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黒の機械兵 第一話 たびだち#2

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さて、この世界を子供なりに見回しただけでも幾つもの発見があった。

まず、文化度はそこそこ高いのではないだろうか。生まれ育ったこの村は街では決して無いが、理不尽な信心によって俺の様な者が迫害される未開の地ではない。いわゆるファンタジーヨーロッパ概念を地で行っている。

うろ覚えで料理や文化を持ち込んでもとても太刀打ちできるレベルではないので、そういうのは一瞬で諦めた。”母さん”の料理はチョーウマイ。そもそもおれの主食はコンビニおにぎりだったから料理なんてわからない。体は米でできていた。
家屋は木造平屋が多く、教会と村長の家が例外である。
ただし、トイレに関してだけは、昔祖父母の家で慣れていてもちょっときついな。という感想だが……。

次に人についても、言うまでもないが善良だ。両親は言うに及ばず、弟妹(は、まだ分かってなさそうだが)、ユハの家族。その他ご近所さん。
完全に今まで通りとはいかないだろうが、何もかもが今すぐ駄目になることはなさそうだった。そう思いたい。という気持ちも多分にあるが。

そして……これはとても重要なことだが、この世界には魔法が存在する!
生活に必要な火熾しや照明、水の扱いなどはその恩恵を大いに受けているようだ。
ただし完全に置き換えるものではなさそうで、煮炊きに薪は必須だし夜は早めに寝る。水は圧倒的に井戸で汲んだほうが効率がいい。そもそも、使用には術具というものが必要で、価格はピンキリ様々だが前世の家電品のような高級品もあるらしいが、村にそんなものを扱っている店などあるはずもない。
また、戦闘に使える魔法も同様で術具の使用が基本らしい。生活には関係ないのでそれ以上のことは分からなかった。

そんなことを調べていたら、村の教会唯一の司祭様の不在で延期されていた儀式……十歳になった際に行うという、魔力量測定の日が訪れた。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。