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お客さんが値段を決めるお店のはなし#9

12月になってもまだ暖かさが残るある日。
月に一度だけ開店するたこ焼き屋の営業をした。
このたこ焼き屋のコンセプトは「つながりを育むたこ焼き屋」
屋号は「カオパス」です。
経緯はこちらからどうぞ。

開店準備のポップ貼りが好きです

開店は11時。
そうは謳っているけど、ゆるーい感じで毎回ちょっと遅れたりもしてたのですが今回は9時半から張り切って準備に勤しむ。
というのもワケがありまして。
この数日前、とあるお世話になっている財団の理事長さんと神楽坂で飲んでいて「そういえば月一やってるたこ焼き屋さんはどこでやってるの?」と聞かれた。
「弘明寺って街の商店街ですよ」と答えたら「えええ!」という予想の遥か斜め上の反応。
訳を聞くと息子さんが住んでいる街だというのです。
「…こんな偶然ありますか」と意味不明な勢いで意気投合。
3日後にその息子さんも交えて再び飲むという意味不明な展開。
そんな流れから、この日息子さんがカオパスに遊びに来るかもということでイケてる大人を演じなければいけないので(笑)張り切ってるってわけ。
男って本当に単純。

暖簾を掛けるのがドキドキするのよね

そつなく準備をこなす。
月に一度とは言え毎月やっていたら開店準備は身体が覚える。
頭では段取りとか先々のことを考えながらも身体が勝手に作業を進めてくれるから本当に便利。
そして、この感覚は若い頃のバイト(工場流れ作業、工事現場、警備員、スーパーの品出しなどなど)で学ばせて頂いた。
今考えたらバイト代もらいながら仕事のイロハまで教わっていたと思うと本当に感謝だな。

営業中というポップも追加してみた

11時開店と同時に別日で出店されてるTAROさん(本名は違う)が来店。
前回に引き続きトップバッターで来ていただけるの本当に幸先良くてありがたい。
BGMはこの日もドリカムの「あの夏の花火」一択。
「ドリカムと現代ポップの比較からみる思考能力の変化」というタイトルでお話をしていたら、2ヶ月ぶりに来店のお客さん。
このカオパスは接客濃度が高いので久々に来てもめちゃくちゃ覚えてる。
外国によくいくフッ軽おばちゃんだ。
この人の話のリズム感がとても楽しく、アルゼンチンに行きたい僕としては行ったことある人ってだけで好奇心に溢れる。
来店と同時に「12月だからさ、げんちゃんのたこ焼き食べないと年越せないよ」だなんて「笑っちゃったじゃない」(サンキュ / ドリカム)
来てくれてよかった。

その後オーナーさんが来店、切れることのない来店に本当にいい感じのテンションが流れていく。
この間も一見さんがちらほら来られてたこ焼きのストックも冷えすぎることなく捌けていく。
歌で表現するなら「なんかいい風、とかね」(サマージャム’95 / スチャダラパー)ってな感じ。

暫くすると常連さんの浅香光代(仮称)さんがご来店。
この人は本当に最高だ。
常顧客さんでもあり、店舗アドバイザーでもあり、集客エンジン(その辺の人を勝手に連れて来てくれる得意技を持つ)でもある。
この日入るや否やどこか疲れたご様子。
「お茶いっぱいくれる?糖尿だから血糖値気にして食べれなくてごめんね」と突然のカミングアウト。
そんな人に食べさせるわけにはいかないに決まってんだろ(笑)
ってことで麦茶を提供。
「お店綺麗にしてるわね、お茶用意したの?いいね、うんうん」と以前いただいたアドバイスをそのまま採用していることに満足のご様子。
「娘を育てる(浅香さんは「仕込む」という表現を使われていた)ことについての知恵」についてお話を伺っていたら、これまた3ヶ月前に一度来たきりのお客さん野村沙知代(仮称)さんがご来店。

みなさん想像できるだろうか、あの浅香光代と野村沙知代の共演だ。
知る人ぞ知るミッチーサッチー騒動の再来か。
ゴジラvsキングギドラよりドキドキするのは僕だけではないはずだ。
野村沙知代さん(仮称)は以前3ヶ月前にふらりと現れて「小麦粉は身体に良くないから米粉で作ってくれたら嬉しいわ」とオーダーをいただいて用意していたんだけど「全然来ねーじゃん(笑)」と思ってた人。
「毎月月曜日をうっかり忘れちゃってさ〜ごめんね〜」と立ち寄ってくださったのだった。
わざわざ思い出してくれて立ち寄ってくれるだなんてありがたい話だな。
で、食べるのかと思いきや急いでるから食べないんだと。

そこですかさず浅香光代さん(仮称)が唐突に
「綺麗な格好してるわね、歌手?」とディスってんだか褒めてんだかわかんない関心力の高さを披露。
続け様に「あなたいい声ねぇ、目を閉じて聴いたらお嬢さんじゃない」とまたもやディスってんだか褒めてんだかのギリギリライン(目を閉じてって笑)を攻めてくる。
すると野村沙知代さん(仮称)が「あら、そんなこと言われたら本当に嬉しいぃ〜」と反応。
…正直僕にはこのやりとりが言葉通りに受け取っていいのか、はたまた裏で熾烈な争いが繰り広げられてるのか読みきることができなかった。
そんなやりとりをハラハラしながら見ていたら、予定があるということで野村沙知代さん(仮称)が「このお金で、こちらの方に是非たこ焼きを食べていただいて」と1000円を置いて行かれた。
「….糖尿なのに?もしかして、とどめ刺そうとしてない?」と思ったけど、そうではなさそうだ。
「あたしゃ血糖値が高いからたこ焼き食べれないのよ、ごめんね」と言いながら賽銭箱(という名のお気持ちボックス)に投入。

お支払いは自分で決めてこちらに投入するだけ

その後、浅香光代さん(仮称)もお茶代と言って500円お支払いしていただきました。
この2人たこ焼き食べてないのに1500円も払って行かれた。
っていう珍事が発生、だから接客業って楽しいんだな。

その後もお客さんが訪れてくださり、いい感じだったのだけどガス切れ。
僕の体力ではなくて本物のガス缶が無くなってしまった。
毎月2缶購入してたのですが、今回うっかり忘れてしまって家のストックだけで営業することに。
でも、やっぱりガス欠になってしまい15時半頃閉店を決意。
インスタのストーリーで閉店告知したら、来ようと予定してくださってた方達から連絡きて嬉しかったのと同時に申し訳なかった。
10数個残っていたので家で食べるか〜と考えていたら初回から皆勤賞の常連さんが閉店準備中に駆け込みご来店。
全部捌けました、大感謝。
その後も閉店準備していたら前回も来てくださっていた親子さんも来店、残念そうに帰られる姿を見て本当に発注ミスを恨んだね。

っていうドラマチックな1日だったんだけど、改めて数字で見てみましょう

日付間違えてるけど12月の販売実績です

たこ焼き0個だけど支払われた方が3組。
1組が思い出せないんだけど、継続していくとこういうこともあるんだなという新しい時代の訪れ。
ちなみにビールも用意してたけど一本も売れなかったので仕入れからも除外しております。(正月に家で飲もうかな)

全体の詳細はこんな感じ

ガス缶が無い分原価が下がってる。
どんこと昆布は少量買って使い切るようにしました。

結果

ん〜ギリギリの赤字。
これガスが切れなければ黒字いけたなと思うな、本当俺のバカ野郎。
早めに終わったのもありますが、ひっきりなしにお客さんが来てくださったので時間売上がめちゃあがっとる。これ物凄い可能性を感じる数値ですね。

というわけで12月が終了。
来月1月8日に開店ですが、実は1周年になります、途中お休みもしてたので10回目ですが諸事情がありカオパスは休止になります。
ってことで最後の出汁爆弾を食べに、また支払いをお客さんが決めるたこ焼き屋という体験を含めて遊びに来てください!!
祝日ですしね!!

この日の光景はYoutubeでもお楽しみいただけます。

過去の経緯はこちらからどうぞ〜

#8
https://note.com/metroseoul/n/n5046baa68926
#7
https://note.com/metroseoul/n/n73dd690d0661
#6
https://note.com/metroseoul/n/n84649469bf5e
#5
https://note.com/metroseoul/n/na356aba72a88
#4
https://note.com/metroseoul/n/n16fa492016d0
#3
https://note.com/metroseoul/n/n7959b3a3e545
#2
https://note.com/metroseoul/n/ne00d653c776c
#1
https://note.com/metroseoul/n/n3f5fb1fcfd57

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