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アップルの「iOS」アプリ経済、「Fortnite」に関する争いの行方は?

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』のテーマは、アップルの「iOS」アプリ経済です。

アップルは、2020年9月2日、ニュースルームに「iOS app economy creates 300,000 new US jobs as developers adapt during pandemic(アプリ開発者が感染拡大期間に適応するに伴って、「iOS」アプリ経済が米国で30万人の雇用を創出)」という記事をアップしました。

記事によれば、COVID-19の中にあってもアプリ開発者がビジネスを適応させてきたことで、アップルの「iOS」アプリ経済は2019年4月以降で約30万人の新規雇用を生み出した、現在「App Store」のエコシステムは米国だけで210万人超の雇用を支えている、とされています。

ご存知の通り、「iOS」とは、iPhoneなどアップル製品に搭載されているオペレーティングシステムです。アップルはiPhoneという端末/デバイスにくわえて「iOS」も押さえることで、iPhoneユーザーはアップル運営の「App Store」からアプリをダウンロードします。アップルはアプリ開発者がアプリを販売するためのプラットフォームを提供、アプリ開発者はその対価としてアプリ収入の3割をアップルへレベニューシュアする、という仕組みです。

アップルは、この仕組みをアップルとアプリ開発者が共存し一緒に成長する「App Store」のエコシステム、「iOS」アプリ経済と呼んでいるのです。

ところで、Epic Gamesが開発する人気のオンラインゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のアプリ内課金に関して、アップルとEpic Gamesの間に争いが起こっています。

Epic Gamesは、フォートナイトのゲーム内通貨「V-Bucks」の購入価格について、「App Store」経由の場合は従来通りの価格、Epic Gamesから直接購入の場合は20%ディスカウントという制度変更をしていました(2020年8月14日付けプレスリリース参照)。アプリ収入のレベニューシェア3割に対する不服からの変更である一方、アップルは、すべての開発者に平等なアプリ内購入ガイドライン違反として、フォートナイトを「App Store」から削除しました(Androidの「Google Play」からも削除)。

Epic Gamesが「iOS」アプリ経済の独占禁止法上の公正性に対して一石を投じた格好です。オンラインゲームのプラットフォームやデバイスには、「iOS」/「App Store」や「Android」/「Google Play」の他にも、ソニー「PlayStation」、マイクロソフト「Xbox」、任天堂「Nintendo Switch」などもあります。

報道によると、カリフォルニア州連邦地裁は8月24日に、Epic Gamesはアップルのソフトウエア開発ツールへのアクセスを維持することができるとの仮命令を下したようです。ただし、フォートナイトの「App Store」への復帰は認められませんでした。今後の訴訟の行方を注視したいと思います。

田中道昭

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