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エッセイ

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わたしにとってのくるり

 京都音楽博覧会2023。初めてのライブ。フェス。10月8日の京都は元気な雨予報で、さーっと雨が降っていた。くるりはトリ。2曲目の『ワールズエンド・スーパーノヴァ』で、くるりに出会ってから今までのことが走馬灯のように駆け巡り、気付いたら涙を流していた。  私の家族は音楽や美術に明るくなくて、音楽を音楽として認識したのは中学生になってから。中学生の頃のマイブームといえば逆張りで、風情もへったくれもない捻くれを露呈しては得意げになっていた。だから流行りのものには触れない。見向き

忙しくない

 日記を途絶えさせている。自分の日記は自分しか書かないので、完全に私の所為ということだ。しかしおかげで充実な夏休みを過ごすことができた。地獄の7時間監禁和歌山旅や琵琶湖汚水伝説など、特に9月後半はアクティヴであったため、目的は達成されたと言ってよい。また春休みにでも。  さて、大学が始まってからというもの、私はさらなる忙しなさに追われている気がする。バイトを始め、大学祭のデザイン関係のボランティア(お金は発生しないので、図々しくもこう呼んでいる)も任されている。他にもレゴの

八月のすべて

 只の休暇の終わりではない、もう一つの夏の終わり。記憶の短冊の一番端は、陽炎が見せるような落ち着きの無さで靡く。真夏のピークの知らせ。日が昇り、傾き、勿体ぶるように沈む。時間が惜しい。空の水筒が捉えて離さない図々しい季節。延びるシャッター。  夏は暑いのが嫌だ。いくら何でも暑い。皆一旦蒸気になって、こりゃ参ったねとクーラーで人の形に戻る。先のことは考えない。どうかあの日の私達はこちらに背を向けたままで。  アスファルトに照り返す友情恋模様多々あれば、粗大ごみと等号結ぶ怠惰

二回生になった

 タイトルの通り二回生になったは良いものの、身も心も一回生の時と変わりはなく、寧ろ荒んでいるように感じる。底なし沼の中を滑空している気分である。脳みその中がドロドロとしていて釈然としない。臼のように重い荷物を背負って京都の家に帰ってきたばかりだからであろう。近所のTSUTAYAが砂場になっていた。  私は長期の休みの度に地元岡山に帰省している。帰省先から京都に帰る時は十中八九新幹線だ。だいたい一時間で京都駅に到着する。文明の利器は素晴らしい。素晴らしいのはその利便性ではなく

春休みも半ばを過ぎて

 大学生の春休みに関する事実を聞いた私は驚かずにはいられなかった。ちょうど一年前の今頃である。  岡山で底辺の高校生生活を送っていた私にとって、春休みとは、特に何も魅力のない短い期間という認識だった。夏休みは長く、冬休みは長くはないものの大晦日と正月がある。秋休みは存在しない。冬にやってくる寒波に備えるためにも、秋休みは早急に設けてもらいたい。  春休みが明けると学年が変わり(変わらない者もいるらしい)、新鮮な温かい風が左右へと泳ぐ。私は花粉症なのだが、それを忘れさせるだ

日記に書かれた日のような日

 『銀河鉄道の夜のような夜』みたいなタイトルは置いておいて。今日はなんとなくいい日だったので日記を書いてみる。決してネタ切れではない。  2023年2月5日。7時起床で幸先のいいスタート。せっかくの日曜日だからどこかへ行けたらいいなと思いつつ色々調べていたら正午を回ってしまった。午前の使い方が下手すぎるだろ。光を帯びたカーテンをシャキッと開くとなんとそこには雲ひとつ無い透き通った青空!ではなかったが、とりあえず京都は晴れていた。反射的にコートを着てマフラーを巻き、自転車に飛

観た映画記録しないの?

 Filmarksとは、観た映画を記録できたり、レビューを書いたりできる、映画ファンご用達のアプリである。俳優や監督から作品を調べることもできるので、とても重宝している。  数は積んでいないが、映画が好きだ。例に漏れず、5年前の僕もこのアプリを活用して観た映画を記録していた。ちょうどTSUTAYAの会員になった頃であり、手に届く映画は時間が許す限り観ていたほどだ。中高一貫校でよかったね。ちなみに、最初にTSUTAYAで借りた映画は、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボ

2023がはじまるよ Part2

 前回の記事にも目を通してもらえると。死の淵から生還した男の話。  同窓会。変わってる人。変わってない人。行方不明の人。悪く言えばただの過去縋りかもしれないが、こんな日が人生に一度くらいあってもいいじゃない。当時気付かなかったことが年を重ねて分かるようになったり、顔だけ知ってるけど話したことがなかった人と仲良くなったりする。同級生のほとんどは大学生で、冗談抜きの「いまどうしてる?」状態なので基本的に話は尽きない。参加できて本当に良かった。カメラも欲しかったけど。  日付が

2023がはじまるよ Part1

 祖母の家での無限湧きハウスダストに潔く白旗を上げる体力さえも吸い取られてしまった僕でも、大晦日のドヴォルザークに介抱されながらなんとか年を越すことができた。苦しい年末年始だった。オリンピックみたいなスパンで年を越したい。みんなから応援されたい。  アレルギー性鼻炎とは恐ろしいもので、鼻から喉の炎症を起こし、熱が出ることもある。その苦しさに屈することなく皆と同じように不足なく税金を納めているのだから立派である。  大学一年生だが一年浪人しているので成人式に参加できる権利を

帰省とディズニープラス

 お風呂に入ろうと思ったら着るものが無かったので洗濯機ぶん回しがてらに文章を書いている。  大学生の夏休みの醍醐味の一つである帰省。醍醐味と言っても、実家に身体と荷物をテレポートさせるだけなので実に退屈だ。帰ってきたところでお祭り騒ぎが起きるほど徳を積んでいないので、馴染みのある空間でゴロゴロしながら何も起こらない平和な地元を窓越しに眺めることに精を出すくらいしかやることがない。帰省とはそういうものだ。  しかし腐っても夏休みである。この退屈なひと時をサブスクリプションに

夏休み

 夏休み。盆と正月が一遍に来たような最高の言葉だ。最も、夏休みには盆しかないのだが。  8月4日の木曜日の午後から正式に夏休みに突入した。午前中に終えた数学の試験の結果が若干気掛かりだが、どれだけ気にしても点数は上がらないので気にするだけ無駄である。履修した授業の単位を敢えて1つ2つ落としておくのが大学に於けるマナーだとかマナーじゃないだとか。  1年以上前の任意の時間軸にいる自分に大きな希望を含ませて伝えたいことがある。「大学生の夏休みはとてつもなく長い」ということだ。

短歌

 現在は空前の短歌ブームらしい。若者を中心にSNSで、比較的静かに流行っているのだ。  浪人時代、退屈な受験勉強から逃げるために短歌を始めようと思ったことがある。短歌なんて化石のようなものだと思っていたが、最近では現代的な表現を用いて詠む短歌が人気ということが分かった。手始めに俵万智や穂村弘による短歌の作り方ガイドのような書籍を読んだ。そのうちに、本当に短歌をやりたい人は一目散に歌集に齧りつくのではないかという結論に辿り着き、一気に熱が冷めてしまった。ただただ下品な理由で新

京都

 大都会岡山から上洛して4か月が経とうとしている。東京に入ることを上京と言うが、東の京と書いて東京なので、京都に入ることを上京とした方がしっくり来そうなのだが、現実ではそうなっていない。世の中は理屈だけで構成されている訳ではないので、これくらいのことで上げ足を取っていてはこの先生き辛くなる。第二のトーマス・エジソンにならないように気を付けたい。  京都の夏は暑い。まだ7月なのに、地面がめくれ上がりそうな暑さが続いている。実家から仕送りとして手のひらサイズの扇風機が届いたが、

受験

 中学受験と大学受験を経験しているが、幸いなことにどちらも第一志望に受かって進学している。どちらも二度とやりたくない。後者は二度経験しているが。  小学校に通っていた頃は神童で、テストで満点を取る日々を続けていた。98点をとって泣いていた日が懐かしいし、今はその意味が全く分からない。卒業生の殆どが地元の中学校に進学するのだが、その中学校についての悪評を度々聞いていたので、できることなら行きたくなかった。中学受験なるものの存在を知ったのは5年生の時で、6年生になると同時に近所