(退職エントリ)KADOKAWA辞めて独立しようと思った話

※内容まとめ

・2021年9月までKADOKAWA在籍。ノベル編集部の編集長や兼務で音声ビジネスの立ち上げ等をやっていた。
・特に「異世界系」「なろう系」といわれる分野で編集者をやらせて頂いていた。
・個人的なライフワークとして「クリエイターが自立して発信して、稼げる環境作りを支援したい」という想いで取り組みしてきた。
・今まで、起業や新規事業など「フロンティア」に挑むことをやり続けていた。
・それらをもっと実現するために10月から「異世界フロンティア株式会社」というド直球な会社を立ち上げするよ。

●本文

9月末までKADOKAWAにて、編集者やら音声の新規事業やらをしていた堤由惟(つつみ・ゆい)と申します。

退職エントリを書くのは初めてなので、不作法があったらすみません。
あと、よく間違われるので先に。
下の名前的に間違われやすいですが、男です。お間違えないように(笑)

まず、大前提ですが、
KADOKAWA批判とかは一切ありません。
後ほど詳しく書きますが、
かなり好きなことをやらせて貰っていたと思いますし、
感謝の方が大きいので、書く気はありません。

じゃあ、なんで退職エントリなんて書こうと思ったのか?

昔に比べたら、会社を辞めて「独立」なんて大仰なものではなくなったのかもしれませんが、それでも僕にとって今回の決断は一大決心だったので、
自分の振り返りと身辺の整理、
ということで書かせていただければと思います。

過去を振り返れば、
20代の頃に一度、会社を作って潰した経験があるので(その時の挑戦は無謀の一言でした……)、
そこから10数年。
改めて一国一城の主としてやっていくことに
恥ずかしながら武者振るいしてます。


●自己紹介

自己紹介も兼ねて、
ざっと経歴を書かせて頂きます。

●2005年(20歳)「学生起業時代」

情報系学部の在籍だった僕は、
学校の身内でエンジニアやデザイナーを集めて
株式会社アブサードスピアという会社を立ち上げしました。

当時の記事がWEBに残っていたのでリンクはっておきます。
https://www.senshu-u.ac.jp/albums/abm.php?d=2127&f=abm00005680.pdf&n=ニュース専修ウェブ版2005年10月号(第421号)_10面.pdf

KSPというインキュベーション施設に入居して、
仲間とワイワイやりながらWEBサービスの立ち上げ・運営をしたり、
一緒にネットゲームで遊んだり、していました。

ちょっとサークル感が強すぎました。
非常に楽しい思い出だったのですが、学生ノリだったことは否めません。

その後、事業に失敗してしばらくは放浪生活をしていました。

台湾に1ヶ月滞在してブラブラたり、お世話になっていた社長の家に転がり込んだりして、3畳一間の物置(確かウォークインクローゼットだったと思う)を
借りて寝泊まりしていました。

その後、人生の転機が訪れます。


●2010年(25歳)「オタク業界に一念発起して転身」

時間の余裕のあった僕は、
深夜にアニメを見まくり、ラノベにハマりました。

それまでオタクコンテンツにあまり興味を持っておらず、
なんだったら「アニメや小説は人生にとって不要なもの」くらいに思っていた僕は
目を覚ますことになります。

「そうだ、オタクでご飯食べていこう」

そう思って、オタク業界に転身しました。

まず初めに、
「虎の穴」という同人誌が強い会社の通販部で書籍バイヤーを経験させていただき、オタク業界で商売する基礎を身に付けさせて頂きました。

その後、人伝いのご縁があって
アニメイトグループのコンテンツ会社であるフロンティアワークスに入社。

起業家という自負をもとに「新規事業やったるでー!」と熱い闘志を燃やしていた僕は、入社早々に新規事業を提案させていただきました。

それが後に一大市場となる「異世界系」「なろう系」の出版事業でした。

入社直後の20代の若造の事業案に対して、
上長や当時の社長は真摯に向き合って下さり、
急速に事業が形となり、
社内外のいろいろな方のご支援があって、
下記レーベルの創刊へと繋がりました。

MFブックス (フロンティアワークスとKADOKAWAの合同ノベルレーベル)
https://mfbooks.jp

アリアンローズ (フロンティアワークスの女性読者向けノベルレーベル)
https://arianrose.jp

ちなみに、「アリアンローズ」という名前は僕がつけさせて頂いたのですが、
ア行のほうが一覧表示で前に来やすいかな、何となく女性向けとしてローズが入っている方が気高さがあるかな、みたいな考えでつけたように記憶しています。

昔から新規事業に心ひかれて、
新しいものに飛びついてきました。

失敗することの方が多かったですが、
10回に1回くらいは大きな勝ちを掴めることが多かったです。

その中でも最も成功したので前述の「異世界系」の出版事業でした。

これは僕自身の考えとも合致していて、
旧来の出版モデルとは異なり、
読者と作家が一体となって作る新しい作品様式でした。

双方向性、自由主義的、コンテンツのフロンティア
そんな匂いを感じる「作品が生まれる過程」の部分に心惹かれた気がします。

僕が本格的に編集者となったのもこちらがきっかけでした。


MFブックスもアリアンローズも
異世界系のブームに乗って急激に事業や人員が拡大する中、
アニメイトグループ内で新しいことに挑戦するチャンスをいただきます。

それが異動して担当させて頂けることになった
「アニメイトカフェ事業」です。
https://cafe.animate.co.jp

まだ、立ち上げ直後で本部の人員も10人いないくらいだったかなと思います。

しかし、その事業の熱量はとんでもないもので、
関わる社員、来店してくださるお客様、取引先様含めて
みんなの熱量の高い、伸び盛りのベンチャー感のある事業でした。

みんなで一緒に夜遅くまで残って、
次のコラボテーマの準備をしていたのは良い思い出です。

その流れでバンコク、台北にカフェ店を作りにいきました。
月の半分くらいは出張で家を不在にする日々。

その後、プライベート面のゴタゴタがあって少し体調を崩してしまい、
しばらく緩めのお仕事をさせて頂いている時に、
KADOKAWA転職の機会を頂きました。

僕を育てあげてくれたアニメイトグループには、とてつもない感謝の念を頂きながらも、次のステップに進もうと転職を決意。
KADOKAWAに移ります。


●2017年(32歳)「KADOKAWA入社」

しっかりと「モノ作り」に関わりつつ、
今までの得意領域の「新規事業」もやっていきたい、
とそんな思いで入社。

この記事を見てくださっている方ならご存知の方も多いかと思うのですが、
KADOKAWAという会社について簡単に。

前述の僕のオタク時代を支えてくれたコンテンツの多くは
KADOKAWAが供給してくれているものだった気がします。

アニメやラノベなどなど、
オタクとは切っても切り離せない会社、それがKADOKAWAだと思います。
(思いっきり個人的な偏見ですみません!)

ニコニコ動画を運営するドワンゴとKADOKAWAの合併も久しい記憶。

最近だと、所沢に自社建設した社屋に本社を移転したよっていうニュースも話題になりました。

改めて振り返ってみるとKADOKAWAって本当に面白いしすごい会社。

「変化適応」が止まらない。

さて、そろそろ僕がKADOKAWAでさせて頂いていたお仕事の話をば。

冒頭で記載の通り、
「モノづくり」と「新規事業」をしたい、
そんな思いで入社した僕に対して、
大変有難いことに、
新規レーベルの機会を2度もいただきました。

初めは、
「L-エンタメ小説」という新しい小説レーベルを立ち上げ。
https://prime-edit.kadokawa.co.jp

単なるノベルレーベルにとどまらず、
読者と編集者と作家がフラットに物語や世界観に関わっていくという、
コンセプトのもとに、
クラウドファンディングや読者イベントなども実施させていただく編集部でした。

しかしなかなか、書籍自体の数字が伸びきらず打ち切りとなります。

その後、新たな児童向け小説レーベルの立ち上げに携わり
編集長もやらせていただきました。

加えて、以前僕がフロンティアワークスにて立ち上げした
「MFブックス」に再度関わらせていただくことになり責任者に据えて頂きました。

さらには、社内のビジネスプランコンテンツに応募した新規事業が審査通過して受賞して実現のきっかけを頂きました。

それが「音声ビジネス」でした。

色々なご縁やチャンスが重なり、
3部署の編集長や責任者を兼務で担うことに。
慌ただしく日々が過ぎていきます。

そんな最中にコロナが訪れて働き方も大きく変わりました。

社会全体がそうだと思うのですが、
2020年から2021年にかけて大きな変化の年でした。

無我夢中で取り組むなかで、
また人生の転機が訪れます。

かなりプライベート面の話になってしまうので割愛しますが、
場所、時間を固定してフルタイムでの勤務が難しくなってしまいます。

紆余曲折あってKADOKAWAを退職することになります。

若干ややこしい事情なのですが、
実は当初KADOKAWAを辞めるという話になった時は、
独立を想定していませんでした。

「いつかは自分で会社をもつぞー!」

という思いはあったのですが、
それはまだ先の話だと自分の中で考えていました。

ただ、状況が大きく変わりまして、
退職して自分で会社をやる時間ができて、
独立させていただくことになりました。


●KADOKAWAを辞めて独立。今後やっていくことは?

じゃあ、独立して何をやるのか?

それについて少し話させてください。

KADOKAWA在職時代から、
ちょっと変わった編集者として見られつつも
こんな活動をしていました。

・ツイッターを使った創作ハウツーやTipsの発信
https://twitter.com/tsutsu722
・Youtubeを使って「クリエイター編集者ツッツー」としての情報発信
https://www.youtube.com/channel/UCkLVBhkMamUCzky6E9kINLA

なんでこんなことをやっていたかと言うと、
僕の根底の思いとして、
「クリエイターが自立して生きていくことを支援したい」
という考えがあります。

一昔前、
クリエイターは、出版社やメディアなどと通じる以外に活躍したり、お金を稼いだりする方法はありませんでした。

しかし時代は変わって、
SNSやWEBを使って自分自身で情報発信するのは当たり前の世界になります。

今はさらにもう一歩進んで、
クリエイター自身が自分の力で作品発表をするにとどまらず、
プロモーションしつつ自分でマネタイズの場所も用意して、
自分の手で稼ぐことが可能になっています。

現に、WEBやSNS発のクリエイターたちは、
場合によっては出版社や企業メディアよりも影響力を持っている方もいらっしゃいます。

個人が個人の力で世の中に変革を与えていくことが可能になった時代だと思っています。

漫画や動画がSNSでバズるという光景はもはや日常になったと思います。

その中でも個人的に思い入れがある小説の分野はまだまだ限界があります。

それは、小説が「コンテンツの原石」に近いからだと思っています。

原石は原石のままでは多くの人々に届けるのは難しい。

ダイヤモンドの原石もカッティングしてあげることで光り輝きます。

それを実現するべく、支援していきたいと考えています。


●新会社「異世界フロンティア」について


さて、最後に今後の活動についてご報告させてくださいませ。

冒頭でさらっと書かせて頂いたとおり、
2021年10月に
「異世界フロンティア株式会社」とういう会社をつくらせて頂きました。

会社HPも知り合いのクリエイターさんが超速スピードで作ってくれました!
感謝感謝です。

https://isekai-frontier.co.jp


名前そのまんまですが、
「異世界系」を基軸に事業展開させて頂く想定でして、
作品・作家エージェント事業を中心に会社をやらせて頂きます。

「フロンティア」に込めたイメージとしては、
自身を振り返ってみると常に新事業や新開拓といったものに常に取り組ませて頂いたなぁと思ってまして、
今後についても、お付き合いさせて頂く作家さんやクリエイターさんとともに
新開拓地に挑みたいと言う意味で「フロンティア」と名付けさせて頂きました。

企業ミッションとしてはHPにも記載させて頂いていますが、下記を掲げています。

* 挑戦を続けるクリエイターが、生き生きと自立して、作品展開し、マネタイズできる社会環境の実現を目指す。

* それを実現する手段として、クリエイターが出版社やメディアに一方的に頼るのではなく、必要に応じて利用しつつ、自律した作家活動を支援するエージェント会社を我々は目指す。

* その社会的文化を醸成する投資として、作家ならびに作家志望者向けの情報発信、育成、コミュニティ構築を目指す。

* クリエイターの文字原作を生かす新境地として、音声コンテンツ(特にASMR)領域に誰よりも強く着目し、作家が作品作りを継続できる持続可能なエコシステムの開発を目指す。


世の中のクリエイター環境は大きく変わりつつあって、
流通・マネタイズといったものを昔のように企業に頼らなくてもできるようになってきたと思います。

自立したクリエイターを生み出す。

その流れをクリエイターの支援を通じて、またはクリエイターと一緒に実現していきたいと思っています。

そういう僕自身も企業なので矛盾するじゃん、という話もあると思いますが、
究極的に言えば、うちの会社の支援がなくても「自立できる」クリエイターに育ったなら卒業してもいいと思ってます。

ちょっと寂しいですけど、
それが健全な流れじゃないのかなと。

また新しいクリエイターと一緒にフロンティアを目指していけばいいのであって、
お互いに依存し過ぎちゃうのは良くないと思いますしね。

ざっとクリエイターさんとの関係をまとめると
下記になるかなと。

1.支援が必要なクリエイター

2.併走するクリエイター

3.自立できるクリエイター

●1.〜2.のクリエイターに向けて

1.については、
僕自身のライフワークでもありますが、
「世の中に挑戦するクリエイターを支援し続けたい」という思いもあって、クリエイター向け(特に作家)のYoutubeやTwitterを使った情報発信もやらせて頂いています。

・Youtubeチャンネル クリエイター編集者ツッツー 
https://www.youtube.com/channel/UCkLVBhkMamUCzky6E9kINLA

・Twitter
https://twitter.com/tsutsu722

しばらく更新をお休みしていたのですが、
この情報発信を再開して強化していきたいなと思っています。

また、1.〜2.のクリエイターの相互扶助を目的に
コミュニティも作りたいなと思って準備しています。

思いのほか考えなきゃいけないことが多いので、
立ち上げまで時間がかかりそうなのですが、
興味がある方はTwitterをフォローしていただけると何かしらアナウンスできるかなと思っています。


●2.〜3.のクリエイターに向けて

また、2.〜3.のクリエイターに向けたコンテンツとして、
ゆくゆくはクリエイターが自分自身で食べていける(端的にいうと稼いでいける)ようなメディア(もしくはプラットフォーム)を作りたいなと思っています。

個人的には、音声コンテンツにその可能性があるのではないかと思っていて、
クリエイターが自分自身で生み出した音声コンテンツで課金できるような仕組みを作りたいなと思っています。

僕が関わらせて頂いているクリエイターは主に作家・小説家が多いのですが、
作家は「原作を生み出す」という強力な武器をもっている一方で、
文字コンテンツは「固い食べ物」でもあります。
つまり、消化するのに時間がかかるコンテンツなんですね。

なので、動画やSNSなどを中心にファスト消費が求められる世の中とは相性が非常に悪いのです。

ただ、原作がなければコンテンツ産業は何も始まらないは確かなので、
原作の価値を増幅する「装置」をクリエイター自身が扱えるようにしてあげる必要があります。

音声は、比較的、制作ハードルの低い二次コンテンツなので、
原作を用いて何かしらの音声コンテンツを作って、マネタイズを図る、
といった一連の流れをクリエイター自身ができるようにしてあげれば、
何かが変わるのではないか、と密かに思っています。

こちらも徐々に準備していければと思っています。


●まとめ

異世界フロンティア株式会社という会社を作ったよ。
https://isekai-frontier.co.jp

Youtube、ツイッターの情報発信は再開していきたいと思っているので、
フォローよろしくね。

・Youtube
https://www.youtube.com/channel/UCkLVBhkMamUCzky6E9kINLA
・Twitter
https://twitter.com/tsutsu722


この記事を読んで何かピンっと来た方は、
ぜひ、ツイッターのDMを下さいませ。
(誰でも送信できる設定にしています)

全てにお返事できないかもしれませんが、
必ず目を通させて頂きます。


また、作家エージェントについての詳細やコミュニティ立ち上げについては
仕組みを検討しているので、
おいおい情報発信させてくださいませ。


ということで、
退職エントリでした!

長文にお付き合い頂きありがとうございました!


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