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朝焼けが街を静かに。

家からほど遠い市街地にある友人の家に泊まったとある日のこと。慣れない環境のためか、いつもより眠りが浅く、早朝に目覚めてしまった。

枕元に無造作に置かれたスマホを手に取り、スリープモードを解除した。その瞬間、光の束が双眸(そうぼう)へ向かって押し寄せる。一気に目が覚めた。これじゃ、二度寝もできなさそうだ。

そこで僕は、コンビニに朝飯を買いに行くがてら、散歩をすることにした。気持ちよさそうに布団の上で寝ている友人を起こさないよう、部屋をあとにする。

スニーカーをつっかけつつ玄関から外へ出ると、待ってましたとばかりに、生暖かい空気が体にまとわりついてくる。これだから、夏ってやつは。これじゃあ、少し歩いただけで汗ばんでしまいそうだな。

マンションの階段を降り、何の気なしに空を見上げた僕は、思わず言葉を失った。そこには、嘘みたいなオレンジ色に包まれた雲と、真っ青な空が広がっていたからさ。

それからどれくらいだろうか。少なくとも1分くらいは空を眺め続けていたと思う。視線を逸らしたくても逸らせない、そんな感覚だった。それに、こんなに綺麗な画は1秒たりとも見逃してはいけないという思いもあった。

こうやって眺め続けている間にも、刻一刻と表情を変えていく空。さっきまで視界の真ん中にあった雲は、右端で見切れている。日が昇るにつれ、だんだんとオレンジ色が淡くなってきた。

視線を正面に戻すと、すっかり見慣れたいつもの風景が広がる。左側には市役所と大きな公園、そして右側には住宅街。ああ、これからいつもの日々がはじまるんだな。

「朝から得した気分やな。さて、飯でも買いに行きますかあ」

動かずともすっかり汗ばんだTシャツの胸元をパタパタさせ、のんびりとした足取りで、僕はコンビニへ向かった。




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