《インスタントフィクション》光
「もしかして猫?」
彼女が嬉しそうに言う。
僕は遠くの白い仔猫に目をやり本当だ、と返す。
「どうして分かったの?」
「わたし、実は心が読めるの」
彼女は最近、頓珍漢なことを言う。
僕が本を読んでいると、横に彼女が来た。
「今読んでるの、面白い?」
「うん、でもすこし内容が明るすぎる気がする」
「暗いよりはいいじゃない」
彼女は本を読まない。
握りしめた手に汗が滲む。
言葉にしなくてはならない。
「終わりにしましょう」
僕は呆気に取られた。
体から、力が抜けるのを感じた。
彼女は最後に振り返って、笑顔を見せた。
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