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こんな時にかかりたくないよね!食中毒

なんだか熱っぽい!気持ち悪い、だるい・・・この時期、もしや新コロでは?と不安が頭をよぎります。でも、この症状は食中毒も疑われることがあるのです。

1 食中毒の原因は

食中毒の原因は、細菌、ウイルス、化学物質、自然毒(キノコや山菜、フグ等)がありますが、主なものは細菌とウイルスです。
夏場は高温・多湿の条件下で細菌が食べ物の中で増殖し、それを人が食べることで細菌性食中毒が発生します。逆に冬場は気温が低く乾燥しているため、ノロウイルスによる食中毒が増加します。ノロウイルスは食品の中では増えず、食事を通して人の腸内で増殖して食中毒を起こします。
 
食品や料理に異臭がする、見た目にも悪い等腐敗していれば、我々は食べないので食中毒になることはありません。しかし、匂いも味も変わらないうちに、細菌やウイルスに汚染された食品を食べて発症してしまうのが食中毒なのです。

2 食中毒の発生状況は

厚生労働省「食中毒統計調査」によると、令和元年は、食中毒事件数1,061件、患者数13,018人、死者数3人です。これはほぼ例年同様です。
病因物質別の食中毒発生状況では、ノロウイルスによる食中毒の患者数が全体の52.9%と多く、細菌性の食中毒ではカンピロバクター・ジェジュニ/コリが14.9%、ウェルシュ菌9.0%、病原性大腸菌2.9%、腸管出血性大腸菌(O157、O111)1.3%と続いています。 
主として、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱、倦怠感等の症状が現れ、軽いと翌日には改善するのですが、ひどい場合は日常生活に影響を及ぼしてしまいます。

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3 食中毒は集団で起こるのでしょうか

食中毒と聞くと、集団給食施設や飲食店で発生するイメージがあると思いますが、意外にも家庭でも発生し、全体の14%となっています。
同じ食事を食べた家族内で発症すると、他の感染症と区別がつきにくいなど家庭にも食中毒の危険性が潜んでいます。
医療機関に行くと、食中毒は感染症科の診療領域ですので、今はあまり感染症科に行きたくないですよね。そこで、自分でできることとして、家庭での食中毒を予防することが必要です。

4 どのような食中毒菌がありますか(細菌性食中毒の代表的なもの)

①カンピロバクター
牛や豚、鶏等の肉類等の腸にいる菌です。生肉に付着していて特に鶏肉に多いので、生の状態で食べずに中心まで十分に火を通して調理する必要があります。潜伏期間が比較的長く、発症すると腹痛、水のような下痢、発熱、頭痛、倦怠感などがあります。

②腸管出血性大腸菌(O157、O111等)
牛や豚などの腸の中にいる病原大腸菌のひとつで、毒性の強いベロ毒素を出し腹痛や出血性の下痢を引き起こし重症化するのが特徴です。感染力が強く少量で発症します。肉を加熱不十分のまま食べると食中毒を発症しますので、肉類は中心部まで十分な加熱をすることが重要です。

③サルモネラ菌
牛や豚、鶏等の腸の中にいる細菌です。食肉や卵などに付着しているので、その取扱いに注意することです。肉類は中心部まで十分に加熱し、鶏卵は生食で食べたり半熟状態で食べる場合は、鮮度や保存状態の良いものを選ぶことが大切です。

④ウェルシュ菌
動物の腸管や土壌に生息する細菌です。酸素の無いところで生きて増殖し、芽胞を作ります。カレー等の煮込み料理が原因になることが多いので、加熱調理後保存する場合は、すぐに中心部まで冷まし室温に放置せず冷蔵冷凍をすることをおすすめします。食べる時は十分に加熱してすぐに食べます。

5 食中毒防止の三つの原則とポイント 

①原因菌をつけない【清潔・洗浄】
・食中毒菌はあらゆるところに付着しています。特に手指はかなり汚染されていますので、まず調理前に十分に手指を洗います。
集団給食施設では、手指用洗剤で30秒×2回洗いその間に流水で十分にすすぎます。さらに30秒間消毒液でもみ洗いします。家庭では手指用洗剤で30秒洗ってしっかりすすげば十分です。調理作業中にも色々なものを触るので、作業の合間もこまめな手洗いは大事です。
生で食べるサラダ等、調理後の料理、魚や肉・卵等を触った後は、とにかくその都度手を洗います。

・そのまま食べる食品は、流水で十分に洗う必要があります。給食施設では、次亜塩素酸ソーダ溶液100ppmで10分程度消毒をする場合があります。

・調理器具(まな板、包丁、ボールやザル等)は、家庭では洗浄後しっかり乾燥させるか、熱湯で消毒すると効果があります。布巾などは衛生的にすることを忘れないようにします。調理器具や布巾が汚染されていて細菌をつけてしまうことがわかっています。特にまな板は、生食用と肉・魚用に分けることが大切です。

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②原因菌をやっつける【加熱殺菌】
加熱調理は細菌を殺菌します。しっかり食品の中心部まで加熱しましょう。集団給食施設では、中心部が85度以上1分になるように温度を計測し、数ケ所ほど確認をしています。家庭では、しっかりと熟煮し中心部が生の状態がないように確認しましょう。特に肉類は加熱が重要です。

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③原因菌を増やさない【迅速・冷却】
冷蔵庫で保存すべき食品は購入したらすぐに冷蔵庫に入れます。調理した料理はすぐに食べます。室温に放置しておくと細菌が増殖しますので、すぐに食べない場合は冷蔵庫で保存し、食べる時には電子レンジで再加熱してから食べるほうが良いでしょう。冷蔵庫でも細菌はゆっくりと増殖しますので、長期間保存しないように注意します。

*三つの原則はどれも重要ですが、家庭の台所は無菌状態ではないため、衛生的に取り扱ったつもりでも「でき上がった料理に菌が付着しているかも知れない」という観点に立つことは重要です。何よりも付着しているかもしれない細菌を増やさない工夫が、最終的には重要だと私は考えています。

繰り返しますが
・料理をしたらすぐ食べる
・すぐ食べない場合は冷蔵庫に入れて、できるだけその日のうちに温めて食べる
・買ってきた総菜や弁当、デリバリーやテイクアウトの料理はすぐに食べます。すぐに食べない場合は、冷蔵し、食べる時に電子レンジでチン(再加熱)してから食べましょう。
は心に置き留めたいですね。

6 これからは外食も変わるかも!参考までにHACCP(ハサップ)の考え方を知っておこう

・HACCP(ハサップ)とは何かというと、Hazard (危害)Analysis (分析)Critical (重要)Control(管理) Point(点)つまり「危害分析に基づく重要管理点」の略で、食の安全を確保するために、食品工場や製造工程などで、衛生管理の手法として導入されてきたものです。
国際的に標準化されていて、日本でも多くの企業や給食施設が取り組んで20年以上にもなります。私も医療現場の食事提供システムで使ってきました。
最近では、改正食品衛生法が施行され、飲食店等中小企業を含む事業所すべてにHACCP(ハサップ)の実施が義務化されることになりました。もちろん猶予期間は1年ほどありますが、施設設備や衛生管理方法などに準備の時間や運用費がかかります。

・内容は、衛生的な設備や食品の取り扱いなど、温度の記録、消毒方法、食品の保管管理等が詳細に求められているもので、働く側にとっては厳しく感じますが、確実に衛生状況がアップし食中毒事故が減少すると考えられます。

・HACCPによる衛生管理を順守することで、料理が今までと同じ仕上がり、というわけにはいかないと考えられますが、事故が発生しては本末転倒です。食中毒を起こさないためにも安全第一が最優先です。
これからの飲食店は、メニュー開発等に大きく影響するかもしれませんね。大変ですが、新しいメニューの開発を期待して応援したいと思います。

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終わりに
同じように食べても食中毒を発症する人としない人がいます。食べた人の免疫力に差があることが要因と考えられます。
食中毒防止には、上記の三つの予防は最も基本的ですが、加えて栄養と睡眠をしっかりとり、適度な運動と規則正しい生活を送って免疫力を高めることが大切だと考えています。 

最後まで、ありがとうございました。





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