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黒の機械兵 第一話 たびだち#3

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儀式と言うと何をするんだろう。と、教会への道すがら、父に聞いてみた。
「その日から大人の仲間入りという区切りを付けるのと、魔力の量と性質を測るのが目的だね。それぞれを記録して国に報告する決まりがあるそうだよ」
要は国民の把握が目的なのかな。と俺は推理した。詳しくは知らないが乳幼児死亡率は多いだろうから、生まれた時点で登録していては効率が悪いのかもしれない。

そして今日は定例の典礼の日だったようで、儀式に先駆けて司祭様が宗教的な難しい話をして、見様見真似でお祈りをした。歌も歌ったが完全に口パクで乗り切った。
その後多くの村人は教会を後にし、残ったのは俺と同い年であろう子供とその家族数組だった。

「へえ、トーリくん転生者なの。私の祖先にもいるんだよね」
今日の参加者の名簿から目を上げた司祭様が、日常会話のようなノリで演台から語りかける。司祭様……アガツマ氏はすっごいフランクだった。と言うかもしやその名前は日本からも俺同様の転生者が居たのだろうか。ちなみにアガツマとは言うが名前であり家名ではないらしい。
「さて、今日の日まで健やかに育まれた君たちに祝福を。これからは身も心も大人の仲間として、自覚を持って励むように。我が聖光教の光が末永く君たちに降り注ぎますように」
シームレスに厳かな雰囲気に移行し、司祭様は”術具無しで”手のひらからキラキラ光る光の玉を教会の天井に打ち上げ、それは花火のように弾けた。
わぁ! という声が子供ならず大人からも上がる。俺も反射的にでた。
「じゃあ、魔力測定に移ろうか」
ちょっと疲れた顔で、アガツマ氏はニカっと笑った。

「はい、それに手を乗せて。はい、じゃあ行きますよ」
シスターっぽい人たちが現れ、テキパキと演台横のスペースに大きな水晶珠の乗った器具……術具? を設営すると、その前に座らされたトップバッターのジョンの掌を両方掴み、それに押し付けた。
シスター。美人さんである。それに密着されてジョンはちょっと赤くなっている。
「……ギャッ!!」
その仄かな幸せ顔は、一瞬で驚愕に染め上げられた。痛いのか……? 痺れるとか?
術具の珠はじんわりと緑色に染まっていき、或る所でその染色は停止した。
「まだー、まだよ。あと三拍。はい、よろしい」
術具の逆側に着いたアガツマ氏が目を眇めながらその珠を見つめ、測定結果を手元の紙に記入していく。
「量は問題なし。属性は土。お家の仕事にピッタリだね」
司祭様はニッコリ笑うが、ジョンはそれどころではなさそうだった。
苦痛を伴った儀式。通過儀礼にはつきものだというが。
「言うの忘れてた……」
……父さん……?

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。