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W.B.G2012 防衛者(後編)

【承前】

ゆっくりと拳銃を持ち上げ、”私”の顔をポインティングする。撃つ。と思うと、直感的に”私”も撃つのだと”理解”した。

ばん

銃弾は私と”私”の顔の横を通り抜け、私と”私”は間抜けな射撃姿勢がたたって尻餅をつく。左手を突いて、立ち上がろうとすると、”私”もそれに倣った。

((コレハワタシダ))

思思考考がが重重ななるる。。立立ちち上上ががりり右右へへ行行くくとと相相手手は左左にに。逆逆もも然然りり。。ななららばばとと私私はは、、【ブラックゲート】のの方方へへ咄咄嗟嗟にに駆駆けけだだすす。。

「「がっぁ」」

黒い直方体にぶつかり、私はまた転んでしまった。顔を上げた眼の前には、また”私”の顔。方向感覚の基準点を物体に向けた結果、”私”は同じ方向に行った。らしい。二年前の頬の切り傷、まだ色が違うな。顔、なのに。こつんと額を打ち付ける。なにも聞こえない。私は。”私”は。
――私は、私だ。

私は、”私”に殴りかかる。互いの拳が頬に突き刺さり、たたらを踏んでもう一度。大ぶりに振りかぶり殴りかかる”私”の手首を掴んで抑止する。

「あ、あぐううう!」

だが、万力のように”私”の指が私の手首を圧搾し、耐え難い苦痛が手を止める。ナンダ? 私ハドウシタイ? 眼の前の顔は……薄やかに微笑んでいた。

互いに手首を握りしめたまま、膝をつく。びしゃ、とぬかるむそれは、カルラだった液体。愛しい人の嗅いだことのない臭気に、無力感が全身を包む。ああ……嗚呼。
彼女の左側の下敷きに、ウエストポーチ。生ぬるい液体の中に、太い円筒の物体が見えた。
見えた。

右手を右側に。よし。
掴む。よし。
引き寄せ、握手。するように、その手の間、に、白リン手榴弾を握り、ピンを抜く。よし。
手を離す。手榴弾は足元に落ちなかった。ほんの、一瞬。

私は一歩下がり、右手で虚空を握った。”私”は、手榴弾を。

((最後に触れたのが私じゃないのは、ちょっと、嫌だな))

二歩、三歩、四歩。私は右手を開く。”私”の手から、血と他の体液のカクテルでべっとり濡れた手榴弾が、ぽとりと”足元”に転がり落ちる。

ぼう

そして、”私”は光熱に包まれ、私は気を失った。

午前0時24分。12月x日。K県F県県境付近山中。日本国。
派遣された【対策部隊】三班24名は、全滅した。誰かを除いて。

【終】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。