日記に書かれた日のような日

 『銀河鉄道の夜のような夜』みたいなタイトルは置いておいて。今日はなんとなくいい日だったので日記を書いてみる。決してネタ切れではない。

 2023年2月5日。7時起床で幸先のいいスタート。せっかくの日曜日だからどこかへ行けたらいいなと思いつつ色々調べていたら正午を回ってしまった。午前の使い方が下手すぎるだろ。光を帯びたカーテンをシャキッと開くとなんとそこには雲ひとつ無い透き通った青空!ではなかったが、とりあえず京都は晴れていた。反射的にコートを着てマフラーを巻き、自転車に飛び乗って外へ出た。

 まずは昼ご飯野郎をシバきに行く。近所に唐揚げがおいしいラーメン屋があるのでそこへ向かった。が、なんとそこには長蛇の列が。人類の唐揚げ愛を舐めていた。瞬間的にポツダム宣言を受諾し降参した僕は何とか動揺を隠しながら列を横切った。こんなにマスク社会でよかったと思える瞬間はそうそう無いだろう。道なりに漕ぎ続けること十数分。京大前の某金沢カツカレーを食べることでミッションクリアとなった。カレーはすべてを解決する。まだ肝に銘じていない人は銘じておくように。

 ここで回れ右をして帰っては面白くない。赤道目指して南下すればなんかあるかも(激寒)という赤道直感の監修の下、小ぶりな車輪の自転車を鴨川沿いに走らせた。家からどんどん離れていくうちに温かくなってきたので防寒具を仕舞った。赤道が近い。ぽかぽか春の陽気と言うには時期が早すぎるが、そうとしか言いようのない空気感だった。何かが終わり、代わりに何か新しいことが始まってしまうという期待と不安の混じった汽水域のような空気がそこにはあり、懐かしく心地よい気持ちになった。

 僕は映画部に所属していて、春休みには監督として映画を撮るという大仕事を控えている。自分一人で作るわけではないので、コミュニケーションを円滑に進めるために具体的なイメージをまとめておく必要がある。そのために用いるのが絵コンテだ。絵コンテがあれば映画についての細部をスタッフと共有できる。現場で無駄な時間を費やすことなく、余計な心配をせずに撮影できるのだ!へけっ!

滑り台。映画は滑りませんように。

 絵コンテを切るためには実際に現場に行ってロケハンをするのが一番手っ取り早い。今日は絶好のロケハン日和だった。建物や河川敷、公園の遊具の写真をいくつか撮った。実際に現場として採用するかは分からないけれど、何もやらないよりはマシということだ。試験明けから本格的に始まる脚本会議も張り切っていこう。

 京都駅八条口付近にはイオンモールがある。たいていのイオンモールにはトイザらスがある。僕はトイザらスの門を潜るときに一切物怖じをしない。トイザらスキッズだからだ。レゴの新製品を一通り見て、適当にミニフィギュア等を買った。

恐竜の着ぐるみ。どこで使うんだ。
コアラと飼育員。

 本屋にも寄ったがお目当ての『蟹に誘われて』を見つけることに苦戦しモヤモヤが残ってしまった。絶対にあるという保証はないが絶対にないという保証もない。ガチャ廃人の考えである。

 ひと通り満喫したので家に帰ることにした。行きの時は帰りのことなど何も考えちゃいない特攻脳なので、不本意そうにせっせとペダルを踏みつける。訳の分からない音を出す謎楽器の奏者や、別に家でもできるのにわざわざ外でゲームをしている二人組などを見かけた。これだよこれ。これぞ鴨川。川から文明が生まれるのも合点がいく。

 家に着くのは晩前になりそうだったのでスーパーに寄って肉と麺(むし)を買った。適当に焼きそばでも作ろうかな。豆腐と白菜があるから鍋でもいいな。帰宅して温かい家の中で考えているうちに晩ごはんを作る気力がみるみるうちに無くなっていった。一人暮らしの食事は後片付けが面倒だ。日曜日のフィナーレを洗い物で締めくくってもいいのだろうか。しかも言うほど空腹でもないじゃないか。頭上に「外食」の二文字が浮かんだ。再びコートを羽織り外へ出ると寒いのなんの。日中のぽかぽか春の陽気は何処へやら。出費が多いような気もするが、体力と引き換えに地下鉄代を浮かせたのでプラマイゼロなのだと自分を説得した。そして今に至る。

 特に大きいイベントは無かったものの、今日は何故か全体的に満足した一日だった。外で一人うろうろするだけでこの幸福が得られるのは一つの才能なのかもしれないし、頭が赤ちゃん(エケチェン)になっているだけかもしれない。しかしなんにせよ、日常に潜む幸福を見つけられるのは素晴らしいことだ。明日も今日のような日になるとは限らないが、いい日になることを望みながら眠りに就こう。それを毎日続けることこそが「生きる」ということなのかもしれないのだ!へけっ!

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