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誰かを傷つけるということ(前編)

人を傷つけてしまった過去

これからお話しすることは、僕自身の過去ですが、僕がどんなに過去に向き合い、どんなに自分を許そうとしても、決して後悔は消えることはありません。僕は、それをこの先も、ずっと背負って生きていかないといけないのです。僕は、誰かを傷つけるということは、それぐらい自分に返って来るものだと思っています。そのことに大きさは関係ありません。どんなに本を読んでみても、どんなに学んでみても、誰かを傷つけた後悔から、自分を解放する方法はみつかりませんでした。

確かに僕は、あの時働き過ぎていました。あくどいものに騙されたように全てを捧げたかのごとく、自分の全てを費やしてきました。家族との時間も、友人との 絆も、これまで積み上げてきたキャリアも、何もかも全てです。

積み上げたものは、簡単に崩れてしまう。それを目のあたりにして、実感させられたのもその時だったのです。自信なんか、少し揺さぶられただけで、何の役にも立ちませんでしたから。

そうした、日々を過ごす中で、僕の中で、段々と消えていくものがありました。情熱や夢や希望といった、前向きに生きるのに必要不可欠なものでした。そうして、削られていく精神状態は、もう、心のランプがつかないくらいまでボロボロの状態だったのです。

その中で僕は、どうにか必死に成功を掴み取ろいうとしていました。もう残っていたのは、ほんのわずかなプライドと見栄でした。周りが気にかけてくれても、笑顔で断りました。しかし、心の中では、懸命に叫んでいたのです。助けて欲しいと。

いやいや、流石にだれかが止めてくれるだろう。必死になれば、誰かが必ず見てくれているというじゃないですか。だから、自分から言うと、負けを認めたみたいだし。誰かがタオルを投げてくれたほうが、まだ見栄は張れるし、プライドは守られると思ったのかもしれません。そんな甘さが、全てを奪っていってしまったのですが、誰にも気づかれなまま、僕は壊れてしまいました。

電卓が打てないくらい思考はぐちゃぐちゃになってしまっていたのです。そんな思考でいくら考えたって、自分に出来ることはないと結論づけるしかありませんでした。

僕は失踪したのでした。もうこれ以上は頑張れないと希望を失いました。頑張れない自分には、もう価値がないと、もう一人の自分に言われたのですから。

運が良かったのか、自ら連絡したのかは、覚えていません。帰ってきて、たくさんの人に謝罪しました。迷惑をかけましたと。会社も家族も許してくれました。

次の日から、また働きなさいと言ってもらえました。家族も了解しました。
そこで、ようやく、僕の存在は認めらたような気持ちになりました。それで、心は安定し数日間仕事をすることが出来たのでした。

その次の日、家族に買い物についてきて欲しいと言われ、連れていかれた先は、精神病院だったのです。おかしなことをすると信じられませんでした。しかし、お医者様が出した結果は、すぐにでも大きな病院に行きなさいということでした。何を言っているのか分からりませんでした。カッっとなった僕は、お医者さんに向かって叫び詰め寄りました。お医者様は、冷静にこう言いました。「じゃあ、そこで証明したらどうですか?あなたが、まともだということを。」

遅れてから、会社に戻り仕事をしました。その日の朝の出来事を上司に話をいして相談すると、「こうして仕事をしている訳だし、何もおかしくはない。おかしいのはお前の家族だと言われました。もしかすると、おかしくなったのは、お前の家族のせいだ」と言われました。そして、お前は数日間抜けた売り上げを取り戻さなければいけない、だから、何よりも売り上げのことを考えていればいいんだ。そんな感じのことを言われたのだと思います。僕はその言葉通りだと思い、家族を疑い、また、仕事に全てを捧げることを誓ったのでした。

数日後、僕は自分がまともだと証明するために、大きな病院に向かいました。すぐに職場に戻るつもりでした。その時に、持って行ったものは仕事道具だけでしたから。

そこで、下された判決は即入院でした。信じられませんでした。何かの間違いだと。確か、判決を言い渡される前に、家族だけが呼ばれ、先生と話していました。何か、結託しているのかもしれないと僕は疑いました。

仕事道具の何もかも取り上げられ、入れられた先は、鉄格子の病室だったのです。そこにはトイレしかなく、イメージする牢獄そのものでした。ぼくは、そこに何の罪なのかわからないまま、ぶちこまれたのでした。夜中には、そこら中から叫び声が聞こえました。僕は、そんなおかしな人たちと、同じ扱いをされている。こんなにもまともなのに。

この現実に対するやり場のない思いが、この病院を恨み、家族を恨みました。唯一自分を認めてくれたから会社には、感謝が残りました。お医者様には、敵意むき出しで吠えました。すぐにここから出すように。そして、面会に来た家族には、恨み辛みをこれでもかっていうくらいに投げつけて、牙をむき出しにして、たくさんの言ってはいけない言葉を家族に叫び投げつけてしまいました。

傷ついた家族は、やがて一切面会にこなくなり、僕は見捨てられたのです。その後、すぐに会社から手紙がきました。その内容は僕を訴えるものでした。理由は、売り上げの損失と、これまでたくさんの迷惑をかけられたからだというものでした。僕は信じていただけに呆然としたのを覚えています。

世界はこんなにも冷たいものなのか。もう価値のないものは、やっぱり捨てられてしまうのか。社会とはそういうものだ。家族の絆とはそんなものだと。

数カ月がたち、色んなことがありましたが、自分が病気であることをようやく受け入れだし始めた頃、正しかったのが、家族だと気づきました。それと同時に、家族に言ってしまった言葉や家族に対してしてしまった行動や言動にぞっとしました。僕は、家族という大切な存在を思いっきり傷つけてしまったのです。両親からは縁を切られました。妻からは、もう無理だと言われました。

これが、僕の過去に犯した大きな罪です。僕のことを思ってくれている人らを信じようとしませんでした。疑い、難癖をつけたのです。そして、恐怖に突き落とし、傷つけてしまったのです。

その後悔がどのように僕の人生に影響していったのかは、また明日お話ししたいと思います。このような話に付き合って頂き本当に感謝いたします。

どこか、自分とは違う世界のお話しだと感じはしませんでしたか?ただ、僕も自分は、普通の人間だと思っていました。皆さんと同じように。どこで人生を間違ったのか、この時はよく分かっていませんでした。ただただ、夢を叶えて成功したかったのです。

この恐怖は、誰の日常の中で起こりえるものだと思うのです。誰かを恨んでしまったり、誰かを傷つけてしまうことだって。まるで、交通事故のように、自分で意図としないように、起きてしまう危険性があるのだと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございます。
メルシー

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