止められているところだった。見栄え的にダメなのだろうなと思う。

泣き叫ぶ女性のことが気になって見ていると、周囲のインド人の中でもひと際目立って肌の色が濃い。アフリカの方くらいの肌色。外の気温は30度近くあるが、凄く何重にも厚着をしていて更に上から毛布をぐるぐる巻きにしている。きっと病気で痛みが激しいのだろう。どちらにしろ高齢で路上生活をしていて体調も悪く、きっとこれまでも底辺で生きてきた苦悩の多い人生だったのだろうななどと思う。私にはなにも出来ないけれど、同じ人間として、そのような人もいるのだと知ることは大きな意味のあることだと思う。

バルコニーからの眺め

ハリドワールには有名なお寺や展望台などの観光スポットも多くあるようだが、結局調べるだけ調べてどれにも行かなかった。昨日の朝からほぼこのガンジス川の周辺を散歩したり、バルコニーから人を眺めて過ごす、という時間の使い方をして約24時間が経った。

チェックアウトは11時、私を迎えに来る次の目的地からの車は12時に来るとのことだったので、ぎりぎりまで部屋でゆっくりしてから荷物をフロントに預けると、少しまた散歩に出てみた。昨日はほぼホーリー祭関連の物しか売っていなかったお店も、今日はそれぞれバラエティー豊かな商品を出している。もっと早く外に出ればよかったなと思いながらも、残された時間を大切に使おうとマインドチェンジ。

キレイな布が大好きなので、ストール類を売っているお店についつい目がいく。何軒か目をつけておき、ホテル方面に戻る途中で1つの店に立ち寄り買い物。もうたくさん持っているから1枚だけ、と決めて物色。店主は英語を話さなかったが、また表情とジェスチャーでやり取り。値段を聞くともともと500円くらいで充分安いなと思ったが、素材は尋ねても不明だし、値切れそうな空気を感じたので交渉開始。350円くらいの値段まで値切り、買い物終了。

ホテル方面に戻る途中で車から名前を呼ばれて振り向くと、私の送迎車だった。ハリドワールから次の目的地までは車で45分ほどと書いてあったが、渋滞がひどく、結局2時間半ほどかかった。リシュケシュ付近の山道は箱根の道のようで、メインの道路が1本しかなく、ひたすらひたすら渋滞が続いていく感じ。時々観光地や街があって、そこへ出ていく車やそこから入って来る車があり、また延々と山道に渋滞が続く。温泉のない箱根みたいだ。

今回のドライバーさんは落ち着いた感じの60代くらいの男性で、時々場所の説明やガイド的な話をしてくれるが、私の個人的なことを聞いたり、余計なおしゃべりをせずに放っておいてくれるのでとても心地が良かった。途中で少し寝落ちしたりしながらようやく14時半ごろ、目的地に到着。

インドのヨーロッパ村

これから3泊4日お世話になるのは、いわゆるアシュラムと呼ばれているようなヨガの修行のための宿泊施設。とは言え、ゆるくヨガをしつつリラックスしたかったので、真面目な資格取得のコースではなく、リトリートを選択。

場所はヨガの聖地として有名なリシュケシュの街から更に車で1時間ほど行ったところ(渋滞がなければ20分くらい?)、周囲には小さな店などはあるが、基本的には世俗的なものがなにもない、自然豊かな場所。何週間か調べて私の望んでいる滞在が出来そうだったので選んだ場所だ。

施設の敷地
私の泊まったコテージ

まずは歓迎の儀式として、眉間に赤い点をつけ、そこに更にお米を貼り付ける。そして花のネックレスをかけてもらい、ジュースをいただく。

少ししてすぐに遅めのランチの時間。広い敷地内の真ん中に屋外だけれども屋根のあるスペースがあり、テーブルと椅子が幾つも並んでいる。食事は基本的にそこで取ることになるらしい。

既に人がたくさん集まっており、スペイン語がたくさん聞こえてくる。白人の女性たちが多かったので「スペインの方ですか?」とスペイン語で聞いてみると喜んで輪の中に私を入れてくれた。15名ほどのスペインから来たフレンドリーなグループで、普段は同じヨガスタジオで練習しているとのこと。

あらかじめ少ししか話せないと伝えておいたので、私にも分かるシンプルな言い回しとゆっくりな速度で会話。相手の言っていることがほぼ分かって話についていけ、自分のこともある程度スペイン語で話すことができて楽しかった。英語の分からない人たちもいたから、スペイン語を勉強しておいて良かったなと思った。

すると、スパニッシュたちと雰囲気の違う若い女性が一人やってきた。話してみると思った通りドイツ人の女性で、東南アジアの国々を6週間かけて旅行し、この施設には1か月滞在してヨガの資格を取るとのこと。19歳の大学生。インド訛りの英語はずっと聞いていると眉間に皺がよるほど疲れるし、聞き取れない部分もあって英語に対する自己肯定感が落ちていたが、彼女の話す英語はとても分かりやすく、久しぶりにストレスなく会話が出来た気がする。施設について質問したり、周ってきたという東南アジアの国々の話、私が幼少期ドイツにいたことがあるのでその話など。ドイツ語も昔やっていたがほぼ忘れてしまったけれど、片言でたまに混ぜて話してみるととても驚かれた。

なんだか思った以上にヨーロッパ人が多く驚いた。ヨガ&語学留学になりそうだ。

火の儀式

パニール(カッテージチーズのようなもの)入りのほうれんそうカレーと(いつも大好物!!)、トマト系の豆を煮込んだような料理、米とデザートというランチを食べると、私は火を使った歓迎と浄化の儀式に出るため、白い服に着替え。

Havanというセレモニーだが、日本の護摩炊きのようなものだ。ガネーシャ、ラクシュミ、シヴァの3神に祈りを捧げ、果物などをお供えし、お経を唱えながらひたすら炎の中に薬草をまぜたおが屑のようなものを投げ入れていく。

火の儀式に使ったもの

神聖さやありがたさは、もちろんあったが、1時間ほど僧侶と2人だったのでなにか失礼がないようにしなきゃと緊張し、ひたすら火の中におが屑を投げ入れ投げ入れ、胡坐をかいていた脚が痺れて痛くなり、頭の中がそわそわしてしまった記憶。

今日ここに到着したのがたまたま私1人だったのでこうなったが、他の人がいれば投げ入れる動作もここまで忙しくならなかったし、緊張感もここまでなかったな、などと雑念だらけ。まだまだ修行が足りない。

山中の寺院

煙だらけになった白い服から普通の服に着替え、今度はお寺参り。てっきり街の中の寺院をイメージしていたが、車で10分ほど行ったところから舗装されていない山道を30分ほどハイキング。途中、崖をよじ登るようなシーンもあり、サンダルでなくスニーカーで来て良かった。先程ドライバーをしてくれた方が今度はガイドとして同行してくれ、また場所の説明など。いろいろやっているのだろう。

このような山道を歩いた

寺院までの道中の山道で少し開けた場所に、小さな集落のようなものを発見。簡易的な掘っ立て小屋のような家が幾つか立っている。少なくとも裕福な人たちの家ではない。気になってみていたが、触れてはいけない話題なのかなとも思い、質問できなかった。

気になった集落

山の上のお寺は、それ自体とても小さく、正直見栄えのするようなものではなかったが、とても強力なパワースポットであるとのこと。中には仏像がいくつかあり、地元の人々に大切にされている。そこからはヒマラヤの山々とガンジス川が一望でき、凛とした雰囲気を感じる。少しそこでゆっくりとして、新鮮な空気で心身をきれいにできた気がする。

山の上の寺院
寺院の中の様子
山からの眺め

山道の帰りに例の集落がやはり気になって見ていると、ドライバー兼ガイドの方が私の好奇心に応えるように説明をしてくれた。その集落には代々ムスリムの人たちが住んでおり、彼らは酪農をして牛乳を売ることで生計を立てているとのこと。牛を飼ったり乳を搾る施設も近代化されておらず、牧歌的ではあるが、あばら家で中世のような生活を続けている。厳しい生活を送っているのかなと心配になったが、広場を見ると、そこの集落の子どもたちはキラキラした笑顔でとても楽しそうにクリケットをして遊んでいた。

左側の白いタンクに牛乳が入っている
牛乳を運ぶ女性

あばら家の雰囲気から勝手に、普通の街に住むことを許されていない不可触民の人たちなのかな、などとも考えていたが、別にそうでもないらしい。近代的で快適な生活をしている=生活水準が高い=幸せである。そうでない人たちは可哀そうだと日本の基準で決めつけていた自分が恥ずかしくなった。後に友人になった、ムンバイ在住のお金持ちインド人女性も、この集落を「とても素敵な生活をしている人たち」とニコニコしながら言っていた。

便利でラクな生活=良いもの、だと思い込んでいた自分の価値観にハッとした瞬間だった。

Guruとのお茶

山から降りて、ガンジス川のところでまた休憩。ドライバー兼ガイドのおじさんは、おそらく初対面であろう地元の人たちとおしゃべり。私は一人でぼーっと川を眺めたり、少し写真を撮ってみたり。

ラフティングなど、ボート系のスポーツがこの地域では盛んで、その練習をしている人や、キャンプに来ている人などもいた。そして、この神聖なるガンジス川のすぐ近くには、最近できたというバンジージャンプの台が2つあったことにとても驚いた。おそらく少し前までは田舎だったが、リシュケシュにヨガをしに来る外国人が増えるにつれて周辺もどんどん開発され、リゾートのようになってきているのだと思う。建設中の大きな建物もたくさんあった。

ガンジス川でラフティングする人たち

施設に戻ると、ここを含む幾つかのリゾート施設や旅行会社のオーナーであり、ヨガ哲学の先生でもあるGURUとのお茶の席がセッティングされていた。お茶はミルクなしで、と強調。GURUはなんだか写真で見たよりももっと凄いオーラで、私の頭の中をすべて見透かされそうな目をしている。しかも1対1なのでまた少し緊張したが、日本が好きみたいで、日本に住んでいたこともあるとのこと。日本人というだけで好感を持たれているようだった。

「君にとってヨガとはなにかね?」と聞かれたり、他にも哲学的な問いを幾つも聞かれ、なんだか試されているというか、軽く面接のような時間だったが、私も哲学は好きなのでどうにかそれを英語にして自分の考えを伝えることができてよかった。

水シャワーという名の滝行

お茶という名のGURUとの面接を終えてほっとして部屋へ戻るや否や、今度は夕食の時間だと言われてスタッフにドアをノックされる。めちゃくちゃ忙しい。

さきほど大勢いたスペイン人グループはリシュケシュの街にディナーに出かけているとのことで、ドイツ人の女性と2人での夕食となった。小さなテーブルにフォークやスプーンが2セット用意されており、デートの席みたいな距離だった。

ここでは強制的に他の滞在者と交流することになっているのか、と驚きながら、ランチで会ったばかりのJさん(ドイツ女子)と2人きりの夕食を食べる。日本では初対面の人と長時間一緒に過ごすのは結構苦手なのだが、私の半分の年齢であるJさんとは話題に困って気まずい雰囲気になることもなく、まったりと自然にいろんな会話を楽しめた。お互いに個人的なことを聞かなかったので、距離をちょうど良く保てたことが良かったと思う。

夕食後、シャワーを浴びていたら、昨日のハリドワールのホテルよりもはるかに早くお湯が水に変わった。髪を洗おうとしてすべて濡らす前に3分ほどで。寒さに震えながらしばらく待ち、ようやくお湯が出てから一気に洗う。それでもやはりすぐお湯が出なくなり、結局は冷水でシャンプーを流してからトリートメントをし、最後全身を流すのも冷水で、となってしまった。

私には試練だったシンプルな水回り

普段日本では真夏でもゆっくりと浴槽に浸かり、トータル40~50分かけてお風呂を楽しむ私にはとても酷だった。これからあと3日この水シャワーと格闘するのか、と思うと寒さでブルブル震えながら涙が出てきた。



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