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読書観がひっくり返る本 ― 松岡正剛『多読術』

これは私の人生の一冊。

私の読書観を一変させた本です。

きっと、あなたの読書観にも影響を与えると思います。


メンタリスト彩 -sai-(@psychicsorcerer)です。

間が空きましたが、今回の記事は久しぶりに読書感想です。

今回紹介するのは次の本です。

松岡正剛氏の『多読術』です。

この本について話す前に、まず、私自身の話をさせてください。


私は速読コンプレックスだった

子供の頃、

速読ができる人には敵わない

そんな風に苦しんでいた時期があります。

皆さんも見たことありませんか?

TV番組で、速読ができる子供たちが登場し、本をパラパラと弾きながら本をじっと見ている様を。

これだけで、本の内容をまるまる理解していると聞いた私は、敗北感を覚えていました。

この子たちと私とでは、一生のうちに得られる知識量は大きな違いとなってしまう。

そんなコンプレックス、そして読書観までも、完全にひっくり返したのが、今回ご紹介する松岡正剛氏の『多読術』でした。

(速読の実際については後ほど述べています。)


著者・松岡正剛氏とは

この本の著者である松岡正剛氏は、編集者でもあり、編集工学研究所の所長も務める人物です。
(他にも様々な経歴をお持ちですが、ごく簡単に述べています。)

その読書数はとんでもないことでも知られ、「千夜千冊」という書評サイト(→こちら)で日々書評もされています。

『千夜千冊』で取り上げられた本の数は既に1000は優に越えていて、最新を見たら1781夜でした。

そんな読書家の松岡氏が、インタビュー形式で読書のあれこれを語ったものが『多読術』です。

これが、恐ろしいほど読書についてのヒントに溢れているんですよね……。


読書スタイル

最初の方は松岡氏の読書人生に引き寄せたインタビューになりますが、語りおろしならではの臨場感がありますね。

親友に薦められて『カラマーゾフの兄弟』を読むくだりとか、稲垣足穂と話した挙げ句に物理学を勉強したりとか。

人との関わりで読書が進むという点が、特に印象的でした。


この記事で特に紹介したいのは、中盤の「第五章 自分に合った読書スタイル」です。

ここでは、様々な読書法が紹介されています。

例えば、「江戸の私塾」の読書法が紹介されているくだりがあるのですが……

そのうちの一つに「掩巻(えんかん)」という読み方があり、それは次のようなものだそうです。

これは書物を少し読み進んだら、そこでいったん本を閉じてその内容を追想し、アタマのなかですぐトレースしていくという方法です。
(p. 129)

読みながら、その場でイメージで読み返す。

まさに速読の逆を行く、振り返りながらの読書ですが、実際にやってみると、本の内容を味わうという意味ではすごくいい方法です。

私自身は、文字をずーっと読み続けると疲れるので、この方法とは相性がいいと感じますね。

(この掩巻をきちっと遂行するのではなく、もっと緩くやっていますが。)


私がこの本から学んだことの肝は、本の読み方には多様性を持たせるということです。

途中に、多様な読み方が、比喩的に熟語で羅列されているくだりがあって、

「感読」「耽読」「惜読」「愛読」「敢読」「氾読」「食読」「録読」「味読」「雑読」「狭読」とか、また「乱読」「吟読」「攻読」「系読」「引読」「広読」とか
(p. 126)

こんな風に語られてるんです(笑)

(この熟語、上の引用後にもまだ続きます 笑)

熟語だけでも、何か読み方が想像できますし、何より、

「ああ、こんな風にたくさんの仕方で本は読んでいいんだ」

と勇気づけられます。


そして、速読についてもこう述べられています。

速読にとらわれるのがダメなんです。どんなテキストも一定の読み方で速くするというのは、読書の意義がない。それって早食い競争をするようなものですから(笑)。
(p. 124)

つまり、速読は早食いという本の「食べ方」であって、確かに味わいたいと思うなら私たちは別の方法を取りますよね。

ここで私は、松岡氏から

「速読にコンプレックスを持たなくても、安心していいよ」

というメッセージを聞く思いをしました。

だから、人にはそれぞれの本の読み方があり、好きに読めばいいんです。ベストセラーは読む、経済小説は欠かさない、新書は月に一冊は買う、SFは極める、推理小説はベストセラー上位三冊を追う、古典に親しみたい、子供のために良書をさがす、いろいろあってオッケーです。
(p. 131)


マーキング読書法

また、読書法の一つとして、松岡氏は読書の際に本への書き込みをすることを勧めています。

本への書き込みというと、基本は重要と思われる箇所に傍線を引くものでしょう。

しかし、松岡氏のやり方は傍線を引くだけに留まりません。

「本をノートとみなす」ようにして、マーキングの印も色々決めたりするとよい等の示唆をしています。

(ネット上で、松岡氏のマーキングについて検索すると、例があるので気になる方は調べてみるといいです。)


ちなみに私自身は本に書き込みをするのが苦手です……。

それでも、マーキングには絶対に効果があると思っています。

抵抗ない方は、私自身もオススメしたいぐらい。

私は、本当にマーキングをしたいぐらい好きな本は、2冊目を買うようにしています。


語り切れない……

この記事、noteを書き始める前から挙げたくてたまらなかった内容でした。

でも、全然、本当に全然語り切れてません!

正直、今の私は、この本についての読書会や勉強会やプレゼンテーションをしてみたいです。

いつか、叶えようと思っています。

それぐらいに、この本は私の読書人生においての重要な転機に位置する本でした。


で、結局、速読ってどうなの?

ところで、私の速読コンプレックスはどうなったか。

松岡氏のこの本で目が開かされた後、私も色々なことを知りました。


実は、科学的には速読はあまり良いものだとされていません。

詳しくは以下の2つの記事をご覧いただきたいです。

参考:
lifehacker「速読は実は不可能だと科学が実証」→リンク
速読のチャンピオンが『ハリー・ポッター』を読んだ結果……→リンク

結局、速読は読書を有意義なものにするのとは逆方向に向かってしまうということです。

ただし、速読法は全く無用のものになったわけではなく、使える場面があるんですが……それはまた別の記事で改めて皆様にお伝えしようと思います。


とにかく、『多読術』は、今回の記事で気になった方は必見ですので、是非ぜひチェックしてみてください!

そして、もし読まれて方がいたら、是非この本についてのお話をしましょうー。


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