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大切にしている「調理用語」⑥~焼く(焼き物料理)~宅配食の焼き魚料理を利用してみた

気温が37度超えの酷暑が1週間ほど続いた。激暑という言葉があてはまるらしい。長い人生初の経験だ。

■宅配食を初めて利用してみた


あまりの暑さに、買い物や料理作りもおっくうになった。初めて今風の出前をしてみた。
スマホアプリでポチポチしたら、配達に対応したお気に入りの和食店を見つけた。
以前によく行った、新鮮な魚をカウンター越しに炭火で焼いてくれる料理店だ。
食べたかった「焼き魚定食」をタップした。

注文してから、魚を直火で焼くのだから時間はかかる。一時間後に玄関先まで届けてくれた。この社会情勢なので置き配にしてもらった。
配送の方がインタフォン越しに到着を知らせ、置いたことを写真で撮影していく。なんだか面白かった。
 
直接飲食店で食べるよりは高かったが、激暑なこの時期、自宅で店舗同様のサービスが受けられるのは嬉しい。
届いた食事には、炭火で魚の皮が香ばしく焼けた黄金色の鯖が入っていた。
釜で直焚きしたご飯に、直焼きした魚と野菜の煮物が彩よく入っていて、主食(ご飯)、主菜(魚)、副菜(野菜)のバランスもよく満足できた。
 
ただ、食器や盛り付け、人のサービスが心地よく受けられないのはちょっぴり寂しい。
 
かつて、七輪で炭をおこして魚を焼き、餅を焼いた。薪の燃やし火でピザも焼いた。
家庭用の便利な焼き物機が出ている今日、これらの焼き方を新鮮に感じる。
 
今では家庭で炭や薪を使うことはほとんどないが、コンロのグリルを使って食材を手軽に焼くことができる。
 
「焼く」は特別な鍋や調理器具を使わないため、昔から、シンプルで最も手軽な調理方法といわれている。
 
今回は「焼く(焼き物)」について書いていく。

■焼く


「焼く」は簡単のようだが相当高い技術が必要だ。
魚等の食材の表面を強火の高温で加熱する。そのため、魚や肉のたんぱく質が急激に固まって表面がパリッとする。
内容のうま味成分は溶け出ず脂肪が出てくるので、内部はふっくらと仕上がる。

焼き温度は250℃~300℃と高温だが、食材の種類と大きさ、切り方、温度などで異なるため、焼き時間と温度設定について表現するのはとても難しい。
だから、専門家の中でも焼くは「料理人の技術の見せ所」といわれている。
 
「焼き物」の焼き方には、直焼きと間接焼きがある。

■直焼き


食材を金串や金網を使って、炭や薪の火に直接かざして焼く方法だ。
私が子供の頃は、家庭の庭先で木炭を焚き直接食材を焼いた。今では見られない光景だ。
この直焼き方式にこだわって、魚や肉等を香ばしく焼くことを売りにしているのは今や飲食店くらいだろうか。
 
炭火や薪火で焼いた肉やピザの香り、高熱の石でビリーッと焼いた食材、表面が香ばしく食感はパリッと、中は程よい軟らかさに仕上がるのがよい。
 
現在はガスや電気で焼く便利な器具が出ているが、表面の焼き色はついても香ばしい香りが少ない点では残念に思っている。
 
若い頃、調理実習でコンロのガス火で直に焼くときは、焼き網の上に2個のレンガを並行に置いて、その上に金串に刺した魚を置いて焼いたのを思い出した。
下から熱の出る焼き方では、盛り付けの表面になる方から焼き始めると盛り付けたときにきれいだ、と習った。

電気やガスグリルとは、比べ物にならないほどおいしかった。
 
直焼きは、今、人気のキャンプか一部の飲食店でしか見られないように思う。

■間接焼き


オーブン焼き、鉄板焼き、フライパン焼き、包み焼など種類が多い。
オーブンをはじめ上記の機器類は、熱の対流や、放射、伝導を利用して、天板や型等の容器に入れて焼く。グラタンやスポンジケーキ等比較的厚みのあるものを焼く場合に向いている。
 
焼き物料理は、焼き魚、焼き肉の他卵焼きやハンバーグなどその料理の幅は広い。
つまり、焼き物料理はほとんどが間接焼きなのだ。
 
魚を例に見ると、コンロに取り付けられたグリルでは、上の火力が下まで熱伝導をしているので、魚を表裏に返すことがない。要するに盛り付けた時の状態にして焼き板にのせて焼く。
 
時代と共に「焼く」方法の基本も変わってきた
 

■魚の焼き方(家庭用)のポイント

〇切り身魚を焼く

一般的な家庭ではガスの専用グリルを使うが、その場合、表面のパリパリ感や身のふっくら感は、直火より少ない。

そこで気をつけていることは、魚の皮が焼くと縮むことを知り、皮に小さく切り目を入れておく。
さらに、魚に少量のふり塩をして、水分がにじみ出てきたタイミングで焼くと、皮がしっかり焼け、身もふっくらとする。
 
丁寧には、古くから基本の焼き方がある。一度試してみてほしい。
 
ガス火で金串を打った魚を直接焼く場合。
焼き網をガスコンロに直接のせて焼くことになるので、焦げ付きやすい。
そのため、もう一枚焼き網を重ねて網目に少量の油を塗ってから焼くとよい。
盛り付けたときに、表になる方から焼くが、火加減は弱めにしないと焦げ付いてしまうので注意する。
 
初めは脂ののった鯖が焼きやすい。

鯖三枚おろし約300g(3人分程度)
ふり塩は塩分1%(3g)
がほど良いと私は思う。
 

〇丸魚を焼く

魚を姿のまま焼くのは、うま味が逃げずおいしくて豪華だ。

丸魚の両面に塩を振りかけ、腹の中にも少量かけて、生臭い汁を出てきたらキッチンペーパーなどで静かにふきとる。
焼いているときに魚のヒレが焦げてとれないように、焼く直前にヒレを指で押さえながら塩を付ける(ひれ塩という)。
でき上りがきれいになるように、魚の腹周辺には焼く直前にサッと塩を振る(化粧塩という)。
 
魚の姿焼きを盛りつける時は、頭を左側に腹側を手前にするのがきれいだ。
 
最近ほとんどの家庭では、鯵(あじ)や秋刀魚(さんま)のような丸魚でも、コンロの魚焼きグリルを使うが、本来は、串をさして炭火で焼く方がよりおいしい。
(今回、串の打ち方は省略する)
 
そうは言っても、コンロが汚れて掃除が大変!そう思うのはあたりまえ。
 
普段はコンロで直焼きはしないと思うが、室外でバーベキューの時によく使っているあれだ。
丸魚の直焼きは、身が軟らかく表面はこんがりとしていて、とても口当たりがよい。

魚の種類にもよるが大きな丸魚は、表面は5分程度強火で焼き目をつけ、中火から弱火にして8分くらいで焼く。
身が割れていれば焼き上がり。焼きすぎると硬く身がしまりうま味が無くなっておいしくない。
 

〇魚の照り焼き


照り焼きは、甘辛い照りを付けた香ばしさが食欲をそそる。
ただ、みりんや砂糖、醤油を使うため、直火では、魚が焼ける前に表面が焦げてしまう。

フライパンを使うことをおすすめしたい。
切り身魚に薄塩をし、フライパンで焼く。好みの砂糖やみりん、しょうゆの調味料を魚に絡めて照りを付ける。すると魚の生臭さが消えて照りも出る。
魚はさわら、ブリ、鮭、マグロが扱いやすいが、肉類にもこの方法は向いている。
 

〇魚のみそ漬け焼き


魚に塩を振り数分したら水けを拭き取る。
あらかじめ、白みそと酒とみりんを加えて溶いておく。
平らな容器にみそダレをひき、厚手のキッチンペーパーを広げて魚をのせる。再びペーパーをかぶせてみそをのせ、8時間ほど(一晩くらい)冷蔵庫で漬け込んでおく。
 
焼くときは魚をみそダレから出して、洗わずに金串を打って中火程度で焼く。
魚グリルで焼く場合は、火加減と人の近さに十分注意しないと焼ける前に焦げてしまう。途中、アルミホイルをかぶせて焼くとみそダレが焦げにくい。
 
最初はさわら魚が扱いやすい。

参考までに
魚 4切れ
魚の1%塩分の塩
白みそ150g~200g
酒大さじ2
みりん大さじ2
が標準だ。
よろしかったら一度試してみてほしい。
魚を漬けて残ったみそは生臭く、応用が利かないのが少々残念だ。

〇お家焼き鳥を焼く


手間はかかるが「お家焼き鳥」は、焼き立てが食べられるので案外おいしい。
この社会情勢、家庭で作る人も増えているという。
 
鍋にみりんを入れ煮たててアルコール分をとばす。これを「煮切りみりん」といい、しょうゆ、砂糖、を加えて2/3量くらいまで煮詰めておく。
 
ねぎま 材料(5本分)
若鶏の胸肉又はもも肉200g
長ねぎ白い部分100~120g(1本:細め)
 
タレはお好みだが
しょうゆ大さじ3杯
みりん大さじ2杯半
砂糖小さじ1
   七味唐辛子や山椒
 
がいつもの割合だ。
 
ねぎは3㎝くらいの長さに切り、鶏肉は一口大の大きさに切っておく。
鶏肉と長ねぎは串に交互に刺す。(家庭では金串をおすすめする)
焼き網の上で焼き肉に火が通ったら、タレを数回塗って火にかざし、表面を乾かして仕上げる。
熱いうちに七味や山椒をかけていただく。
 
好みの焼き加減に調整して、好みの甘みのタレで熱いうちにいただく。ビールにはよく合う。

最近は家庭用の焼き鳥コンロもあるし、面倒なら串に刺さずフライパンで焼きながらタレをからめるのもおいしい。

■思うこと


今年の秋刀魚は昨年以上に手に入りにくくなると報道されていた。日本から、安価で美味しい魚が消えつつあるのか心配だ。
「焼く」の代表である焼き魚が手軽に食べられなくなり、焼き方も時代と共に大きく変わってきていることを、今回改めて認識した。
 
しかし、「焼く」という調理用語を、食材の性質や本来の焼き方を意識せずに使っていると、私自身本当においしい焼き物料理がわからなくなる。できるだけ基本の焼き方を整理したくて、今回取り上げた。
 
「焼き物料理」は余分な油や調味料を使わないヘルシーな調理方法として大好きだ。
 
最後までありがとうございました。


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