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飛翔

因果を突き抜けるほどの爽快感、紅蓮に悶える夕焼けに弄ばれた彼女が抱える疎外感、家出ばかりを繰り返して来た過去や、火傷した肌、海辺で寝そべる君の高尚さや、奥底に眠るヒエラルキーやエントロピーの海、君の視線から見るものすべては、私とは、違うわけであるし、そのようなしがらみすら取り外して、君と融合して、恒久的な夢を捕食してみたいし、怯懦を抱えた季節を押し込んだ学校から生まれた気配や、レジスタンに浸るだけの奴らが示す差異や、路地裏で眠る犬が用いる利便性や、頸動脈に突き刺さった鉛筆、奇想天外で、孤立無援で、でたらめなシンフォニーをかき鳴らしながら、ニーチェと狂った街並みを歩いて、墓石みたいなバックパックを担いだ人々や、アンニュイとしたサンダルなどを履いて、森羅万象を包むファシズムから逃げ出し、未熟な夏の夜を走る孔雀みたいなタクシー、醜い世界が云々と、いつまでも、誰かや何かに責任転嫁している暇も無いし、無くしたものばかりであるし、あらゆる偏見が持ち寄る原理なんかを、ハンマーで砕いて、新たな価値を創造するためだけに、この命は、輝くわけであるし、天から降る火の粉により焦げた大地、畜生と謳われる動物たちの反撃や、全部の空疎なウソ、現時点に備わる黒々とした靄のようなものを吐き出し、ただ、掻き乱されて行くだけの、惰性な日々に切り込みを入れて、つたない現在に迫るエゴや、傲岸不遜な連中が勧めるファシズムや、さらなる余暇や、簡素な今に現れた恋のようなものを漁り、今に栄養に変え、混沌とした主観に現れる退廃的な妄想や、あらゆる互換性や、制度によりふやけた感情などなどが犇き、この、憎しみだけで燃やし尽くされた世界の瓦礫の下で、服従するだけに至る君を救い出すなどと、嘯きながら、とめどない意味を飛び越えて行く。

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