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2020年振り返り「#わたしが帯を書いたなら」

なぜ「頼まれてもいないのに本の帯を書く」だなんて、こんなに勝手なことをしているのか…については、年始の2020年1月の#わたしが帯を書いたならの冒頭で、まったく説明になっていない御託(ごたく)を書いているので、読み飛ばしてもらっていいような気がします。

そんなわけで、本来は毎月更新していたものでしたが昨年後半は余裕なく…。
すでに2021年も2月ですが、2020年下半期に読んで、おすすめしたいと感じた本をまとめて、「自作の帯」とともにご紹介したいと思います。
丁寧に丁寧に何度も読み返した本もあり、大事なものをたくさん受け取りました。

阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし

著:阿佐ヶ谷姉妹

これは、もう最高でした。
おふたりが交互に登場するエッセイ。
声が聞こえてくるようなテンポの良い語り口で、「人柄」とはこういうことなんだなあ、と改めて阿佐谷姉妹が大好きになってしまう内容です。
ところどころ声を出して笑ってしまうようなおかしみがあり、
よく似ているのに、それでいてまるで違う、
そんなおふたりの小競り合いや食い違いか楽しくて楽しくて。
コンビでありながら、他人でありながら、暮らしを共にしている阿佐谷姉妹。
昭和のお生まれではありますが、ある意味で、どんなコンビよりも令和っぽい感覚で暮らしを育まれているような気がするなあと感じました。
微笑ましいやりとりに、心底羨ましくなってしまいます。
書き下ろしの小説も、意外な内容で、長編も読んでみたいなと思うようなラブストーリーでした。
おふたりとも文才があって、本当にすごい。
大好きな先輩にもプレゼントしました。超おすすめです。

書くのがしんどい

著:竹村俊助

書くのがしんどい1人として、待ち望んでいた竹村俊助さんの一冊。
Twitterでもnoteでも本当に勉強になる投稿ばかりなので、
本当に楽しみにしていました。
まず「書こう!」と意気込むのが、そもそもの間違いなのかもしれませんね。
なにもないゼロのところから、自分の中をほじくり返すのではなくて、まず起点を「聞いたこと」「見たこと」「経験したこと」...から取り入れて、これは重要であると思ったこと、感じたこと、を「伝える」アクションとして取り組む。
これは何も取材記事のみの話ではなくて、エッセイであっても、もちろんコラムにおいても。あらゆることに繋がるものでしょうし、暮らしは、日常は、いつも「取材」なんだ、と改めて感度や切り取る視点、掛け合わせるセンスを磨くことの大切さとともに痛感しました。
そして何より、この本の読みやすさ、納得感、離脱ポイントがどこにもないような構成。
すべてがデザインされていて、この本こそが竹村さんの筆力の証明になっている。
たぶんこれからも何度も何度も読ませてもらうと思います。
「書き始めるのが嫌でしんどい」わたしは、
とりあえず机に向かうしかないのだな、、と当たり前ながら、
諭された気分で、ちょっと背中を押してもらえました…
ひとつでも「しんどい」を解消して、長く取り組めるようにしたいものです。

すべて忘れてしまうから

著:燃え殻

週刊SPA!で連載されていた、燃え殻さんの大好きなエッセイ。
2020年、いちばん丁寧に読んだ本かなあと思います。
終わってしまうのが勿体無くて勿体なくて、何度も何度も戻ってはじっくり余韻を味わって味わい尽くして、読み進めていきました。
内容は、タイトル通りいい意味で「なんとなく忘れてしまう」ような、
本当に些細な短編の連続です。
些細なできごと、日々ですれ違ったあの人のこと、その些細な違和感。。
どれもこれも、日々の中で全部忘れてしまうようなことばかりなんだけれど、それをなんとなく忘れられない、忘れることができない、そんな燃え殻さんの「弱さ」と「やさしさ」がじわりじわりと切なく伝わってくる本です。
「わたしがいちばん好きな文章って、燃え殻さんなのかもしれないな」
と改めて思ったりして。本当に素晴らしい1冊でした。
枕元に置いてある『相談の森』が早く読みたい…。

明け方の若者たち

著:カツセマサヒコ

名前のない僕と、名前のない彼女。
特に主人公は、誰もが聞いているような音楽を好み、誰もが1度は抱くような葛藤に苦しみ、誰もが通り過ぎるような恋をして、それをどこか、さも特別な体験をしているかのように思い込んでいる、どこにでもいる若者で。
読んでいて、これはカツセさんであり、わたしでもあるんだろうなと苦しくなる瞬間がありました。
ひとつひとつの描写が、自分の中でありありと映像化されてしまうのは、カツセさんの筆力でもありながら、これまで自分の目で見てきたものをただ思い出しているだけなのかもしれない、と途中で色々と混同してしまいます。似たような体験がある人は、鮮やかに傷をえぐられてしまうような、そんな一冊でした。
もう戻りたくないけど、時々すごく愛おしくて思い出したくなる思い出ってあるよなあ、としみじみ思います。

1日10分のごほうび

著:赤川次郎/江國香織/角田光代/田丸雅智/中島京子/原田マハ/森浩美/吉本ばなな

豪華な布陣に驚いて手に取ったらば、なんとも上品で本当におもしろい短編集でした。贅沢です。
帯には、「寝る前や電車のちょっとした時間に1日10分のごほうび…」といったことが書かれていたのですが、我慢できるわけもなく。。
ぶっ通しでどんどん読み進めてしまって、幸せすぎる120分間でした。
はあ、おもしろかった。
個人的には、江國さんの「晴れた空の下で」、角田さんの「旅する本」、中島さんの「妻が椎茸だったころ」がおもしろかったかなあ。
このシリーズほかにもあるようなので、きっと読みます。
今から楽しみにしています。

「普通」の人のためのSNSの教科書

著:徳力基彦

内容としては、基本の「き」なので、新しい知識が手に入る、というよりも、「徳力さんはこういうことを考えて運用されてきたのか」ということを知れたこと、そして「個人が発信すること自体がエゴイズム」「インターネット上はコロナフリー」など、すぐに使いたくなってしまうようなワードがさすが満載で、よかったです。
つい最近、すこし身近なところで炎上があり、丁寧にまとめられた「炎上リスクについて」の記述には、深く納得しました。
今後、SNS無しに語れることなど、本当に皆無になっていくでしょうから、ぜひひとりでも多くの人に、実名で有意義な発信ライフを行ってほしいし、わたしも努めたいなと思いました。

さがしもの

著:角田光代

角田光代さんの、「本」にまつわる物語だけを集めた短編小説集です。
ひとつひとつの物語が、ちょっぴり切なくて、あったかくて、誰にでもあるような、絶対に体験できないような…
そんな、物語との不思議な距離感、感覚に陥ります。
いくつか特に好きなものがありましたが、中でも「彼と私の本棚」は共感のあまり胸がいっぱいになりました…
同棲している彼氏に「好きな人ができた」と別れを告げられてしまう主人公。
そのとき、口をついて出た言葉が「その人、本を読むの?」だった。
一緒に集めて並べた彼と私の本棚を、別々に分けて別れる感覚。
経験したことがある人も多いことと思います。
その苦しさを、わたしも本当によくわかるし、なんだか「その彼女は本を読むの?」と相手に問うてみたい気持ちはとてもわかるなあ。
本を読まない人を、わたしは好きになったりしないものな。
本を愛する人に、ぜひ読んでほしいなあと思う1冊です。

あやうく一生懸命生きるところだった

著:ハ・ワン

過労で体を壊したとき、いちばんにすすめらたのがこの本でした。
韓国のイラストレーター・ハワンさんのエッセイ。
語られているのは、いかにこの世は「一生懸命生きてしまうように」仕組まれているのか、ということと、「はたして人生を一生懸命走り続けることに意味はあるのか」ということ。
これでもか、というぐらい、わたし自身にとっては「苦手なこと」が並べられている印象で、それは、「過程を楽しむこと」「ゆっくり立ち止まってみること」「人と比べないこと」「多くの人に求められるものを提供しようとしないこと」。。
心がほっと楽になれるような、立ち止まることができるような内容だと語る人もいるけれど、一生懸命生きることから降りるというのは、これほどまでに大変なのか…と、わたしにとっては一層考えさせられる内容でした。
難しすぎやしませんか。
自分の価値観を根っこから大きく変えなければ、きっと叶えられない変化だろうなあ、と改めて悩まされてしまいました(笑)
でも、この考え方はきっとこれから、大切なものになるはずですね。

女帝 小池百合子

著:石井妙子

2020年、読んだ本の中でもかなり夢中になった一冊でした。
まず、都知事として、ひとりの政治家として、彼女を支持する・支持しない、ということはさておいて、
(この本から浮かび上がった)彼女の人生や価値観は本当に、知れば知るほど面白く心惹かれるものだと感じたし、
より具体的に言えば、「人間らしさ」をゆうに超えた、
プライドや欲深さに驚き、他者の目を「これでもか」と気にする場面と、
それを意に介さない冷酷な場面、そのバランスにも、
ただただ「はあ、、」とため息が漏れるだけで。
度を越したそれらに、わたしはちょっと憧れてしまう瞬間も正直あったりして。
だけど、ついて回っているのは、いつも「劣等感」や「孤独」なのかもしれない、ということにも想いを馳せてしまいました。
長い時間をかけて調べ書き上げられた一冊ですが、読みものとしても大変面白かったです。
まだ読んでない方、分厚い本ですが、ぜひ。

夢をかなえるゾウ2 〜ガネーシャと貧乏神

著:水野敬也

『夢をかなえるゾウ』はずいぶん前に読んでいましたが、
文庫でシリーズ化されていたとは知らず、
突如「お金」について考えるタイミングがやって来たので、
書店で「2」である、『ガネーシャと貧乏神』を手に取りました。
なんと言うか、ドラマ『愛の不時着』をハラハラしながら鑑賞する合間に、箸休めとして読むのに、こんなにぴったりな本は他に無かったんじゃなかったかな、と(失礼でしょうか...)感じています。
読みやすくスルスル進んでいくのに、かなり重要なことが何度も羅列されていて面白かったです。
「欲しいものは欲しいと口にする」
「やりたいことをやる」
というのは、当然叶えていく秘訣ではあるけれども、
「楽しみをあとに取っておく訓練をすること」
「困ってるときこそ困ってる人を助けること」
など、後々の自分も一緒に助けてあげられるような行いもすすめられていて、じゃあそれはどう両立するのかというと、
結局 決断と優先順位、なにがいちばん大事なのか、ということ。
これだけなんですよね。
今のタイミングで読めてとても良かったと思える一冊でした。

求めない

著:加島祥造

「こういう本ないかなあ」と人に相談して、すすめてもらった一冊でした。
詩人で翻訳家、墨彩画家でもある加島祥造さんのものです。
わたしは、仕事でもプライベートでも、どちらかというと、「見返り」というよりも「同じぐらいの熱量」「同じぐらいの負荷」を常に周りに求めてしまうところがあって、それが苦しみに変わりやすいことが多い人生でした。
だけど、人に求める、ということがいかに、無意味であるか。
しっかりと取り入れたい価値観を何度も繰り返し解いて問いかけてくれるような内容になっていたので満足でした。
なかなかすぐに変わることは難しいけれど、
「期待しすぎる」「愛しすぎる」「求めすぎる」ことをやめて、
頭より身体を優先しながら生きていく、というのが今後を良いものにしてくれるはず、と改めて思える作品でした。

僕の人生には事件が起きない

著:岩井勇気

ずっと寝かせ続けてしまってた、ハライチ岩井さんのエッセイをようやく年末に読めました。
まさにタイトル通り。
特別、派手な事件は何も起こらず、ただ、淡々と過ぎる毎日の、誰もが日々経験しているようなことが綴られているものです。
しかしそこに「親近感をおぼえる」みたいな読後感は一切なくて、
「なんでもない」「ちっとも特別でない」日々の出来事を岩井さんは、
こう切り取って、こういう目線で見ているんだな、とじんわり味わって、だから、「岩井さんなんだな」と少し理解できた気になれる、面白い一冊でした。
そして、読み物の書き手としては、
「そうか、腕さえあれば、特別な出来事を過去から一生懸命掘り起こさなくても、特別な意味を見出さなくても、いくらでも綴ることができるんだな」と、非常に参考になる一冊でした。
そして何より、家庭環境や友人との日々、相方との関係性、綴られている範囲では「なんと幸せな人生を送っているのだろうか」と多くの人が思うんじゃないかなあ、と思います。
岩井さんが考えている「平凡」は、実はとても恵まれた、みんなが手にしたいはずの「毎日」なのかも。

人生の結論

著:小池一夫

ここまで付箋やラインをつけた本は、ここ数年本当になくて、「やっと出会えた」というような感覚がありました。
今の自分自身にとてもフィットしていたということもあるでしょうが、本当に素晴らしい内容で。
「大人になる」とはなんなのか。
そして絶頂期を終えたあとも人生は続いていくものであることを、
どうもわたしたちは忘れがちです。
セカンドキャリア、サードキャリアを見据えて成熟していく必要があるということに、改めて気づかされてる一冊です。
また「人付き合い」や「仕事」に振り回されず、人を大切にして、仕事を楽しむ…そうありたいと願うのであれば、どんな価値観を持っていればいいのか。
80年以上を生き、たのしみ、ネットを使いこなし、発信し続けた小池さんだからこそ語れるその内容は、本当に、あらゆる面において(当たり前かもしれませんが)視座が高くて、「人生ってたのしいのかもしれないなあ」「こんな大人を目指していけばいいのか」と未来をわくわくとたのしみにさせてくれます。
ずっと大事にしたい一冊になりました。

2020年後半読んで、特によかったものを、ざっと並べてみました。
どれもこれも本当に嬉しい出会いで、これからも度々読み返すだろうなあ、というものばかりでした。
2021年もたくさんの本と出会えますように。

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