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歯医者の海で見上げる月夜。

奥歯の銀歯をなおすために歯医者に訪れた際、その隣の歯が虫歯に侵されていることが判明した。のちのちのことを考え、治しておいたほうがいいと言われたので、治療に踏み切る。

今日がその治療日だった。もともと、学生時代に約2年ほど矯正治療をしていたので、過去には頻繁に歯医者へ通っていた。矯正治療を終えてからは、歯医者へ行く機会はほとんどなかったように思える。

久方ぶりの歯の治療は、なんだか懐かしい気分になった。診察台に座ると、背もたれが倒される。目の前には照明があった。照明に明かりが灯る。

照明をずっと眺めていると、次第に視界がぼやけ始めた。だんだんと眠気が増すにつれ、瞼(まぶた)が重くなってくる。そしてそのまま夢を見始める。

僕は魚。海の中を縦横無尽に泳ぎ回る魚だ。今夜は満月が空を美しく彩っている。水面まで顔を近づけ、静かに空を見上げる。水面越しに眺める満月は、ゆらゆらと揺れていた。

「勢いよくとべば、月まで届くかな」「月が海に沈まないかな」とかを考えているうち、すっかり寝入ってしまったようだ。

気が付いたら、虫歯の治療はすっかり終わっていた。

にしても、虫歯だった奥歯、結構削られちまったな…。こんなに酷くなるまで気づかなかったのは、なかなかにショック。

ほかの歯まで虫歯にならないように、毎日しっかりと歯を磨かないとな。

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