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好きな音楽と、それにまつわる、個人的な話

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2019年11月の記事一覧

抑うつ状態の苦しみ、音楽としてのインダストリアル Esplendor Geométrico『Eg1』

抑うつ状態の苦しみ、音楽としてのインダストリアル Esplendor Geométrico『Eg1』

仕事中に立てなくなった日 自分は、「抑うつ状態」になったことはあるが、精神科医の診断では、「うつ病」になったことはないらしい。もしかすると、この見立ては、医師によって変わるものなのかもしれない。客観的な事実として、自分は、抑うつ状態になり、半年近く仕事ができなかった日々がある、ということはいえる。

 今回は、抑うつ状態のときの話を、少しだけ、する。2015年のことだ。自分は横浜DeNAベイスター

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鍵をかけたTwitterアカウント、かつて友人だった人 メンデルスゾーン『夏の夜の夢』

鍵をかけたTwitterアカウント、かつて友人だった人 メンデルスゾーン『夏の夜の夢』

推敲になっていない推敲 昔から、自分が言ったことを、後から引っ込めがちだっただけに、このnoteでも悪癖が続いている。一度、公開した記事の細部が、気になって、直してしまう。

 その価値があるほどのテキストを書いているつもりでもないので、なんとも気恥ずかしい。推敲のつもりが、推敲になっていないということも、しばしばある。それでも公開するからには、つまり、読んでもらう、誰かの時間をわずかでも使っても

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『LIFE』のパート2ではなく、『LIFE』のその後 小沢健二『So kakkoii 宇宙』

『LIFE』のパート2ではなく、『LIFE』のその後 小沢健二『So kakkoii 宇宙』

若かった男が、年を取っていく過程 小沢健二の『So kakkoii 宇宙』は、2006年の『毎日の環境学』以来、13年ぶりのアルバム。ボーカル入りのオリジナル・アルバムとなると、2002年の『Eclectic』以来、17年ぶりとなる。

 彼のこれまでのアルバム、『犬は吠えるがキャラバンは進む』『LIFE』『球体の奏でる音楽』『Eclectic』『毎日の環境学』を、通して聴いてみる。歌詞の中で歌わ

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負けることがうまいボクサーの話 Red Garland『When There Are Grey Skies』

負けることがうまいボクサーの話 Red Garland『When There Are Grey Skies』

恋人が元ボクサーだった人 井上尚弥とノニト・ドネアの試合を、居酒屋で見ていた。

 その日は、とても、悲しいことがあった。一人でいられない、というのが正直なところで、しかし、他人を過度に巻き込むのも気が引けて、何軒か、はしご酒をしていた。20時前だというのに、もう、3軒目に入った。いかにも場末の店、といえば失礼だろうけれど、カウンターと小さなテーブル、メインはホッピーと焼き鳥、そんな佇まいだった。

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コメダ珈琲店とブルーベリーの人 ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」

コメダ珈琲店とブルーベリーの人 ショスタコーヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」

いうほど安くはないけれど、思っていたより大きい 喫茶店で流れている音楽といえば、ジャズか、クラシックか、そのあたりをイメージされることが相場かなと思う。これも決めつけと言われればそれまでで、中には、カンタベリー系でないと仕事がはかどらないとか、自分の行きつけはLAメタルしか流していないとか、そういう声もあるだろう。ただ、そのような店舗は、自分の知る限り、それほどサンプル数は多くないと思われる。

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女性との口論で、好きな曲のフレーズを出された日 KIRINJI『11』

女性との口論で、好きな曲のフレーズを出された日 KIRINJI『11』

「KIRINJI」に興味がなかった自分 “大きく揺れたなら 逆さまに映る世界”

 このフレーズが彼女の口から出てきたときの驚きは、ぼくに次の言葉を吐かせることをずいぶんと躊躇わせた。KIRINJIの『11』に収録された「心晴れ晴れ」の一節だ。

 このアルバムが出たときのナイーヴな気持ちを言葉にするのはむずかしい。もともと、キリンジは、兄の堀込高樹が弟の堀込泰行を誘って、兄弟2人で結成されたバン

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