発達障害（ADHD）は栄養不足【書評】子どもの「困った」は食事でよくなる 溝口徹
私は溝口氏の本に出会い、食事・栄養に関する見方が変わった。そこから源流をたどり、三石巌氏にたどりつき、高タンパク質・糖質制限・メガビタミンで体調を管理するようになった。そこから藤川徳美氏に行き、サプリもどんどん飲むようになった。だから、私の食養生の最初は溝口氏のオーソレモーキュラーなのだ。
その知識からしても、発達障害、ADHDの背後に栄養の問題があることは間違いないように思う。ADHDが先天的に脳の機能障害を持っているとしても、栄養状態が悪くなることによって、問題が悪化していることは間違いないだろう。溝口氏は「脳アレルギー」という言葉で、発達障害の子供たちに起きている体内の状態を説明している。
発達障害に関わらず、栄養状態は絶対に改善したほうがよい。糖質を減らすこと、たんぱく質をしっかりとること、ビタミン・ミネラルを必要量取ること。難しいことはない。費用もそれほどかからない。自分で勉強して、コツコツ試すことだけだ。
シンプルだけれど、まずは、栄養療法を試してから精神科に行っても遅くないのではないだろうか。溝口氏の熱い思いが込められた力のある一冊だ。
私は、基本的に、ADHDには栄養療法が必要だとする見方に「完全同意」する。内容は、しごくもっともだ。しかし、今回は、この本の中で非常に興味深かった一節を紹介してみたい。
ADHDは栄養を消費している
「特徴的な症状の一つに「驚くほどの集中力を発揮する」ということがある。」
「ひとつのものごとに集中しているときは、脳の栄養素の消費量が著しいと考えて間違いない。普段の状態が、一般道を走る乗用車だとすると、何かに集中力を発揮している状態は、高速道路を突っ走るスーパーカーのようなものだ。うかうかしていると突然ガス欠になってエンストしてしまうことが少なくない。栄養の供給が消費に追いつかない場合、それを見過ごしてしまうと、さらなる問題行動が起こってくる可能性が高くなる。」（P124-125 )
これは、一度も考えたことがなかった視点だった。ADHDの特徴と言えば「過集中」だ。一心不乱に集中したと思えば、バタンと倒れるまでやり続ける。自分でも制御のきかない集中力だ。（参考：#ADHDあるある：やめたいのにやめられない。何にでもハマる癖を克服したい。）
これが、学業に活かされたり、芸術活動に活かされると、才能を大いに発揮することがある。しかし、多くの場合はそこまでいかず、バッタリ倒れるところで問題が生じる。実は、このバッタリ。問題行動という形で表れて来ることがあるのだ。
幼いころは天才だったC君
この本の中では、幼い時から優秀だったC君が、ある時点から壊れ始めた様子が描かれている。幼いころは天才と呼ばれるような子供だったが、やがて中2～中3くらいから、引きこもり、家庭内暴力などの問題を起こしていく。また強迫性障害も見られ、発達障害と診断されるような状況だった。
しかし、溝口氏が、このC君を診察したところ、実は、彼は深刻なビタミンB不足を起こしていたのだ。溝口氏は、こう分析する。
「小さなころの天才脳にはまかなえていた栄養素（ビタミンB群）が、成長するにつれて供給が追い付かず、欠乏状態になっていったのである。」（P126）
現代の食品はビタミンB群が不足しており、なおかつ消費するものが多い。（加工食品などを口にするとビタミンB群が消費される）。ビタミンB1は脳の発達や神経機能と深くかかわっており、集中力や記憶力を高めるものだ。ビタミンB6は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質を作るうえで欠かせない。
もちろん、解決策は不足している栄養素を補うことだ。ビタミンB群の摂取を始めたC君の問題行動は収まり、今ではアメリカの大学に通うまでの回復を見せるようになったのだ。
これは、かなり面白い事例じゃないだろうか。ADHDは、大成すると天才型になるくらいの発想力や独創性の高い子が多い。しかし、多くの場合は、成功するよりも、問題行動で社会に適応できないことの方が多い。これを、あまりに働きすぎる脳と栄養不足の関係から論じることができるのだ。こういう観点は初めて見た。
内容が濃すぎて全部紹介できないので、ワントピックに絞ったが、栄養療法と発達障害の関わりは、もっともっと研究されるべきものだと思っている。溝口氏の新作もあるので、機会があれば読んでみるつもり（まあ、論点は同じだろうけれど。）
大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です（出品一覧：https://amzn.to/3oOl8tq）