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その辺の石ころで絵を描く


『土地の記憶』実家の石/土/植物の灰、骨、新岩絵具(青の箇所のみ)


私は以前アクリルガッシュや岩絵具を購入して描いていましたが、近年は物質的にも私の大切な者に近づけたく、モチーフに縁のある場所の石や土、植物、骨を絵の具にして描いています

今回は私がその辺の石をどうやって絵の具にしているかの記録です


手順

石の採取

採取したい場所から石を少しだけ拾います

自分の土地なら取り放題ですが、人の土地や、採取禁止場所からはとらないようにしてください

風化した蛇紋岩がたくさんある

立ち入り禁止の場所に行っちゃおうかな~…魅力的な石あるんだよな~…って採集地に向かおうとしたら地元民に「そっちは観光地じゃないよ(立ち入り禁止の場所に行くわけじゃないよな?)」って感じで止めていただきました
道を踏み外すところでしたね、危ない危ない

これは土砂崩れした実家、赤土やチャートが採り放題(悲)

採取場所には危険がいっぱいなので、適した装備で行ってください


下準備

採取した石を一部保管している

粉々に砕く前にひと手間加えて仕上がりをよくします

工程
①拾った石の表面を水洗いし、泥を落とします
②石を布でくるみ、ハンマーで割って中の色を確認しながら大まかに色分けします

補足説明
・石を布でくるむのは欠片の飛散防止です
・さらに防護眼鏡推奨
・周りに人の車や窓などの割れるものがない状況で砕いてください
・鉱物の中には有毒なものもあるので、何岩か調べるとより安全です(分からない場合近くの博物館に相談してもいいかもしれません)


粉砕

細かく砕いた実家のチャートと粉砕機


30秒後のチャート


粉砕の方法は2種
ハンマーで叩くのと、粉砕機とあります
私は最初ハンマーで叩いていましたが、衝撃で自分の骨の方が折れそうな気がしたので今は1万円の安い粉砕機を使っています

工程
ハンマーで砕く方法は上記の通り
①飛散対策をして粉砕します
②ある程度細かくなったらふるいにかける
③乳鉢乳棒でさらに細かくなるまですり潰す

粉砕機はハイスピードミルを使っています
①直径2センチくらいまで石を砕く
粉塵マスクと耳栓を装備し、石を器械に入れる
③電源をつなぎ、スイッチオン!
④石が小さくなれば音も小さくなるので30秒くらいでスイッチオフ、電源を抜く
⑤中の粉になった石を取り出す

補足説明
・小石が金属に高速で当たる音がひどくうるさい
・粉塵が隙間から噴き出すので粉塵マスクなしだと塵肺待ったなし
・部屋も粉まみれになるので新聞で覆うといい
・とはいえ掃除が大変
・器械が万一動くとヤバイので、手を入れる際は必ずコンセントを抜く

ふるいをかける

粉砕した石の粉は粒子の大きさにかなりばらつきがあるので、このままでは絵が描きにくいです
なのでできるだけ目を揃えていきます

私は100均一の粗い目のふるいと、1000円程度の200メッシュ(74㎛)と400メッシュ(35㎛)のふるいを愛用しています

工程
①防塵マスクをし、小石を含む機会から出したばかりの粉を粗い目のふるいにかける
②200メッシュ、400メッシュにかけていく
③400メッシュを抜けてきた細かな粉は水を入れた容器に入れる
④少し時間が経つと粒子が大きなものは沈殿するので、上澄みを別の容器に分ける
⑤水に入れた絵の具を乾かして完成
⑥400メッシュに残った砂はそのまま使い、200メッシュに残った粗目の砂はそのまま使うもよし、乳鉢乳棒ですり潰して使うもよし

補足
日本画経験者はご存じのことですが、天然岩絵具は粒子の大きさでやや色が異なります。粒子が粗いと鮮やかで、細かいほどに白っぽくなります。
ガラスは透明だけど、粉砕すると白くなるって言えばイメージが湧きやすいでしょうか?
なので粉砕とふるいをどこまでするかは自分の描きたい画面に合わせて調節できるといいですね。

粉砕した元石

石の粉で絵を描く

さて、絵具ができたところでようやく絵が描けます
ただ、砂だけでは引っ付かないので糊的なものと、安定した支持体(キャンバスやパネル)が必要になります

糊的なもの
日本画の人は膠(にかわ)という動物の皮や骨を煮込んだものを用いることが多いかと思います
ですが、温度管理が難しく、独特の香りもあるので日本画未経験者は扱いにくいかもしれません
そんなあなたはアートグルーやアートレジンなる樹脂を使うとお手軽に描けます
数滴絵具と混ぜて描けば定着します
素晴らしい技術に感謝

支持体
ただのペラペラの紙に絵具で絵を描けば、紙がふにゃふにゃになってしまい、乾いてから絵具がはがれやすい状況ができてしまいます
なので木製パネルに、和紙や絹、綿などを張ったものや、木にやに止めをして下地を塗ったような安定したものに描くのが良いかと思います

私は木製パネルを自作し、布をジェッソで張ったものに描いています

『すいそう』実家周辺の石/植物の灰
『うちの野菜はおいしいⅡ』実家周辺の石/土/植物の灰、新岩絵の具(紫と緑の箇所)


道具リスト

・帽子
・虫よけスプレー
・ハンマー
・軍手
・タオル
・防護眼鏡
・粉砕機
・粉塵マスク
・耳栓
・100均の粗いふるい
・ふるい200メッシュ
・ふるい400メッシュ
・ビニール袋
・絵具ケース
・新聞紙
・掃除用具
・アートグルーかアートレジン
・アートグルー溶解剤
・木材
・やに止め
・和紙か布
・ジェッソ

楽しい

石の採集を続けていると、採取場所によって石の種類が違うのがだんだん楽しくなってきます
この土地は昔海底だったとか、火山があったとか、この山の石がここまで流れるのかなど浪漫にあふれていました
実家も山にあるのですが、昔は海底だったし、採取した石にはペルム期の生き物の殻が入っていることが、落ちてる石から分かるなんてたまらない話ですね

絵を描いているときも、親しんだ場所の色に心を寄せたり、地球の時間や生命の営みに想い馳せたりといい時間が過ごせます。

▼動画▼

https://www.youtube.com/shorts/KQ_T4kqezUM


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