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マインドフルネスで脳の形は変わる?ある実験結果で変わると確認!

マインドフルネスは、瞑想を行うことで脳を活性化させてストレスをたまりにくくしたり、仕事のパフォーマンスを上げることができることで注目されています。

IT企業を中心にマインドフルネスを社員研修に取り入れる企業が増えており、“今”に意識を向けることで過去や未来にとらわれる時間をなくして、ネガティブな感情にとらわれなくなります。

このマインドフルネスはさまざまな効果を得ることができますが、マインドフルネスを行うことで脳の形が変化して効果を得ているのではないか?と考えると、かなり興味深いものです。

そこで今回は、海外で行われたマインドフルネス教育プログラムによって、脳の形が変化するのかどうかの実験結果をご紹介いたします。

■ マインドフルネス教育プログラムで脳の形は変わるのか

マインドフルネスが広く注目されるようになったのは、信頼できる高名な学者によって理論的な枠組みと実証データが示されたことや、脳科学的な研究でマインドフルネスが脳の機能と構造に変化を与えることが明らかになったからです。

この研究はマサチューセッツ大学医学部のマインドフルネスセンターで実施されました。
参加者は、身体的にも心理的にも健康で薬を服用していないと自己申告した人たちです。
過去6カ月間に瞑想クラスを受講していないこと、生涯で瞑想クラスを10回以上受講していないこと、年齢が25歳から55歳であること、MRIの禁忌がないこと、8回のクラスすべてに出席し、所定の宿題を毎日行うことを約束すること、などの条件を満たした人を対象としました。
18名の健康な男女が登録され、男性8名、女性10名、平均年齢は37.89歳でした。また、対象サンプルは17名(男性11名、女性6名)で、平均年齢は39.0歳でした。

MBSRプログラムは1回2時間半の週8回グループミーティングとコース6周目の丸1日(6.5時間)で構成されており、ボディスキャン、マインドフルヨガ、座る瞑想などを行います。
参加者は、意識に現れるあらゆるもの、あるいは「今、ここ」にいる自分の存在をシンプルに意識することに重点が置かれます。

・マインドフルネス教育プログラムに参加した人と参加しなかった人の差

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Five Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ)はマインドフルネスの5つの要素を測定する39項目の尺度です。マインドフルネスの5つの要素(観察、記述、意識して行動すること、内的経験を判断しないこと、内的経験に反応しないこと)を測定します。MBSR参加者は、FFMQの3つの尺度(意識して行動すること、内的経験を判断しないこと、内的経験に反応しないこと)におけるマインドフルネスのスコアを有意に増加させました。

また、MBSRグループでは灰白質濃度が上昇した左海馬に小さなクラスターが確認されました。対照群では参加前から参加後にかけて灰白質濃度の変化が見られませんでした。

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脳全体を対象とした解析の結果、MBSR群では参加前に比べて参加後に灰白質濃度が有意に高い4つのクラスターが発見されました。1つのクラスターは後部帯状皮質(PCC)、1つのクラスターは左の頭頂-頭頂接合部(TPJ)、2つのクラスターは小脳に位置していました。

以上の結果から、8週間の観察期間中、対照群ではなく、MBSR群でPCC、TPJ、小脳の領域で灰白質濃度の増加が確認され、MBSRコースへの参加がこれらの脳領域に構造的変化をもたらすことが示唆されました。

・マインドフルネスのポジティブな効果を実証することができた

本研究では、8週間のMBSRを受講した後の脳の灰白質濃度の経時的変化を、対照群と比較して示しました。左海馬内の灰白質濃度の増加仮説が確認されました。また、全脳解析により、PCC、TPJ、および小脳の灰白質濃度の有意な増加が確認されました。

海馬は、皮質の覚醒と反応性の調節に関与していることから、瞑想の効果の一部を媒介する中心的な役割を果たしていると考えられます。また海馬は情動の調節にも寄与しており、情動反応を調節する機能の向上を反映している可能性があります。

TPJは自己と身体の空間的一体性や身体性を媒介する、自己の意識的な経験にとって重要な構造であり、PCCは自分にとっての刺激の関連性や重要性を評価するときに働いていると考えられています。

海馬、TPJ、PCCは、過去を思い出し、未来を考えるという共通のプロセスがあると示唆されています。マインドフルネスのポジティブな効果は、自己の内部表現を調整する知覚の変化を介している可能性があるとされています。

■ 脳科学的にマインドフルネスに期待されること

ここまでお話ししたように、マインドフルネスを続けることで左海馬や灰白質(かいはくしつ)の密度が増加したことがわかりました。

うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の人は、左海馬や灰白質が小さくなっていることが知られているので、マインドフルネスを行うことで症状の緩和が期待されています。

左海馬や灰白質は思いやりや共感に関わってくる部位なので、日常的なストレスからイライラしやすい人や、感情のコントロールが難しい人などにも、マインドフルネスによって症状の緩和につながるのではないでしょうか。

■ マインドフルネスで日常的なストレスを緩和することができる

IT企業を中心にマインドフルネスを取り入れる企業が増えており、個人でも積極的に行う人が増えています。

マインドフルネスは今回ご紹介した研究によって、脳の左海馬と灰白質の密度が増えることがわかっており、これによって感情をコントロールすることができるなどの効果を得ることができると考えられています。

このような実証データからマインドフルネスは多くの業界で注目されていますが、そのなかでも左海馬や灰白質が小さくなってしまううつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状緩和が期待されています。

また日常的にイライラしやすい人、感情がコントロールできない人にもマインドフルネスは非常に効果的なので、さまざまなシーンで応用することで効果を実感することができます。

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参考文献:
Hölzel BK, Carmody J, Vangel M, et al. Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Res. 2011;191(1):36-43. doi:10.1016/j.pscychresns.2010.08.006

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