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コロナ禍における企業のメンタルヘルスケアの現状について

近年、様々な労働環境や労務における制約が増加したことに加えて2年を超える新型コロナウイルスの蔓延により、働く世代のメンタルヘルスケアに対する需要が増加しています。

強いストレスによるうつ病などの発症報告や、過剰な労働によって裁判が行われているというニュースなどを見かける機会も増えたのではないでしょうか?
海外では専門のカウンセリングに通うなど、生活や夫婦関係、仕事に係るメンタルケアを受けることは普通である認識が強いですが、日本においてはメンタルケアの意識が高い環境は整備されていません。

日本のメンタルヘルスの現状や今後、企業などはどういった対策をしていくべきなのか?
本記事では、ストレス社会であると言われる日本のメンタルヘルスの現状や問題点について紹介していきます。

■ コロナ以降の日本のメンタルヘルスの状況とは?

もともと日本のサラリーマンなどの一般的な労働者が「週に49時間以上働いている割合」は他国の約2倍ほどという状況でした。
しかし、日本ではワーク・ライフ・バランスを意識する企業の数が依然として少なく、高度経済成長を経験していた当時の考え方から脱却出来ていないと言われています。

その証拠に「労働者1人辺りの生産性」は先進国中ほぼ最下位であり、もっとも長時間働いているにも関わらず、生産性の低い労働環境に置かれているのです。
こういった状況の中、2020年3月には新型コロナウイルスという新たな社会問題も抱えることになります。

単純なストレスの増加やメンタルヘルスの悪化は、世界的に見ても同様のデータがあります。

2020年3月のパンデミック以降、OECD諸国では不安や抑うつの有病率が上昇し、一部の国では2倍以上に増加しました。人々が感じる精神的ストレスの強さは、感染防止措置の厳しさやCOVID-19による死亡者数と連動しています。
ほとんどの職場では、パンデミックにより業務が煩雑になりストレス因子が増大しました。テレワークによる精神面への影響は今のところ不明です。しかし調査では、労働時間が延長し、燃え尽き症候群が増加する傾向にあります。
また、若年層、女性、一人暮らし、社会的・経済的弱者、失業者は精神的ストレスを感じる割合が高いことが指摘されました。

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日本ではコロナ流行以前には「うつ病」を抱えている方の割合が7.9%であったのに対して、2020年には17.3%まで上昇しています。

あくまでもデータの表面上としての数値で2倍以上という状態であり、いわゆる仮面うつ病や言い出せないような方々を含めると、少なくとも約5人に1人がストレスなどによってメンタルヘルスが悪化しているということになるのです。

仮に、50人の社員の働いている会社であれば、約10人がうつ病などを含めた何らかの不安や潜在的な精神疾患を抱えている可能性も考えられます。

もちろん、ストレスの原因は様々ですが、こういった人々を積極的にケアしていくという意識が会社に存在しなければ、労働人口が減少する将来において企業側にとっても労働者にとってもマイナスにしかならないことは明白なのです。

■ 雇用主と雇用される従業員の認識は大きくずれている

加えて、雇用主と従業員の間には以下のようなデータも示されています。

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企業側としてはメンタルヘルスに関わるサポートやケアの対策を取っているという認識であっても、実際に従業員に伝わっているのは約3割のみというものです。

報道などにもありますが、新型コロナウイルスの影響によって時短営業などをせざるを得なくなった飲食店などでは、時短解除後に社員やアルバイトの手が足りないという状況になっていることもあります。

もちろん新型コロナという影響は世界的な問題であり、これによって労働環境の変化を余儀なくされるというのは、企業側だけに責任があるというわけではありません。
しかしながら、現実問題として「労働力が低下」した先には、企業側の衰退という問題も懸念されるのです。

■ ストレスとレジリエンスの関係性

レジリエンスとは物理学用語で「外力による歪みを撥ね返す力」だとされています。

心理学分野における外力による歪み、これはストレスを指しており、ストレスに対するレジリエンスが高いほど意欲が高まったり、適応性が高まると言われています。

もちろん、自然にこういった流れが出来れば大きな問題やリスクにはならないでしょう。

しかし世界的に見てもメンタルヘルスに関わる状況が悪化していることを踏まえると、雇用側である企業が率先してメンタルケアやサポート環境を整えていくことで、このパンデミックという状況を乗り越えるための原動力を作り出す必要があるのではないでしょうか?

■ 企業はメンタルヘルスに関する取り組みを再考すべき段階にある

ここまでご紹介してきたように、企業によるメンタルヘルスケアに関する取り組みは不十分であるということも大いに考えられます。

うつ病をはじめとする精神疾患の多くは過度なストレスなども原因の1つに挙げられるものです。近年では「働き方改革」として一部の従業員への配慮をした結果、従業員同士に対立が生まれたという事例も少なくありません。

ストレスは誰にでもあるもの、であるからこそ、企業や雇い主は従業員に対するメンタルヘルスサポート体制を拡充させる必要があるのです。
新型コロナウイルスという社会的不安の緩和や今後のアフターコロナに向けた社内の健全化という意味でも、今一度企業としてのメンタルヘルスに対する意識を向上して頂ければと思います。

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【引用参考】
OECD,(12 May 2021),"Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response", OECD Policy Responses to Coronavirus (COVID-19), https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/tackling-the-mental-health-impact-of-the-covid-19-crisis-an-integrated-whole-of-society-response-0ccafa0b/

WELCOA/Unmind, "Infographic: The state of workplace resilience", Oliver Matejka, 04/07/2021, https://blog.unmind.com/infographic-the-state-of-workplace-resilience, 07/19/2021


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