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米国下院司法委員会がデジタル経済に関する調査報告書を公表、GAFAの分割など強制的措置を提言

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、第23回に続いて、米国GAFAによる市場支配に関する議論を取り上げたいと思います。

2020年10月6日、米国下院の司法委員会 反トラスト小委員会は、「Judiciary Antitrust Subcommittee Investigation Reveals Digital Economy Highly Concentrated, Impacted By Monopoly Power(反トラスト小委員会は調査結果を公表、独占状態にあるデジタル経済が明らかに)」とするプレスリリースを出しました。

また同日、同小委員会は、アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックによる市場支配に関連した課題を含む、「デジタル経済における競争」についての調査の結果として、報告書『Investigation of Competition on Digital Markets』を公表しました。同報告書は、GAFAのCEOが出席したオンライン公聴会などを経て作成されたもので、全部で450ページのボリュームになっています。

ジェラルド・ナドュラー司法委員会委員長とデビッド・シシリン反トラスト小委員会委員長は、共同声明で、GAFA4社を名指しして彼らの支配力が拡大し競争が妨げられていると警鐘を鳴らし、「調査は、議会と反トラスト行政を担う政府機関が、適正競争を維持し、イノベーションを向上させ、民主主義を守っていくために行動する必要があることを明確に示すもの」と言っています。

とりわけ、小委員会が適正競争を維持するため行った9つの提案のトップに挙げられたのが、「プラットフォームに依存せざるを得ない事業環境をなくすために、プラットフォーマーを構造的に分離する」といった非常に強いもの。また、報告書の巻末にはGAFAそれぞれが買収した企業のリストが添付され、いかにGAFA各社が市場を支配してきたか、いかにその支配力が拡大しているかを類推できるようにもなっています。

同報告書は2018年中間選挙を経て下院でマジョリティを取った、シシリン委員長をはじめとする民主党主導でまとめられたもので、上院では依然共和党が過半数以上の議席を持つなか、その実効性は不透明かもしれません。しかし、プライバシー保護の社会情勢の高まりとも相まって、GAFAの市場支配に対する圧力は確実に強まってきています。

なお、グーグルとアマゾンは、小委員会によるプレスリリースと報告書発表の同日、それぞれのコーポレートブログに反論記事を載せています。グーグルは「時代遅れで、不正確な陳情をもとに作成された報告書には同意しない 」、アマゾンは「自由市場への誤った介入は、人気のオンラインストアから事業者を締め出し、価格をつり上げ、消費者の選択と利便性を低下させることになり、小売業者も消費者も不利益を被ることになる」と、強く反発しています。

田中道昭

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