人事制度導入時に気を付けるべきTipsの紹介
【スタートアップ×組織人事コラム #4 】
本記事では、人事制度の基礎情報から導入時に検討するべき論点などを詳しく整理します。人事制度の導入または改善を試みているスタートアップ企業の参考になれば幸いです。
そもそも人事制度とは?具体的な期待効果の例
人事制度とは、経営戦略・人材戦略を実現するための仕組みです。
主に、①等級制度・②評価制度・③報酬制度の3つで構成されます。
①等級制度:経営方針に基づく「社員への期待値」を階層化した仕組み
従業員を「能力」「職務」「役割」などによって序列化する、人事制度の骨格ともいえる制度です。人材の責任、権限などもこの制度によって定められた等級が根拠となって決まります。何を基準に等級を定めるかには、企業の組織・人材に対する考え方が反映され、組織デザインや企業風土にも大きな影響力を持ちます。
代表的な等級制度は「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」が挙げられます。
設計の目的として期待される効果は以下の通りです。(一部の例)
報酬水準の基準:「どの程度の期待値」に、いくら報酬を出すか決めておくことにより、期待値と報酬が整合しやすくなります
期待値の伝達:会社が何を期待しているかを明確にすることで、社員が業務に取り組みやすくなります(評価の基準にもなる)
キャリアパスの明示:社員にとって、社内でのステップアップが見据えられ、活躍の動機づけとなります
②報酬制度は採用、引留め、動機付け、人件費の最適活用等に向けて、報酬を決定する仕組み
給与や賞与といった報酬の仕組みです。一般的に給与は、等級ごとに一定の幅(レンジと言います)が定められており、評価によってレンジ内での昇給や賞与などが決まるシステムになっています。また、退職金制度や福利厚生などもこの報酬制度の一部に含めて考えられます。
主な構成要素は「基本給」「手当」「賞与」「退職金」です。
設計の目的として期待される効果は以下の通りです。(一部の例)
説明可能な報酬:何に対してどの程度報酬を払うのか明確にすることで、報酬の根拠を説明可能な状態とする
貢献・活躍の動機付け:どうしたら報酬があがるのか示すことで、社員の貢献や活躍を促す
人件費の最適活用:期待値や貢献に応じて公正に報いることで、人件費配分の最適化を目指す
③評価制度は社員への期待値を具体的に示し、貢献に対する評価・レビューを行う仕組み
一定期間の従業員の行動や成果を評価する仕組みを定めた制度です。何を評価するか(評価項目)、どう評価するか(評価基準)を明示することで、従業員の行動を方向付けます。評価の結果は等級や報酬に反映され、等級が変わることで評価の項目や基準も変化します。
設計の目的として期待される効果は以下の通りです。(一部の例)
処遇の納得感向上:報酬決定の根拠となり、納得感を醸成できる
戦略の落とし込み:パーパス・ミッションや、戦略の実現につながる個人目標・活動方針を設定する
育成の促進:振り返り・フィードバックを通じて、育成・成長の気付きや、動機付けとなる
カルチャーの浸透:重視する価値観やカルチャーを評価に組み入れることで、浸透を促すことができる
自社にフィットした人事制度を設計する
人事制度には、全企業に適用できる1つの正解があるわけではありません。各社にフィットする人事制度を作成する必要があります。そのためには、自社の経営戦略を踏まえて方針策定を行ったのちに具体的な制度設計を行う流れを取るべきです。
方針策定
まず設計の方針として、①人事制度を通じて実現したいことや、②自社事業の性質、③人材マネジメントの価値観を整理することをお勧めします。
これらは、制度を設計するときの検討の拠り所になります。
人事制度の設計により実現したいこと:
3年後に目指す会社・事業の姿はどのようなものか(売上、社員数等)
現在の自社の人材マネジメント*の課題は何か 等
自社事業の性質:
自社の価値創造の源泉は何で、成果の出し方はどのようなものか
どのような人材を、どこから調達する必要があるか(外部採用、内部育成等) 等
人材マネジメント*の価値観:
社員に求める考え方や行動はどのようなものか
自社は何を評価して、何に対して報酬(お金)を払うか 等
各種制度を設計する際に考慮すべき論点
全体の方針が決まったら、人事制度の種類別に細かく自社にフィットさせるステップに移ります。各種制度を設計する際に考慮すべき論点をご紹介します。
等級制度を設計するには
何を基軸として社員に期待値を示すか(能力、役割、職務 等)
階層を何段階とするか
等級と役職の関係をどのように整理するか
各等級の期待値をどのように定義するか
等級変更(昇格・降格)の考え方は何か
報酬制度を設計するには
何に対して、のような報酬を払うか
等級=期待値に応じて、どの程度の報酬を払うか
報酬改定をどのようなルールで行うか
(賞与をどのような考え方で決定するか)
※ストックオプション等の株式報酬制度は、資本政策の影響が大きく個別性も高いた め 、制度設計の共通の論点には含めていません。
人事制度を設計するには
社員の何を評価するか
どのような方法で評価するか
何を基準に評価するか
何段階で評価するか
どのようなツールを用いるか(評価シート)
どの頻度で評価するか
これらの論点を参考にしながら、自社のテイラーメイドの人事制度を設計しましょう。より詳細に学びたい方は、ぜひnote最後にプログラムのご案内もありますのでご覧ください。
(補足)人事制度の導入を検討するタイミング
数人の組織から、数十~百人規模に成長していくにあたり、制度・仕組みを上手く用いて人材マネジメントをする必要性が高まります。事業や職種などに応じて変動するものの、一般的に社員数30人前後のタイミングで人事制度の導入を検討することが多いです。
さらには、導入した人事制度を外部環境の変化や自社の事業環境の変化に応じて定期的に見直すことも重要です。
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