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審らか

 この画像を見た時、どう形状記述をするだろうか。多くの方は崩れたミイラのお菓子に目がいきくりくりとした目に惹き付けられ、その上の蝙蝠を見てなるほどハロウィン仕様のお菓子だったのかと思うだろう。

 私はこの画像を見た時に細かい所まで見てしまう癖がついている。例えば口の部分、皿が映り込んでいる。取っ手の部分模様を見て取ることが出来る、下に行くと唐草達が見え隠れする。花々の雌しべとなる赤い点はリズミカルに視線が動くようにしてあるなどなど…

こんな夜に電話をしてきてくれた。最近してなかったからって。好きだと言っていたアーティストの曲を流し、ちょうど駅までの道、手を繋いでくれた瞬間の絵を描いて、送ってくれた美味しそうなカフェの写真を点描にしているところだった。忙しいだろうしあんまり連絡はしちゃいけないとか気を遣っていただけに起きてたら電話しよ〜って言われるのは素直に嬉しい。

その電話の中で私の予想が確信となった。以前から自然にネイルやらイヤリングやら細かいところを指摘してくれて、装飾の民としては非常に装飾のしがいがあり、組み合わせを考えたり、コーディネートの中でモチーフに意味を持たせるような装飾をするようにしていた。もしかしたらこの方は細かいところまで見抜けるんじゃないか、意図したことを読みとった上で新たな解釈を提示してくれそうだという気がしていたから淡い期待を込めて。多分恋愛マニュアルみたいなものに書いてあるネイルや髪型を褒めるといったものでは無い。

そこでこの画像である。ミイラが切断されてることは誰でもわかる。オシャレなリップマグとプレートもわかる。マグの話で送った写真だが、1番最初に出てきた言葉は「持ち手のところにもドットがあって可愛いね」である。正直驚愕した。あまり細かいところをねっとり見るような見方をする人が自分の専攻以外で見たことがなかったからであろうか。自分の傍から見たら変態的に思われるような文化財や美しいもの造形の善いものを見る見方を肯定してくれたような気がした。

美術の話も少々。細かいところを見るのは美術館での振る舞いでも同じらしく、じっくり見るタイプであるらしい。これは1番大事な価値観であるから細けえこたぁいいんだよタイプだと反りが合わない。細けえところまで見れるタイプが好きであるし、その方がある事象について2人で議論ができると思っている。私はその方のような知識や頭の回転の速さを持ち合わせていないけれど、多くの刺激を受け、考える機会を与えてくれそうな気がして、こんな時間にも関わらず心臓が震えている。

明日はいつもより余裕持って通学らしい。だから電話してきてくれたのであろう。電話口から聞こえる“明日の準備”がやけに心地よく響いていた。





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