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アップル、小規模事業者を対象にアップストアの手数料率を15%へ

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、アップルについてです。

アップルは、2020年11月18日、「Apple announces App Store Small Business Program(アップルは”アップストア・スモールビジネス・プログラム”を発表)」(和文)とプレスリリースを出しました(関連で2020年11月24日付けリリースも参照)。このプログラムは、年間収入が100万ドル以下の小規模事業者を対象に、アップストア手数料率を30%から15%に設定するというものです(対象事業者の年間収入が100万ドルを超えた場合、当該年の残りの期間は標準の30%の手数料率が適用される)。

小規模事業者や小規模ディベロッパーの有料アプリとアップ内課金に対する手数料率が15%へ引き下げられることで、アップストアを通じてデジタルグッズ&サービスを販売する多くの事業者が恩恵をうけるとしています。このプログラムは2021年1月1日から開始予定となっています。

アップルは、アップストアの仕組みを、アップルとアプリ開発者が共存し一緒に成長する「App Store」のエコシステム、「iOS」アプリ経済と呼んでいます。

しかし、こうしたアップストア(iOSやグーグルプレイ(Android)のエコシステムやアプリ経済は、独占禁止法上の公正性に反するとの疑いも強く存在します。Epic Gamesのオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のに対する30%のチャージに関して、アップルとEpic Gamesの間に争いが起こり、依然係争中であるのは周知のとおりです(第41回参照)。

また、2020年7月、米国下院司法委員会は公聴会「オンラインプラットフォームと市場支配力」が開かれ、GAFA4社のCEOがオンラインで市場支配に関して証言。そこでは、各社が独占的・優越的な地位を利用して、不当に利益をあげたり適正な市場競争を妨げたりしていないかヒアリングが行われました。同委員会のデビッド・シシリン議長は「オープンな市場は、消費者、労働者、事業パートナーが別のオプションを選択することを妨げられていないかという考えに基づいている。そして、そうした選択はもはや不可能となっている。」と述べています。(第23回参照)

さらには10月、同司法委員会は、GAFAによる市場支配に関連した課題を含む、「デジタル経済における競争」についての調査結果が開示。その2週間後、連邦司法省がグーグルに対して反トラスト訴訟を提起しています(第70回参照)。EUでも、欧州委員会がアマゾンの”デュアル・ロール・プラットフォーム”について、優越的地位の濫用の疑いで調査を開始しています(第80回参照)。

田中道昭

PS.わたしが監修を行った『GAFA見るだけノート』が11月24日に宝島社より刊行となりました。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのビジネスモデルから、決算書、マネジメント術、経営者のリーダーシップまで、テクノロジーの最新動向等ともあわせて、図表と簡潔な文章でコンパクトに1冊にまとめました。よろしければ、ぜひ手にお取りください。


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