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米国連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックを反トラスト法違反で提訴

このnote記事『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとして「GAFA×BATH」などの米中メガテック企業をはじめと国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中からその内容をシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』では、米国連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックを反トラスト法違反で提訴した件を取り上げます。

FTCは、2020年12月9日付けプレスリリースで、「FTC Sues Facebook for Illegal Monopolization(FTCがフェイスブックが違法な独占をしているとして提訴)」と発表しました。

FTCは日本の公正取引委員会にあたり、米国の独占禁止行政を担う政府機関です。反トラスト法に基づいて、不公正な競争や不当な商慣行を監視しています。

プレスリリースによれば、FTCは、2012年のインスタグラム買収、2014年のワッツアップ買収など、フェイスブックはみずからがSNS市場を独占することへの障害となる脅威を排除するためにシステマティックな戦略を展開してきており、こうしたフェイスブックの一連の行為は不当に市場競争を阻害、消費者が市場競争の便益を受けれなくしているとしています。

そして、FTCは、インスタグラムやワッツアップを含む資産の売却、ソフトウェア・ディベロッパーに対して非競争的な条件を課すことの禁止、将来の買収・合併に当たって(政府への)事前通知や認可を条件とすることなどを求めて、46州、コロンビア特別区(DC)、および準州のグアムの司法長官とともに、コロンビア特別区の地方裁判所へフェイスブックに対する訴訟を起こしました。

この『戦略をアップデートする』では、たびたび、反トラスト法にまつわるGAFAと米国政府や議会とのやり取りを取り上げてきました。

7月29日には、フェイスブックを含むGAFA4社のCEOが、下院司法委員会の公聴会で市場支配について証言(第23回参照)。10月6日には、その下院司法委員会がデジタル経済に関する調査報告書を公表し、GAFAの分割など強制的措置を提言しました(第63回参照)。続く10月20日には、連邦司法省がグーグルを反トラスト法違反で提訴しました(第70回参照)。さらに、11月10日、EUで、欧州委員会が「優越的地位の濫用」の観点からアマゾンの”デュアル・ロール・プラットフォーム”に関する調査を開始したと発表しています(第80回参照)。

そして、今回の米国FTCによるフェイスブックの提訴。フェイスブックは同日、FTCの提訴を受けて、Newsroomのサイトで「Lawsuits Filed by the FTC and the State Attorneys General Are Revisionist History(FTCと州司法長官による提訴は”歴史修正主義”に他ならない)」と反論を出しました。そのなかで、とりわけインスタグラムとワッツアップの買収について丁寧な説明をしています。インスタグラムとワッツアップは、フェイスブックが戦略的に重点をおく5つの基幹サービスのうちの2つ。さすがに、それらの資産売却ともなると、フェイスブックの戦略の根本からの練り直しは必至でしょう。

市場支配、公正競争の観点から、ますます行政によるGAFAへの監視が強まっています。

田中道昭

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