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お客さんが値段を決めるお店のはなし

先日たこ焼き屋を開いてみた。
みんなに話をしたら一様に「なんで?」という反応だったのが面白かったのですが「やりたくなった」という理由で説明していました。

たこ焼き屋をやるにはレシピが重要ということで半年くらいはたこ焼きを作る毎日(毎日はウソ)。
たこ焼きの肝は出汁にあると踏んだ僕は出汁の研究を重ねて乾燥椎茸と昆布のダブル出汁に行き着いた。


小麦と出汁の比率は焼きあがって冷めても中がとろみを維持できる極限を求めて小麦1に対して出汁5.23というギリギリを編み出したけれど生産効率は悪かったので1:4.5に落ち着いた。
このたこ焼きは食べたらわかると思うけどソースが合わない。
塩とマヨネーズが一番合う。
食べた後の口に残った出汁とタコの融合と塩によるキリッとした輪郭の余韻にある旨味がめちゃくちゃうまい。
冷めてもマジに美味い(自分で言っちゃうくらい)。

レシピが完成したのはいいけど、このシャバシャバの非効率な生地を焼き上げるには強力な火力が必要。
だけど業務用は無理。
なので調べに調べた結果IwataniのガスバーナーかSNOWPEAKから出ている雪峰苑というガスバーナーとたこ焼きプレートの組み合わせのどちらかが候補に上がった。
最終的には商品の中には「体験」も含まれることを考慮して価格にして3倍近くかかるけどSNOWPEAKのものにした。

レシピと道具が決まって屋号を考えてみた。
コンセプトは「調和」(たこ焼きの出汁と小麦の調和、ビジネスモデルの売り手買い手の調和(後述します))だけど
調和の前には混沌がある。
いやむしろ混沌を大極で見ると調和しているのかも。
ということで
CHAOS+BALANCE+OCTPUS(たこ)の合体とどこでも通用するという意味合いを込めて「カオパス」という名前にした。

ロゴも決まってパッケージデザインなどもやっつける
コンセプトカラーはオレンジ。
夕焼けや朝日の夜でも昼でもない(混沌)暁の色だ。

そしてこのたこ焼き屋が開店するわけだけど
このお店の最大の特徴は支払い方法にある。
実はこのお店は値段を決めていないのでお客さんに決めていただくシステムだ。


1個でも2個でも10個でも食べていただいて(もしくは持ち帰っていただいて)自分が払いたいだけ払う。
ただお手数だけど払う前にシートに記入をしてもらう。


言わば100個食べても1円だろうが100万円でも好きな値段が決めることができる。
誰も文句は言わない。
そんなお店が果たして成り立つのか。
というか市場に受け入れられるのだろうか。

出店日は成人の日ということで祝日。
小売店としては最高のオープンの日だけど、慣れない僕としてはちょっとハードルが高い日だった。
祝日の影響もあってか開店からとてもたくさんの人が訪れてくれた。
友人や家族も来てくれたのでリラックスしてスタートすることができました。
本当にありがたい。

机上の空論とは言ったもので実際に店を動かすとたくさんの気づきが得ることができました。
オペレーション的な課題ね。
でもこの記事ではそっちよりも結果を書きたい。
この日のお金の流れはこんな感じ。

変動費と固定費

原価率が49%52%と非常に悪い。
しかも粉物にも関わらずだ。
原価構成比を見るとタコとオリーブオイル、卵と干し椎茸が原価率を上げているので考え直す必要がありそう。
地味にSnowPeakのOD缶のコスパも良くないことがわかる。
設備に金をかけたのはいいけどランニングコストにこう影響すると流石に痛い。
それにしても構成比で見ると数字だけの表がイキイキと語り出すのが面白い。

当日の販売実績
このシートがあると検証の解像度が上がります


収支はこんな感じ原価率高すぎ問題

この日の営業時間は午前11時〜15時半。
事前に京都府舞鶴市で試食会を開いた際にボンベ1本で十分事足りていたのでいけると思ってたら4時間半くらいで無くなってしまった。
ちなみにOD缶のガスボンベとはいえ最大火力で30分も焼くと缶が凍結して出力が弱くなることがわかった。
当日3缶(ほぼ残量のない2缶)があったので使い回すことで乗り切れたけれど15時半には店仕舞いする決断をした。
それと僕の背筋が限界を迎えた。一人でたこ焼きを4時間も焼いちゃダメ!
全国のたこ焼き屋の皆様、ナメてましたごめんなさい。

結果的にマイナス2,280円という結果だったけれど、仕入れ一覧にある星印の原材料在庫は来月も使えるものなので実質来月はナマモノ以外は仕入れなしで開店できる。
注目すべきは客単価で14人の平均単価が946円。
1個単価に割り戻して、たこ焼き屋のスタンダードパックが6個500円だとすると540円ほどの値段で買われていたことになる。
この町の最安値が6個300円なので(これは異常に安い店だけど)平均値以上の値段で買っていただかれた結果になる。
そもそも6個500円で販売する想定をしていたので結論的には
値段を決めて売るより、お客さんに決めてもらったほうが総和として市場相場を上まる。という結果になった(たった1日だけだからアテにならんけど)
っていう内訳も全部公開するまでがこのお店のコンセプトなので来月もまた公開しよう。
ってか月一じゃデータの精度が弱いな。

このお店の一見わからないけど一番神経を使っているのは「設え」としての細かな部分に細心の注意を払っている。
導線、ファサードからの見え方、ポップの内容と色目、お金を入れる箱の大きさ、素材、位置、できるまでの時間とそれまでの会話のジャンルなどなど。
普段だとなんとなく見過ごしがちな部分に「意図」がある。
この辺はまた時間が足りなくなるので興味のある方がいらっしゃられましたらコメントなりいただけたらと思います。

追記
公開してから色々な人からメッセージなりコメントいただいて嬉しく思います。
コメントの内容としては
「子供たちとやりたい」
「ワーケーションの企画に取り入れたい」
「企画に関わりたい」
「福岡でポップアップしましょう」
とか可能性が広がるコメント嬉しい限りです!
ぜひいろんなことを試していきたいので興味ある方は是非コメント、メッセージお願いします
特にマネタイズの部分において面白い仕掛けを考えていきたい。
この取り組みで抽出されるデータや行動学的なエビデンスに価値を感じられる企業さん、研究者さん特にお待ちしています!!

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